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ライフワークとしての音楽を考えていきます

音楽を止めるか続けるかはリーダーの音楽観

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先日、NYフィルの公演中に携帯の音が鳴り指揮者のアラン・ギルバートさんが、マーラー作曲の交響曲第9番の終盤に、演奏を中断するというハプニングがありました。
 
携帯を鳴らしてしまったビジネスマンはマナーモード設定にしていたのにも関わらず、不幸にも「目覚まし」が鳴ってしまったようです。
あの「マーラーの9番」を聴きにくるくらいですから、熱心なファンであるだろうし、まさかご自分が鳴らしているのであろかということは夢にも思っていなかったのです。→記事
 
もう「事故」としかいいようのない事態だったのですが、携帯電話の恩恵をこれだけ被っている現代の世の中で、コンサートにおいての「音」の問題は今後も常につきまとうことになっていくことと思います。
 
私自身もiPhoneの愛用者でありますし、大変便利な思いをさせていただいております。
演奏会に限らず講義や講演においても、必ず電源をオフにするようにしていますが、いくら気をつけたとしても、いつ自分が「音」を鳴らしてしまう立場になってもおかしくないと考えています。
仕事が延びてしまい、楽しみにしていた演奏会の開演時間ぎりぎりに飛び込み、「ついうっかり」ということもあり得るわけですね。
 
先日、 「本当に音楽をとめるべきだったのだろうか」という記事でも書きましたが、指揮者のギルバートさんは3分以上鳴り止まない携帯音のため演奏を中断されました。
 
この判断は、演奏も含めての指揮者の判断だと受け取っています。
その演奏者の演奏を聴きにいくという時点で、すべてはその方にゆだねてられているのです。
だから、止めたことが良いか悪いかというよりは、そこも含めてのコンサートであると私は考えます。
このような社会ですから、もしかしたらば、それまでそのような経験は一回ではなく、鳴りながら続けていたこともあったかもしれません。
彼に聞いてませんので分かりませんが、もしかしたら今回は、オーケストラの気持ちを強くくんでとられた行動かもしれない、とも想像します。
 
2011年9月16日の記事「うるさい!電話をかけてあの電車を止めてくれ」でも書いたことがありますが、指揮者カラヤンがN響との合同演奏会のためにベルリン・フィルと来日したときのこと。当時演奏会場であった千駄ヶ谷体育館の横を通る中央線の轟音で、オーケストラの音がかき消されてしまうほどでした。
「帝王」とも言われるカラヤンは、アシスタントの岩城宏之さんに「うるさい!電話をかけてあの電車を止めてくれ」と怒鳴ったそうです。いくら帝王の命令でも。電車が電話一本で止まるはずもありません。岩城さんは瞬時に判断し、カラヤンとオケの前でメチャクチャな番号にかけて命令口調で電話したそうです。カラヤンはニヤリと笑い、何事もなかったように指揮を続けました。
 
岩城さんは「カラヤンは、轟音に楽員たちがイライラし始めたのに、先手を打ったに違いない」と言っています。
この場合は練習であったのですが、素晴らしい指揮者というのは、常人が計り知れないほどの敏感さで全体の空気を察して、組織にとってベストな結果がでるような行動をとることもあるのですね。
 
私自身演奏中に「音」が鳴っているのが聴こえたことは何度かあり、実際演奏を止めたことはありませんでしたが、次回からはできるだけ鳴らないように、気をつけていただくように、少しずつ工夫をしていっています。
 
もちろん、コンサートホールや音楽事務所も、このような時代ですから、なんらかの対策は立てておられているとは思います。
 
何百人~何千人もの人が「音」の鳴るものを一つの空間に持ち込むのですから、「絶対に鳴らない」という保障はありません。
 
今後は、皆が気持ちよく演奏に感動できるように、様々な方向から考えていく必要がありますね。

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