新刊ちょい読み 2012/2/21~2/29
右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)
- 作者: 細 将貴
- 出版社: 東海大学出版会 (2012/02)
- 発売日: 2012/02
人間はもちろんのこと、ヒラメとカレイのように右型の種と左型の種の両方がいるような生物でも、脊椎動物なら必ず左側に心臓があると言えるそうだ。ところが無脊椎動物には、大胆にもそっくりそのまま左右を逆転してしまう仰天の進化を遂げた生物がいる。それが巻き貝である。
サザエ、タニシ、カタツムリなど、私たちの周りにいる巻き貝はほとんどが右巻きである。しかしカタツムリなど一部の種においては、少数ながらも比較的たくさんの分類群で左巻きの種が見つかっているのだ。本書は、そんな生き物たちの「右と左」に関する進化の物語。主役はカタツムリとヘビだ。
著者は、ある日ふとしたことから仮説を思い立つ。左巻きのカタツムリが誕生したのは、左巻きよりも右巻きのカタツムリを食べるのに熟練したもの ― つまり、右利きの捕食者がいるからなのではないだろうか。 その後、カタツムリばかりを食べるというイワサキヘダカヘビの存在を聞きつけ、はるばる西表島まで調査に乗り出す。それにしても手を持っていないヘビが右利きとは、一体どういうことなのだろうか?
答えは、口の中にあった。ヘビ類は人間にとっての両腕のように下顎の左右を別々に動かすことができる。しかも下顎の歯の数を数えてみたところ、右顎24、左顎16という左右差があることも見つけることができたのだ。かくして、右利きのヘビ仮説が完成したのである。
しかしここまでは、あくまでも途中段階に過ぎない。実際に行動実験を行って証拠を得なければ結論にはならないのだ。そして、ここから机上の長い旅路が再び始まる。はたして、結果はどう出るのか?
西表島の夜間フィールドワークに見られる深遠なる世界の描写。研究の要所要所で、奇跡的に他人が運び込んでくれる幸運。全てが著者の人柄によるものだと思う。何より「本当におもしろい研究は、誰にでもわかるものでなければならない」という信念が素晴らしい。
冷静に考えれば、ヘビが右利きがどうかは実にどうでもよいことだ。でも放ってはおけない。そんな愛すべき一冊。
(※HONZ 2/23用エントリー)
「コンビニか!」とツッコミを入れたくなる3冊
『体脂肪計 タニタの社員食堂』が大ヒットしたのは、記憶に新しい。その二匹目のどじょうを狙ったわけでもないのだろうが、企業発信のレシピ集が相次いで発売されている。 永谷園のお茶漬け、キッコーマンの豆乳、タカノフーズの納豆、いずれもロングセラー商品の一点突破だ。商品そのままの装丁で、本の寸法も該当商品にほど近い。そのため、本屋の同じ棚で面陳にでもされた日にはコンビニの一角にいるような気分になる。
永谷園のお茶づけ海苔でおもてなし お茶づけ海苔を使った簡単フルコースレシピ
- 作者: 古寺ななえ
- 出版社: ぶんか社
- 発売日: 2012/2/16
今年で発売60周年を迎える永谷園の「お茶漬け海苔」を活用したレシピ集。「春雨茶漬け」、「かつおの角煮茶漬け」など、いわゆるアレンジ茶漬けの部類も面白いのだが、「飴がけフレンチトースト」、「キャラメルクッキー」などデザートとしての利用方法が目を引く。
紀文ブランドの豆乳は1979年の発売開始。こちらも順当に「社員のオススメ豆乳ドリンク BEST10」などから紹介が始まる。ちなみに1位は「ミックスベリー&ソイスムージー」。「サムゲタン風美人スープ」や「タイ風カレースープ」などのアジア系レシピが、意外性ありか。
おかめちゃんの栄養たっぷり納豆レシピ ~社員だけが知っている75品~ (ミニCookシリーズ)
- 作者: タカノフーズ株式会社
- 出版社: ワニブックス
- 発売日: 2012/2/24
最後は今年で創業80周年、タカノフーズの納豆レシピ。こちらは「とろろなめたけ納豆ごはん」、「アボガドチーズ納豆ごはん」など定番の納豆ごはん+αが充実している。水戸出身の僕としては梅納豆ごはんを一押しにしたいところ。ちなみに納豆のタレは、20回程度かき混ぜた後に投入すると、フワフワに仕上がるそうだ。
豆乳レシピ、納豆レシピについては、それぞれの企業の社員によって考案されたレシピとのことで、社内報のような雰囲気も醸し出している。企業のナレッジ共有や、企業PRの新しい形としても注目したい3冊だ。
(※HONZ 2/29用エントリー)
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