映画『シン・シティ』(Sin City)
フランク・ミラーのコミックの2005年映画化で、予告編はいかにも「CGで美意識こめて一所懸命作りました」的な映像だったので、見ようという気持ちはあったけど、結局見逃した。日本のCM監督なんかの「美意識と凝ったCG」だけの映画がいかにつまらないか、けっこう身にしみてるもんだから、ちょっとそういう先入観はあった。
んでDVDを借りて、見ました。最初は「あ、コミックとハードボイルドのパロディだね」って思って、
やはりそれほど期待したわけじゃなかったが、これが面白かったのよ。
いや、多くのお客さんに愛される映画ではないよ。コミック好きだと、この「原作に忠実って言葉は、このためにあるんだぜ」って映像と演出はたまんないけど、関係ない人には多分ただひたっすらに「濃い」だけだろうしね。それでも気に入る向きは、趣味が合う人だろうから是非とも原作も読んでほしい。
とかいいながら、じつは原作読んでません。でも、わかるんだね。勘所は。
全体は、原作のいくつかの話を組み合わせたオムニバスで、最初にちょっとした短いイントロ的な短編のあと、ブルース・ウィリス主演の話があり、そのあと二本あって、最後にブルースの話の続編に戻る。「シン・シティ(罪の街)という街そのものが主人公」という原作のモティーフを活かしている。そのおかげで、最初、日本の少女マンガ系みたいに「ナレーションの語り手が平気で変わる」構成になってたりする。
醜い怪物的なヒーロー役のミッキー・ロークが見モノ。メイキングを見るまで全然気づかなかった。ちなみに、この映画を観たら必ずメイキングも見ていただきたい。クェンティン・タランティーノの話聞いて、フランク・ミラー見るだけでもね。あ、CGの実写撮影現場がいかに身内スタジオ的かってとこも。何つーか、あれだとやっぱり顔の演技に集中するだろうなぁ、たしかに。
ま、コミック好きとか、変わった映画好きにはオススメです。何しろ、黒白を徹底的に活かした映像の色彩感覚のポップさは、まさにアメコミが持っていた「チープなベタ色のポップさ」を洗練させたらこうなるって見本で、あたしは園田光慶『アイアン・マッスル』の三原色彩色の抜群のセンスを思い出しましたよ。もちろん、動き、爆発、飛び跳ねる車、ひるがえるコートなどなど、いちいちコミックのクールさを「再現」していて、それだけで存分に堪能してしまう。
それにしても、これ、2時間の映画なんだね。何か、3本くらい見た感じの時間感覚なんだけど、それだけ「濃い」んだろうな。つまんなくて「時間が長い」んじゃなくて、っていうのは、あまり経験がないな。