地震で考えさせられる公益業界の顧客コミュニケーション
地震から1週間を経ましたが、まだ福島第一原発の問題は解消されていません。公益業界のお客さまへコンサルティングをしている立場にある私としては、どうしてもこの手の話題に触れるのは腰が引けてしまうところがありますが、この数日で感じた思いを書いてみたいと思います。
公益事業者における顧客コミュニケーションの弱点~双方向性の不足
今回の計画停電においては、その発表が比較的夜遅い時間であったことからかなりの混乱を招きました。これを通じて顧客コミュニケーションにおける弱点も同時に露わとなりました。その弱点とは、緊急性の高い情報にもかかわらず、東電はテレビ、ホームページといった「一方通行形」の情報提供チャネルに大きく依存していたことです。カスタマーセンターでの電話対応はありましたが、ずっと通話中ということで事実上存在しないのと同じでした。提供される情報が完全であれば、一方通行でも良いのですが、今回は不完全なものであったため、問い合わせをしたくても顧客には確認する術もなく、不安を増幅させてしまいました。
なお、今回はたまたま東電管内で生じたことでしたが、「一方通行形」に大きく依存する公益事業者は決して少なくありません。
効率性を意識した顧客コミュニケーション~コールセンターは万能ではない
理想は「100点」の情報を一発で出すことですが、そうは上手くいくものではありません。おそらく今回の場合は、多くの人が同じような質問をしようとして殺到したことが想定されます。もしそうだとすると1人に答えても、その答えはシェアされることなく、コール数は全く減らない、ということになります。また、ホームページは更新しても、全ての人が再度参照しているわけではないので、古い情報のままで止まっている人も出てしまいます。
非常時でも応答率100%、放棄呼ゼロのカスタマーセンターを構築することはまず無理です。東京電力のホームページにはお問い合わせ総合案内に「よくある質問」という箇所がありますのでそこをうまく使えば、ということになりますが、そもそも内容的に違います。さらに、静的なものが中心であって、逐次スピード感をもってホットな情報に更新していく類のものではありませんでした。
顧客との双方向コミュニケーションチャネルの構築~SNSの可能性
今回東電では公式Twitterアカウントを設けました。その姿勢は評価してよいと思います。あとは、ここからいかにリアルタイムに情報を発信していくかがポイントとなります。
現在は計画停電のあるなし、というレベルですが、顧客からの関連質問のうち有益なものについてはその内容と答えをリアルタイムで流して共有することができたら、無駄な入電とその対応を少しでも減らすことができるのではないか、また、顧客のストレスも最小限におさえることができるのではないかと感じました。もちろん問い合わせの受付についても電話だけでなく、SNSを介して行うことも今後のオプションとして十分検討の余地があると思います。twitterではtimelineがどんどん流れてしまうので、Facebookのほうが扱いやすいかもしれません。
今回、気づきを簡単にまとめてみましたが、電力はその商材の性質(目に見えない、スペックやグレードが存在しない、人を介さず提供される、一般家庭では事実上電力供給者の選択ができない etc.)からどうしても、事業者としては、顧客との双方向のコミュニケーションの優先順位が低くなりがちです。今回の地震を教訓にコミュニケーションのあり方が変わっていくことを期待したいと思います。