カギは3種類のクラウド
アジャイル開発、プロトタイピング、ベータ版リリース、リーン・スタートアップ。
インターネット系、ソーシャルメディア系の新規事業、新規サービス開発の方法でしばしばこのような単語が言われている。
確かに開発環境はよくなったし、ちょっと作って試しにリリースしてみて、ユーザーの声を聞きながらよりよいものに改良していく。そんなことが比較的簡単にできるようになった。 しかし、それは一部のエンジニア社長が率いるベンチャー企業がB2C系サービスを立ち上げるケースに限られている気がする。
上場企業やレガシーなカルチャーの会社、内部にエンジニアを抱えていない会社が、スピードの早いサービス開発競争に参戦するにはどうしたらよいか?
その答えは、以下の3種類のクラウドの活用にありそうだ。
1)クラウドコンピューティング
これは改めて言うまでもないだろう。従来、サーバー、ネットワーク機器、インターネット接続環境などを自前で揃える必要があったが、IaaS、PaaSを活用することで、初期の費用を抑制でき、またそれらインフラ準備の時間を大幅に短縮できる。さらに、サービスがヒットした際にも容易にリソースを増やして対応でき、また利用が減少してしまった場合にはすぐにリソースを減らしてコストを抑制することができる。
サービスインフラを完全に変動費化できること、オフバランス化できることは、新規事業、新規サービス開発を行う上で大きなメリットである。
2)クラウドソーシング
クラウドソーシング(Crowdsourcing)とは、群衆(crowd)と業務委託(sourcing)を合わせた造語である。
不特定多数の人に業務を委託してシステム開発などの業務を遂行することを指すことが多い。
未だ未だうまく機能した成功例は多くはないが、クラウドソーシングのメリットは大きい。
必要な時に必要な能力を持った人を集める。ピーク時あわせて人を確保しておく必要がないという固定費抑制効果だけでなく、その時々(開発の各フェーズ等)に相応しい能力を持った人材を集められることも有益だろう。 ”ベストメンバー”、”ドリームチーム” の効率は素晴らしい。 この方法は、社内のクローズドな環境においても有効と思われる。社内のスキルインベントリー、タレントマネジメントが既に行われてるのであれば、実行のハードルは高くはないだろう。
クラウドソーシングの課題は、人材リソースのプール化が未成熟なこと、寄せ集めのスペシャリスト集団を束ねて業務遂行するプロジェクトマネージャーが必要なこと、成果物責任や品質責任の所在が不明確となってしまうことである。
3)クラウドファンディング
ソーシャルファンディングとも呼ばれる。
不特定多数から資金を調達するスキームや仕組みを指す。
成功例として、Kickstarter、CAMPFIREやミュージックセキュリティーズが有名。また、ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が資金不足の中で研究資金調達のためにマラソン完走を条件に寄付を募っていたのもクラウドファンディングである。
インターネット等で比較的少額の資金提供を呼びかけ一定額が集まった時点でプロジェクトを実行することで、資金調達のリスクを低減できる。
多額の資金調達は難しいが、比較的少額であれば成功例が増えてきている。
前述のクラウドコンピューティングおよびクラウドソーシングを活用することにより新規事業、新規サービスの立ち上げの初期コストの削減ができれば、クラウドファンディングによって全ての必要な資金を調達することも可能となるだろう。
以上の3つのクラウドは、未だ発展過程ではあるが、それでも既に活用できる段階となっている。 成功例が増えることを期待したい。