今の新人に合わせたマネジメントとは
私の仕事柄、経営層や人事の人とお付き合いが多くありますが、最近特に「若手人材のマネジメントが難しい」「今までのようにはいかない」という声を、本当に多くの方から伺います。皆さんもそうお感じではないでしょうか? その結果、成果をあげることが難しい、すぐに転職してしまうなどの問題につながっていきます。
今回はその「現在の若手マネジメント」をテーマに進めていきます。私自身、これまでマネジメントと長く携わってきたこと、現在の学生や若手社会人と触れあう中で感じていること、またリクルート時代の経験も含めて、現状をふまえつつ考えを述べていきます。
1. 現在の若手の特徴とこれまでと変わらないこと
皆さんは若手の方と触れあう中でどのようなことをお感じでしょうか? 私は現在の若手独自の面と、実はこれまでと変わらない両面を感じています。
まず現在の若手独自の面でいうと、モチベーションの源泉が昔より遥かに多種多様になってきていると感じます。例えば、以前なら車や家を購入することが仕事をする上での大きなモチベーションになっていましたが、現在はそれらよりも社会のため、成長のため、仕事自体の面白さという面に意識が向くことが顕著になってきました。これは、日本全体が豊かになっていることや、多くの情報が手に入るようになったことなどが背景にあると思います。
また、これまでと変わらないのは心の熱さです。良く聞く話として「最近の若手は元気がない」「情熱が伝わってこない」という話があります。私も一見そうなのかと思ったこともあります。しかし最近の若手人材と一緒に仕事をしていく中で観察すると、内に秘めた熱さのようなものは誰もが持っていることに気づくことがあります。
例えば、以前こんなことがありました。ある若手が皆の前で営業成績を発表する場面があり、その場面ではさらっと「成果が出せなかったので来月頑張りま~す」と、その場ではあっさりとした、ともするとやる気が無いような感じを受ける報告だったのですが、その晩、非常に心のこもった熱いメールが私に届きました。「本当に悔しいです、来月は絶対に頑張ります」と。他にも表には出さないですが、職場を離れてからも一生懸命勉強しているなという面を多く見てきました。一見、見えづらくなってきていますが、現在の若手も以前と同等、あるいはそれ以上に熱いものを持っていると感じています。
そういったことを踏まえず、これまで通りの単一的なマネジメントを行えば当然心は離れてしまい、うまく連携することができません。そういった意味で若手へのマネジメントがこれまで以上に高度なスキルが求められてきているとも言えるのではないでしょうか。
2. 若手人材を深く知る努力を
モチベーションが多種多様になってきている現在では、相手を今まで以上に知る必要があります。相手のことを知る機会を定期的に持つことは必要ですし、今ですとセクハラ等勘違いされることもあるのかもしれませんが、家族や彼氏彼女とはどうなっているかなども知った上で接していくことも私は必要ではないかと考えています。
私自身、上辺だけでは得られない様々な情報を知ることでマネジメントの勘所が分かってくるようになったり、私の話に対する若手の目の動きの意味がわかるようになってきたと思います。
以前、大手総合人材サービス会社の執行役員の方と、若手マネジメントについて対談させて頂く機会がありました。その中で印象的な言葉として「家族として考える」「つながりに重きを置く」という言葉がありました。こういった時代だからこそ、そのような意識が重要になってくるのかもしれません。そのような思いで接していれば、現在の若手でも十分にそれに応えてくれると信じています。
私が最初に務めたリクルートでは上記のような関係は当たり前で、人の心の中に土足で入ってくる、あるいは入っていく、ような関係がありました。しかしながら、知ることによる責任やそのメンバーに対する熱い想いが、マネジメントする側に生まれてきます。
その上で相手1人1人に合わせたコミュニケーションや、仕事の意味やその背景を伝えていくことも必要になるかと思います。また、相手に合わせて意味のある「褒め方」「叱り方」が重要になってくるかと思います。
私は現在においては、この「叱る」ということがキーワードになってきているように思います。「叱る」ことが世の中的には敬遠されているのかもしれませんが、実際のビジネスのシーンでは時には必要になってくることが多々あります。そこで叱れなければ、次に同じような過ちを繰り返してしまうのは本人にとっても良いことではありません。ただし「叱る」ことは高度であり、パワーも使います。
そういった意味でもまずは若手1人1人と向かい、相手を知り、その上でコミュニケーションする、褒めること、叱っていくことが必要だと思います。
上記2点をきちんと抑えながらマネジメントしていくことが、今後の若手人材へのマネジメントの重要なファクターになると思っています。