「私電話のアポ100%とれます」の自信はどこから
「私、電話のアポは100%とれます」
そうおっしゃる凄腕営業のプロフェッショナルに会いました。
とても良い声で、深く響く声なのです。ビジネスマンだけにしておくにはもったいないという感じです。人柄も素晴らしく、お会いしている間は常に気持ちの良い風が吹いているような方でした。
しかし電話ですから、顔も見えないし、商品を見せるわけでもない。シンプルに声だけで100%とはすごいと思いました。
逆に、かかってくる電話の声だけであまり愉快ではない場合というのもあります。耳のそばから離したい、1秒でも早くお断りして切ってしまいたいとも思ってしまうこともあります。
本当は、実際に会ったら感じ方も変わるのかもしれないけれども、声が良いと人に与える印象というのは大きく違うのだということを最近感じます。
そうは言っても「声だけよくても内容がなければダメなんじゃない?」と思われるかもしれません。
実は私は今まで、自分の人生において「声がいいね」と言われたことはほとんどありません。声楽を始める前は、正直に言いますと、自分でも良い声とは思えませんでした。
以前、友人結婚式で話したところを、お式の後に友人宅でビデオを見たとき、その声も内容も薄っぺらで聞くに堪えなくて、途中で消してもらいたい、いや、この場から消え去りたいと思ったことさえあります。
しかし、ボイストレーニングを初めて数年たった頃でしょうか。
最初に褒められたのは、音楽会の前にホールでスピーチをしたときのことです。
「声が良いね」というよりかは「心に響いた」「立派だった」と言っていただけて、「あれ?今までと何か様子が違うな」と感じました。
言っている内容は同じようなことをしゃべっていても、以前は何人もの人から「スピーチが良かった」などと言われることはなかったからです。
ビデオを撮っていたので、後日見たところ、やはり確実に声が以前と変化していたのです。広いホールでしたから余計に良く分かりました。
同じことを話していても、声が深いと内容も何か深いことを言っているように聞こえる のが不思議です。客観的に見ても「良いスピーチだ」と思えました。私は自分に自信のないタイプですし、そう思えることは滅多にありません。
なぜそうなったのか?
ボイストレーニングをすることで腹から声が出て、「その声を聞いて、その声に鼓舞される」ということがあります。
音楽の演奏でも、インプロヴァイゼーションされるときというのがありますが、「あ!この音!」という一つの音がきっかけになることが多い。
これは「自信」とかそういうことではなくて、「自分が自分によって鼓舞される」という瞬間が声にもあるということです。
そういうときの自分は、いつもの気弱な自分ではなく「別人格」の自分です。
良い声とは、潜在的に持っているすごい能力が花開く、そういう瞬間を作り出す一つのスイッチではないかと思えます。
人は大いなる可能性に満ちているのだと信じています。