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クラウドの省電力・節電

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さくらインターネットの石狩データセンター開設のニュースが広く取り上げられている中で、クラウドの省電力の議論が更に高まってきそうですね。

石狩データセンターでは、北海道の低温外気を100%活用することで、クラウドサーバーから発生する熱を冷やすための冷房電力を削減できることを大きく謳っています。

これまでの日本のデータセンターにおける外気冷房の導入は、実証実験の段階にとどまっていました。今回の石狩モデルでは、外気冷房を全面的に導入し、低PUE値、低環境負荷を実現します。データセンターのエネルギー効率の指標であるPUEは、北海道の低温外気を活用することにより、通年外気冷房のみで1.11、夏季に従来型の空調運転をおこなった場合でも1.21を実現できます。また、温湿度条件を緩和した実験区画を設け、空調ファンをも停止することにより、PUE1.0台(1.0X)へ挑戦します。

PUEとは、Power Usage Effectiveness:電力効率性の尺度であり、データセンターのエネルギー効率をあらわす指標の1つです。 簡単に言うとサーバー等IT機器単体の電力消費量に対して、空調等その他の電力消費量がどのくらいあるかを表すもの。 以前私が責任者を務めていた某社の東京データセンターでは、サーバー等電力消費量に対してほぼ同じ量の電力を空調その他が消費していました。その場合、総電力消費量はサーバー消費電力の2倍となり、PUEのは2.0ということになります。

一般にクラウド等データセンター事業におけるコストの3分の1は電気代であり、サービスに必要なサーバー等IT機器以外の消費電力削減は、省電力・節電で環境にやさしいだけでなく、大きなコスト削減にもなりことから各社が精力的に取り組んでいるのでしょう。

さくらの石狩データセンターでは北海道の冷たい外気を取り込むことで、このPUE値を1.11にすると言っています。
ついに冷房不要、外気取り込みの送風だけでサーバーを冷やすデータセンターが登場といったところでしょうか。

この外気冷房、さくらの石狩が初めてなわけではなく、以前から各社が取り組んでいます。
先日見学させていただいたIIJの松江データセンターでも同様の仕組みが既に本番稼動しています。

IIJの資料によれば、実測値として松江の真夏で従来型空調運転でもPUEは1.25を達成。更に真夏の外気冷房を実施したところPUE1.06を達成したとのことです。(実証実験での実測値)

Pue

ただ、IIJの実験結果では、PUEという指標の弱点も見つかっています。
外気空調によってデータセンター内の温度が上昇した結果、サーバーに内蔵されている送風ファンの回転数が自動的に上昇し、想定・期待した電力削減量が達成できませんでした。 しかし、PUEは期待値よりも低くなった。何故ならば、サーバー内蔵の送風ファンの電力消費量はサーバー本体の電力として計算されるために、PUE計算の分母が大きくなりPUE値が下がったということです。

データセンターの効率化が進展してきたこともあり、そろそろPUEに変わる新しい指標が必要となってきています。

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