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車内販売 2.0 押してダメなら引いてみる

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もうちょっと新幹線ネタで引っ張ってみます。

火曜日は乗る前に買った飲み物は底を尽き、車内販売のお世話になりました。このように車内に予定以上に閉じ込められると、否が応でも車内販売のありがたみを痛感することになります。今日はこの「車内販売」を題材にしたいと思います。

決して順調ではない車内販売

東海道新幹線では、食堂車はおろか、サービスコーナーも廃止されてしまったため、それなりに利用者がいる「車内販売」ですが、この販売形態は決して安泰という状態ではないようです。JR四国は最近になって一部で再開になったようですが、特急の車内販売は全廃状態ですし、比較的長い距離を走る近鉄特急でも、アーバンライナー(名古屋⇔難波)を除いて廃止、というような状態です。今は消えてしまった東京発のブルートレインも、末期は車内販売が朝までナシでした。大概のパターンとしては、いずれも採算性の点で2000年前後に追い込まれたものの、利用者からの要望で限定的に復活させた、というような状態で、冷めた目で見ると、本当に需要がないのではなく、そもそも売り方がまずかったのでは?という例がかなり多く見られます。

車内販売の大革命は山形から

こうした中、個々の創意工夫で稼ぎまくる車内販売員も目立つようになってきました。その中でも、今までの車内販売の中でも革命的なことがおきました。それは山形新幹線で活躍している日本レストランエンタプライズの茂木久美子さんによるものです。詳しくはasahi.comの記事を見ていただく、ということになりますが、今まで、進行方向に対しては車内販売はカートを「押す」ことが一般的だったことに対し、なんと彼女はカートを「引く」というアプローチを取りました。進行方向にカートを押す売り方は、皆さんも経験したことがあると思いますが、利用客からすれば、いきなり視界に現れて、、声をかけてようとしてももうそこにはいない、そして一回逃すといつ来るか分からないという全く良いことがない販売方法でした。これでは、車内を1往復しても、片道は事実上「売っていない=単なる移動」と同然です。この革命的(?)アプローチは彼女の山形弁トークと相まって、利用客には好評なようです。

売れないと嘆く前にまず売ってないことを疑う

これは、「売れない」と嘆く前にそもそも「売ってないのでは?」と疑うことがまず必要、と考えさせる好事例です。不思議なことに、このカートを「引いて」売るアプローチが全国の車内販売に広がるのか、と思いきや、少なくとも東海道新幹線では見たことがありません。東海道新幹線の場合は、声を出して売ると「ウルサイ!」とクレームされてしまったり、声は出さず小さくチャイムを鳴らして売る試みも自然消滅、という状況ですので、路線によって性格は違うのかもれません。とはいえ、「利用者に声をかけてもらうのを耐え忍んで待つ」より「いやみにならないさじ加減で積極的に売りに行く」ことを各業者さんには是非考えていただきたいところです。前者のアプローチを取る限り、今は改札内外に沢山店がありますので、縮小には歯止めはかけられないのでは、と思います。

ある日の「こだま」では「コーヒーを買うとカードを差し上げます」という車内放送があり、ついうっかりコーヒーを買ってしまいました。こんな小さいことからでも、「売りに行ってみる」ということが大事かもしれません。

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