ゆうパックの混乱で学ぶ新業務への移行
3連休も終わり、そろそろまじめな内容に入っていきたいと思います。そこで題材は、ビジネスコンサルタントから見ると格好のネタ、「ゆうパック」とします。終業時間になったら荷物が残っていても帰ってしまった等、色々な情報があちこちから出てきており、事の真相は内部の人しかわかりません。しかし、7月1日のゆうぱっく・ペリカン便の事業統合に伴う新業務への移行には問題があったのは事実です。
やはりプランニングは侮れない~リスクを考慮したプランニングで今回のトラブルは防げた
今回は彼らにとっては稼ぎ時のお歳暮のタイミングで、新業務への移行を強行したため余計に傷口を広げる結果となってしまいました。通常新業務への移行のポイントとしては、以下のようなものがあります。
- 変更スコープが広い場合はリスクを考慮し、一気に移行しない(拠点や商品などで分けるのが一般的)
- トライアル期間の設定や何回もの移行リハーサルで万全の体制をとる
- "Go" or "No go"の判断をする幾つかのマイルストーンを設定する。また、それぞれに判断基準を設け、基準に合致しない場合は絶対先に進まない
- 新業務移行後も旧業務に戻すことも考慮したコンティンジェンシープランを作成する
このポイントに沿って忠実にやっていれば、少なくとも"Go"という判断には至らなかったと思いますし、いたずらに傷口を拡大することはなかったと思います。
必要なのは幅と奥行き~組織/スキル、プロセス、ITをどれだけ煮詰めるか
単純に伝票のシステム処理フローを変えます、というレベルであればまだしも、少なくとも物流サービスだと、モノと情報をタイトに連携させて処理することが求められます。もちろん単純にモノを動かすだけではなく、それを行う人・組織の整備やスキル開発も重要です。特に、今の時代は処理もシステム化されていますので、組織/スキル、プロセス、ITの3つ(=幅)をしっかり見ていくことが新業務移行のポイントです。
この観点で見ると、組織役割の再定義、業務分掌の変更、評価制度の修正、新業務をサポートするための組織(社員のためのヘルプデスク)、新業務に対する講習、プロセス統合、システム統合など膨大なアイテムをこの「プロジェクト」ではこなしていかなければならないのですが、その取り組みがどこまでされていたのか?、というところです。
彼らはこの幅をしっかり捕らえ、どれだけ煮詰めていたのか(つまり奥行きを深める)、今後同じような失敗をしないためにも総括をしておくことが絶対必要だと思います。
全社での「正確な情報」と「思い」の共有が成功要因~トップダウン vs ボトムアップの構図はナンセンス
今回の新業務移行は、いわゆるトップダウンアプローチとなるのですが、少なくともこの場合は、マネジメント層やそれをサポートする企画メンバーが現場の状況を正確かつリアルタイムに確認する仕組みがないと有効には機能しません。今回は、"Go"、"No go"の判断もそうですし、結果的に遅配への対応も後手に回ってしまいました。
ERPやBI(ビジネスインテリジェンス)パッケージはそれを支える仕組みの一例ですが、別にシステム云々ではありません。現場の状況を定量的かつ定性的に正確に把握する仕組みがないと、根拠のない「勝算なき戦略・戦術」がまかり通ったり、変化への対応のスピードが遅れてしまい、「現場はますます疲弊+結果の出ない状況にますます苛立つマネジメント」という構図が出来上がってしまいます。
また、本当の成功のためには、マネジメント層は単に通達ではなく、「なぜその業務が必要なのか」、しっかり咀嚼して、自分の思いとして現場に伝えていく必要があります。そして、現場のメンバーがそれをしっかり「腹に落ちた」形で理解し、「やらされ感」が払拭されていることが大事です。実はここまでいくと、そんなに詳細な指示を出さなくても問題意識が生じてきますので、現場主導での独自の改善や提案が出てくるようになります。今回のようなトラブルも未然に防げたところがあるかもしれません。
トップダウンアプローチが有効に機能している会社は、実質的にはボトムアップの仕組みも備えていることが多いです。
7月15日には日本郵政から正常化宣言が出ました。お歳暮のシーズンでは同じような過ちはもう犯さないと思います。しかし、今回の根本の原因を掘っていくと、相当根が深いです。まず数日では解決できるものではありません。日本郵政にはこの課題に真摯に取り組んでいただき、進化したサービス「維新」の実現を期待したいところです。
字数が多くなってきましたのでやや消化不良ですが、ここまでにします。