ビジネス視点での OpenStack < OpenStack as a Business >
ビジネス視点での OpenStack
== OpenStack as a Business ==
OpenStack が注目を浴びている。 特に最近1年間の動きが激しい。 OpenStack の各種コミュニティの 参加者数は急増中であるし、IT業界の様々な企業が『OpenStack への取り組み』を表明している。
しかしながら、OpenStack のコミュニティでの情報は新機能の動向共有や評価などの『開発』関連が主流であり、また各社の『OpenStack への取り組み』表明も、OpenStack 側からは歓迎すべきものではあるが、曖昧としていてイマイチ解りにくい。
というわけで、夏休みの宿題として (”よさこい祭りの合間に”) 『ビジネス視点での OpenStack』 と題してまとめてみる。
まず、一括りに語られる OpenStack ビジネスを以下に分類することにする。
A)OpenStack を自社サービスの基盤として利用
A-1)OpenStack を基盤としたIaaS等のインフラサービス提供
A-2)自社サービス(ソーシャル、ゲーム、EC や SaaS等)の基盤として OpenStack を採用
A-3)社内システムや開発用など主に社内用に OpenStack を基盤としてプライベートクラウドを構築B)OpenStack をベースとした有償ソフトウェアを提供
B-1)OpenStack ディストリビューション
B-2)OpenStack アプライアンス製品C)OpenStack に関するノウハウをベースとした人的サービスを提供
C-1)OpenStack 研修および認定試験
C-2)OpenStack 導入コンサルティングおよびプロフェッショナルサービスD)OpenStack の機能拡張や周辺ソフトウェア提供
D-1)OpenStack 独自拡張機能、Proprietary機能の開発と提供
D-2)OpenStack 周辺機能の提供E)自社製品の OpenStack 対応
E-1)自社製品を OpenStack の API に対応させる
E-2)自社製品の API に対応するように OpenStack を拡張する
上記分類毎に OpenStack をビジネス(≒OpenStack を/ででマネタイズ)している企業を挙げてみる。
ただ、動きが速く情報が錯綜気味であり、またプレスリリースしてもその後の動きが見えなかったり、各 種イベントでのゲリラ的発表のみであったりと、情報が混沌としている面もあり、夏休みの宿題としては 網羅的に調べられていないことをご了承いただきたい。
(抜け漏れだけでなく、認識違いも少なくないかもしれません。ご指摘いただければ幸いです。)
A-1)OpenStack を基盤としたIaaS等のインフラサービス提供
Havanaバージョン以前においては OpenStack が未だ進化過程であり素のままでの導入では安定性に欠いていたこともあり、OpenStack を IaaS 等のクラウド・インフラサービスとして利用しているケースはそれほど多くはない。
- Rackspace:OpenStack の本家のひとつ。最近身売り話もあるが、自社クラウドを Managed Cloud として、AWS,Azure等が繰り広げている値下げ競争から離脱。
- Korean Telecom:Swiftを使った Object Storage のみ。
- HP:HP Public Cloud を OpenStack ベースで構築、運用。
A-2)自社サービス(ソーシャル、ゲーム、EC や SaaS等)の基盤として OpenStack を採用
最近急増しているのが、このユースケースである。他のパブリッククラウドサービスや商用仮想環境を用いたプライベートクラウドから、OpenStack を使ったプライベートクラウドに移行するケースが大規模システムを中心に増加中である。大規模が多いのは、自社で OpenStack の運用維持保守を実施する技術力を保持しても、外部サービスや商用仮想化ソフトウェアを利用するコストよりも安価となることと推測される。
- PayPal と eBay:親会社である eBay とあわせて8万台のサーバーを VMware ベースから OpenStack に移行。
- Sony:PlayStation 向けサービスの基盤として OpenStack を利用
- グリー:同社の本番環境で OpenStack を試行中。(参考)
- ヤフージャパン:開発環境だけでなく、ショッピング、ヤフオク、知恵袋、トラベル、不動産、ブックストア、ゲームなどのサービスの本番環境で利用中。(参考)
- ディズニー:メタクラウドをベースとしたプライベートクラウドを利用中。
- その他、ドイツテレコムやAT&Tなど、キャリアを中心に自社サービスの基盤として OpenStack の利用ケースが増えてきている。
A-3)社内システムや開発用など主に社内用に OpenStack を基盤としてプライベートクラウドを構築
