「後から入ってきた人があんなに進歩しているのに自分はいつまでたっても下手だ」 しかしどんな人でも必ず前進できる
合唱の最終目標は良い音楽をすること。
そのためには、全体の気持ちが一つになって音楽に感動していること。
その感動をどうしても音にして表現し伝えたい、という目標を共有することで良い演奏となります。
表現する上での技術も大切ですが、それよりももっと大事なのは全体の気です。
やわらかな「気合」と言ってもいいかもしれません。
不思議なもので、「仕事で忙しい忙しい」と言いながらも本番が迫ってくると気合が入るのかそれなりに形ができてきます。
気持ちが一つになれば気合も良い具合に乗ってくるというものです。
この気を持っていくのが指導者の一番の仕事かなと思っています。
技術を教えるのは二の次です。
教えているときに忘れないようにしていることがあります。
「どんな人でも前進する力がある」
ということ。
集団の中では、すぐに吸収してどんどん良くなる人と、目に見えない速度でも少しずつ良くなっている人がいます。特に、体で覚えるものなので、個人差があるのです。
良くなるのが早い人は目立つものです。
遅い人は、ちゃんと進んでいるにもかかわらず「後から入ってきて隣で歌っている人はどんどん上手になっているのに、私はいつまでもダメだ。恥ずかしい。」と自分と比べて心が折れてしまうのです。
そして、「皆に迷惑をかけている」と思い始めてしまう。
そういう人の気持ちがマイナスのエネルギーで全体に伝染してしまうことさえあります。
出来るようになるスピードも人それぞれです。今出来ている人でもどこかでスランプになることもあるし、続けていれば出遅れている人が追いつくことだってあります。
私はピアノを始めたのが遅く、最初のうちはかなり情けない思いをしていたのです。
「自分は遅れている」と落ち込んでいる人をみると、ついそのときの気持ちを思い出して、とても共感してしまいます。私自身がそうでしたから。
一人一人は本当に個性豊かで、全体の平均値での指導というのは私は不可能だと思っています。
だからこそ、真剣に見るし、見守る。
そして「今声をかけなければ」という瞬間を逃さず短く声をかける。
その時、いかに魂の宿った「ことば」をかけられるか。
これが本当に難しいんですね。
歴史的なリーダーのことばを読んだり、日々まだまだ勉強中です。