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私は会社を経営する傍ら、これまで採用の“現場”を見て、さまざまなアドバイスを行ってきました。また、学生のビジネススクールの運営にも関わっており、最近の学生の生の声にもたくさん触れています。本ブログでは、「いまどきの採用・教育・若者」と題して、これまでの経験で得たノウハウを少しでも現場で活かせる為の情報発信を行っていきます。

SPIをはじめとした適性試験を十二分に活用するために大切なこと

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採用試験はどちらかというと面接重視で筆記試験は形式的といった企業も見受けられます。
しかし、筆記試験も採用の重要なファクターであり、中でも多くの企業が活用しているのは適性試験です。

SPIに代表される適性試験を行う理由は一般常識などの能力はもちろんですが、性格やものの考え方といった側面も見ることで、複合的に自社に合った人材かを判断していくためです。

また、ただ単に適性試験を行うだけで、充分に活用できていない企業も多いように感じます。
今回は適性試験について考えてみたいと思います。

●多くの企業がSPIを選ぶ訳

適性試験と言えば多くの方がまずはSPIを思い浮かべるのではないでしょうか。
採用の場においてSPIがそれだけ浸透しているということかもしれません。

適性試験のはじまりは中国の王朝・隋で587年から始まった官吏登用試験制度の「科挙」だと言われています。
43万文字を超える四書五経をいかに記憶しているかが試験課題で、要するに四書五経の記憶量を測定するものだったのです。

これは「記憶するという能力」や「物事に粘り強く取り組めるか」といった面を見るだけでなく、採用が"地縁"や"血縁" ではなく、"公平な人物評価"で行われるべきという考え方のはじまりでもあると言われています。

今、多くの企業が行っている適性試験の原型と言われているものはリクルートが1963年にサービスを開始した「リクルートテスト」だと言われています。
その「リクルートテスト」で得た情報などをもとに様々な改善が加えられ、10年後の1973年にSPIが開発されました。

当時の日本の企業の新卒採用においては「学校推薦」や「縁故」が主で「学歴主義」や「男女差別」が当たり前でした。

そんな時代の中で登場したSPIは「SPIを使ったら採用の公平感が高まり、採用の質が高くなった」と高く評価され、SPIを導入、実施する企業が増えていったのです。
SPIはその後も改良を続け、2002年にはSPI2を開発、2013年には近年の若手の定着・戦力化に関する調査結果をもとに新たな測定領域を追加したSPI3をリリースしています。
歴史と実績に加え、時代に合わせた試験にするために研究、改良を続けているSPIは試験結果の精度の高さなどが多くの企業に評価されており、結果、多くの企業がSPIを選ぶことになっている訳です。

●試験結果のデータだけで満足していては不十分

採用試験を行う企業の4割がSPIを実施していると言われていますが、その活用の仕方は企業によって違います。
大手企業の中にはSPIで足切りを行い、エントリーした学生を絞り込むといったところもあるようです。
しかし、当然のことですがSPIを行うにはお金がかかります。
試験の種類によって金額は違いますが、一人当たり5000円程度にはなると思います。

大手企業であればまだしも中堅中小企業にとっては決して安い金額とは言えませんし、受験する人数が増えれば、当然、試験費用も増えます。
ので、選考プロセスのどのステップでどれだけの人数を対象に行うのかを採用計画を立てる段階でしっかりとイメージしておくことが大切です。

またそれ以上に重要なのは、試験結果を読み取る企業側が充分に理解し、それを採用活動に活かせているかだと思います。

最近の試験は申し込みや発注がネットで済んでしまうので、営業マンから試験に関しての詳しい説明を聞く機会がありません。
申し込みをするとネット上で試験の詳しいマニュアルをダウンロードして見ることができるのですが、それを多くの社長や担当者が忙しくてきちんと読み込んでいないといった状況が多く見られます。

単に試験結果を見て「○○君は論理性のポイントが高くていいね」で終わってしまっていては不十分ですし、せっかくお金をかけたのにもったいないとしか言えません。

マニュアルにはさまざまな結果のパターンごとにどういうことが読み取れるかといったことがきちんと記載されています。
主だった結果だけを表面上だけ見て判断するのではなく、細かく見ることで性格や思考をより正確に把握することができます。
またほとんどの適性試験会社では(別途費用がかかりますが)オプションでより詳細な分析を行ってくれるところが多いので、最終段階で採否の判断に迷っている場合などで詳細分析を使ってみるのも一つの方法です。

適性試験結果の上辺だけを見るのではなく、マニュアルを読み込んで充分に活用することは多少時間はかかりますが、より質の高い採用に結びついていくと思います。

またそうしたデータを社内で蓄積していくことで、自社に合った人材を効率的に採用する方法に気付く大きな鍵になっていくと思います。

●試験を行う目的は何なのかを今一度考える

SPIは適性試験の代表的存在であることは間違いありませんが、決してSPIだけを推奨している訳ではありません。
今では他にもいろいろな種類の適性試験があります。

以前にもお話させていただきましたが、CompassやCUBICなどをご存じの方も多いのではと思います。
適性試験は時代とともに大きく進化しています。
例えばストレス耐性をみる試験があり、ストレスだらけの現在社会でしっかり仕事をしていける素養があるかどうかを判断するために役立っています。
また、最近ではストーカーの要素を持っていないかをみる試験もあります。

このように今はいろいろな適性試験がありますので、それぞれの試験の特徴や金額などを比較検討して、自社に合った適性試験を選択することが大切です。

自社に合った適性試験を選ぶためには、試験を行う目的は何かを今一度社内で考えてみることをお勧めします。
適性試験を行う大きな目的は「各応募者の基本的な特性を測定し、将来の職務行動を予見すること」「短時間の中で効率的に人物理解を深めるためのデータを収集すること」です。

そこに、自社なりの考えや目的を付加することで、自社に合った適性試験を実施していくことが大切なのです。
ただ前述したように、単に試験を行うだけでなく、試験結果のデータをマニュアルに沿ってしっかりと分析することが重要です。
自社に合った適性試験を十二分に活用して、効率的で質の高い採用活動を行って欲しいと思います。

以上、何かのご参考になれば幸いです。

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