雲から地上のリアル世界に降りてきたAWS (Amazon Web Services)
雲から地上のリアル世界に降りてきたAWS (Amazon Web Services)
AWS (Amazon Web Services) の1年に1度のビッグイベントである re:invent に今年もお招きいただき参加している。 AWSジャパンの皆様に感謝です。(来年も誘ってね)(他社さんも誘ってね)
AWS本体から、そして様々なメディアやアナリスト、コンサルタント、そして著名ブロガーから詳細なレポートがアップされると思うので、ここでは私が感じたことを書き留めておきたいと思う。
" Software is eating the world "
という言葉があるが、今回の re:invent での AWS の発表は、
" Cloud is eating the world "
" AWS is eating the REAL "
という印象を強く持った。
良い意味で気持ちの悪いくらいのインパクトがあった。言わば・・・
" 雲から地上に降りてきてリアル世界に足を踏み出したAWS "
とでも表現したいくらいである。
ご存知の通り、AWSはクラウドサービスプロバイダーなのだが、今回の発表は、もちろんクラウド上のサービスが大多数を占めるのだが、"リアル世界" に関係する発表がいくつもあったので以下で概要を紹介する。
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半導体チップの開発
<CPU>
ついにAmazonがCPUを提供!! AWS EC2で、INTEL、AMDに加えてAWS Graviton CPUを選択可能に。 Graviton CPUは、2015年に買収したASICベンダ : Annapurna Labsが設計と製造を担当。16コアの64ビットARMプロセッサ。Gravitonを搭載したA1インスタンスはスケールアウトのワークロードのコストを、従来に比べて45%削減できるとのこと。
<機械学習推論チップ>
AWS Inferentia という Machine Learning の推論 (Inference) 専用のチップも開発したとのこと。
推論を行うためにこれまでは、GPU付きの高価な EC2 P2 を利用しなくてはならなかったが、今後全てのEC2インスタンスで Inferentia が利用可能となるとのこと。
煩わしいリアル作業の代替
<次世代OCR>
OCR++ と銘打って Amazon Textract を発表。同社の機械学習機能を使い、従来のOCRとは比較にならない精度で紙に書いた手書き文字をデータ化することが可能。 もちろん、そのままAWS上の各種DBに格納することも可能なようだ。
<機械学習の正解データ作成>
機械学習の精度は、正解データ(教師データ)によって決まると言っても過言ではないだろう。この学習するためのデータを作成する作業をアノテーションと呼ぶ。例えば、画像であれば、その画像のどれが人間で、どれが犬で、どれが信号機で、というようにタグ付けするような作業である。
これは人手に頼るしかなく、ベトナムなどの人件費の安い国でのオフショア作業が現在は主流であるが、今回発表された SageMaker Ground Truth によってアノテーションの煩雑さがかなり削減されるようだ。 詳細を期待したい。
<テープによるデータ保管の代替>
データのバックアップ、保管サービスとして Glacier Deep Archive を発表。
物理的なテープ媒体の管理より安いコストと謳っており、月額0.00099ドル/GBなので、1TBあたり月額1ドル弱ということになる。 安いですね。
耐久性は、99.999999999%。保管用ストレージなので読みだすまでの時間は12時間以内とのこと。
自分のサーバー室にもAWSを
<オンプレミスでAWS>
オンプレミスとは、自社所有の自社設備を指し、AWSのようなクラウドと対比する言葉だ。 従来、オンプレミスでの仮想化技術を使ったプライベートクラウドの主流は、仮想サーバーの雄である vmware である。 その vmware の CEO である Pat Gelsinger 氏が登壇、AWS CEO の Andy Jassy 氏と並んで発表されたのが AWS Outposts である。
AWS のデータセンターで使われているものと同じ AWS用にデザインされたハードウェアを自社設備としてデータセンター事業者コロケーションスペースや自社サーバー室に設置し、AWSネイティブの環境やVMware Cloud on AWS環境を構築し利用することができるという。
そして・・・クルマ
<18分の1スケール模型の自動自律運転レースカー>
AWS DeepRacer という自動自律運転レースカーが発表された。
AWSクラウド上にシミュレートされたコースを学習し、学習済みデータを模型レースカーにダウンロードし、更にリアルで学習をさせて自動自律運転が可能になる模様。
これらには Amazon SageMaker や AWS RoboMaker といったAWSのテクノロジーが使われているとのこと。
この模型レースカーは、Amazonで販売されるそうで、定価399ドルのところ、今なら予約価格249ドルとのこと。
<自動運転車レース>
上記のDeepRacerを使ったレースをシリーズとして行うとのこと。(年間10回?)
その AWS DeepRacer League 2018 Season は今日が第1戦。夜10時までラスベガスのMGMに特設されたサーキットで開催され、明日のキーノートで入賞者を表彰するとのこと。賞金もあるみたい。
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現在米国現地時間で11月28日午後1時であり、まだまだ re:invent は続く。まだまだ "地上に降りたリアルなAWSの発表が続くかもしれない。楽しみだ。
また、他にも Amazon Timestream、Amazon FSx for Lustre、Amazon Quantum Ledger Database など特にデータストア系でかなり使えそうな新サービスが多数発表されている。
追伸)そうそう。AWS は独立会社ではなく、EC事業のAmazonの一つの事業部門である。そして Amazon の元々の本業は "リアル" であった。 そして、リアルな小売も始めている。
ということは、本エントリーで紹介した内容とセットで考えると
" Amazon is eating the world "
と言えるのかもしれない。