Cern、Intel等が以前から有名であるが、最近の OpenStack の安定化とともに、システム開発用のインフラや一部社内システムの本番用基盤として OpenStack を利用するケースが増加してきている。
B-1)OpenStack ディストリビューション
オープンソースである OpenStack は 同じくオープンソースである Linux と同様に素のままでの導入は非常に手間がかかり、また潜在的なバグに遭遇する可能性も少なくない。 このため、利用者が容易にインストールしたり運用維持保守できるように、安定板としてパッケージにしたディストリビューションの提供が行われている。 現在は、ディストリビューションが乱立しており、Linux の黎明期と同様な状況との印象を受ける。
- RedHat:Linux の雄によるディストリビューション。特に最近、OpenStackを全面に打ち出したマーケティング活動を展開している。
- Canonical:現時点では導入数トップと言われている Ubuntsu の本家によるディストリビューション。RedHatとは対照的に、ビジネスとしての大々的なマーケティング活動は未だ行っていない印象。
- SUSE:こちらも Linux の定番によるディストリビューション。
- HP:HP Cloud で培ってきたノウハウをもとに Helion を発表。同社ハードウェアを前提としていない。
- Oracle:こちらもいよいよ本腰を入れてきている印象。 Solaris 対応も表明。
- Mirantis:OpenStackのコンサルティングや構築を請け負うプロフェッショナルサービスを主業とするが、Fuelと呼ぶディストリビューションも提供。
B-2)OpenStack アプライアンス製品
ハードウェアにOpenStackを実装して提供するアプライアンス製品およびソフトウェア提供ではあるが独自拡張を含めて特定用途向けにパッケージ化した製品など。(こちらはディストリビューションとの境目が曖昧ではあるが)
- Piston OpenStack:サンフランシスコ市内に本社を構える。NASAやRackspaceの元エンジニアが中核。
- Metacloud:Carbon OS を提供。また、これを使ったマネージド・プライベートクラウドサービスも展開中。
- Nutanix:OpenStack対応として、OpenStack on Nutanix を提供。
C-1)OpenStack 研修および認定試験
OpenStackの注目度の急上昇と共に、OpenStack の各種研修コースや認定試験制度が登場してきている
- 国内での研修コース:日本HP、RedHat、NECラーニング(w/モーフラボ)、CTCなど。
- 認定制度:RedHat、LPICなど。
C-2)OpenStack 導入コンサルティングおよびプロフェッショナルサービス
これまでは海外ベンチャー中心であったが、本番導入の増加に伴い国内においても大手SIerなどの参入が増えると思われる。
- Mirantis:OpenStack専業の第一人者。発祥はロシア。
- eNovance:フランスをベースとした独立系で北米、アジアに急拡大していた同社であるが、(個人的には残念であるが)RedHatに買収された。
- ・Solinea:サンフランシスコをベースとするコンサル/プロフェッショナルサービス専業企業。CEOのFrancescoは地に足のついた素晴らしいエンジニアとの印象。(個人的に好き)
- 日本仮想化技術(株):OpenStackに限らず、日本国内の仮想化のコンサルティングの第一人者。
D-1)OpenStack 独自拡張機能、Proprietary機能の開発と提供
周辺機能開発との境界が曖昧ではあるが、独自の Proprietary な機能を開発し有償提供するスタートアップが多数生まれている。ただ、OpenStack自体の機能拡張によって、独自開発機能が取り込まれたり置き換えられたりすることが起こりつつある。
- Billing、Metering:TALLIGENT や RentSoft。OpenStack CEILOMETER安定後は置き換えられるか?
- Config Management、Orchestration:PUPPET等。OpenStack HEAT との関係は?
- デプロイ、管理:FUEL、 juju、CROWBAR等。OpenStack TripleO、Tuskarで既に実装された?
- PaaS:OpenStack Solum によって、CLOUD FOUNDRY等とどのように棲み分けするのか?
D-2)OpenStack 周辺機能の提供
独自機能拡張との境界が難しいが、ミドクラのMidonet等が該当すると考えられる。
E)自社製品の OpenStack 対応
ハードウェアベンダー、ソフトウェアベンダーが OpenStack 対応とアナウンスしているケースの多くはこのケース。 例えば、ストレージであれば、Netapp や IBM XIV、EMC。ソフトウェアの代表格であれば、仮想化の本家である VMware も OpenStack 対応を表明している。