技術者にとってのM&A
先週のことだが、Oracleは新社屋でApplication Server関連のセミナーを開催した。このセミナーの参加対象者は、旧BEAに関わってきた技術者だった。
マーケティング的な見方だと、Oracle Appliation ServerでもWeblogic Serverでも、アプリがほとんどJavaなんで問題ないですよねという話になりやすい。移行もなんら手間はかからないでしょう、と無責任に発言できるかもしれない。とはいえ、実際に現場でアプリケーションの開発に携わっている技術者にとっては、そう簡単な話では済まされないはずだ。
自分たちが身につけた技術が今後いったいどうなるのか。もちろん、技術的に重複するところがあれば、やがて縮小するものもあるだろう。とはいえ、Oracleは積極的にいいものは取り入れるという体質があるようなので、買収したもののほうが優れていれば、旧来の自社環境がむしろ縮小することも考えられる。実際、将来的には、J2EEアプリケーション実行環境については、OracleのOC4JではなくWeblogic Containerを採用し、その上にKoda、JMS、JPA、ADF、TopLinkなど両社のもっているモジュールを載せた形にしていくとのことだ。
こういった製品のロードマップがどうなるのかといった、技術者のもろもろの不安をぬぐい去ろうという意図もあって開催されたのが先週のセミナーだ。もともと、BEAには強力な技術者コミュニティがあると聞いている。製品だけでなく、この技術者コミュニティをいい形で取り込むのも、Oracleにとっては1つの大きな課題と言えるだろう。製品がある程度集約されるのは仕方がないとしても、それとともに優秀な技術者まで離れてしまっては大いにもったいない。このあたりは、最大限に気を使っているように見えた。
BEAの技術者にとって、Oracleとの融合はこれまでの技術が通用しなくなるかもしれないといったデメリットばかりではない。大きなメリットの1つは、コミュニティ組織が大きくなり安定したことが挙げられる。ようはコミュニティに割り当てられるリソースやお金が増えたのだ。BEA時代の小さい組織ではなかなかやりたいこともできなかったが、Oracleに取り込まれすこし余裕もできやりたかったことに手を出せるようになる。
買収されたことをネガティブに捉えることはいくらでもできるが、新たな状況をむしろ最大限に利用してやろうと思えれば、Oracleという大きな会社は利用のしがいがあるところだろう。こじんまりとした昔の組織を懐かしむよりは、したたかに大きな存在を使い倒してやろうと考えられれば、技術者にとってもこの買収劇は悪いものではないのかもしれない。