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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

狩野モデルについて狩野先生と議論したときの気づき

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ソフトウェア品質シンポジウムの基調講演に狩野紀昭先生にお話いただけることになりました。私は企画メンバー(シンポジウム委員)のとりまとめを拝命しています。

特にお願いしたわけではないのですが、狩野先生の基調講演のアブストラクトに参加者向けの質問を書いていただきました。ソフトウェア品質シンポジウムの参加者はほとんどがソフトウェア技術者なので、参加者ではなくともソフトウェア技術者向けにアンケートを実施して回答を狩野先生と事前に共有すると基調講演でお話いただくときの参考になるのではないかと思い、事前にアンケートを実施しました。

アンケートの質問と回答、その結果に対する狩野先生からのコメントは記事としてアットマーク・アイティ(@IT)に寄稿しました。以下のURLから読めます。全文を読むためには、無料のアカウント登録が必要になります。
https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2308/29/news012.html

では、本題の気づきを...

1つは「魅力的品質」「当たり前品質」といった名称は原典の論文(*)にも併記されている名称ですが、正式には「魅力的品質要素」「当たり前品質要素」です。品質要素は狩野先生からの2番目の質問「質問2:狩野モデルを当てはめる対象は「1つの品質要素」「品質要素の体系」のどちらですか?」にも含まれています。品質要素とは、品質のある側面であると考えるとイメージしやすいと思います。単純に「品質がよい」といっても、何がよいのかがわからないために要素に分解します。レスポンスがよければ性能という側面の品質が優れていると考えられると思います。バグが少ないと機能性が優れている、使い勝手がよければユーザビリティ(使用性)が優れているということになると思います。それぞれの品質要素の充足度に対して一元的、違う側面は魅力的ということが元々の狩野モデルでは想定されています。例えば、レスポンスが早ければ早いほど(性能の充足度合いが高ければ高いほど)、ユーザの満足度につながれば、性能は一元的品質要素と言える、といった具合です。

しかし、この質問2の回答の半分くらいの回答が「わからない」でした。これは魅力的品質が機能(バックログアイテム、ユーザストーリー、ユースケース)に対する評価として説明しているものが多いことも理由ではないかと思います。単一か複数かと聞かれても困るという感じだと思います。魅力的品質、一元的品質といった説明を機能に対して使っているソフトウェア開発に関する書籍は多いと思います。機能の有無も品質要素になり得ますが、その機能の品質要素に対して充足度と満足度の関係を考えるとより精緻な機能選定や品質評価の方法を考えることができそうです。

もう1つは、魅力的品質は時間経過とともに競合が現われる等して、一元的品質、当たり前品質と変化していくことです。記事には書いていませんが、魅力的品質の前に無関心品質があります。最初は「こんなの必要なのかな?」という品質要素の充足度と満足度が関係のない状態(無関心品質要素)からはじまり、使い方や効果がわかってくると魅力的に感じはじめるといった具合です。もちろん、無関心品質の中にはそのまま無関心のまま終わるものも多くありますが、「現時点では無関心品質要素」と言えるような機能を投入し探索的に見つけていきます。

こうした狩野モデルの話にご興味のある方は、2023年9月7日のソフトウェア品質シンポジウム基調講演をぜひ聴講ください。2023年9月3日現在、Webのフォームからの申込みページは閉鎖していますが、メールでの申込みは続いています。詳細はこちらの電子メールアドレスまで。

*原典: 狩野 紀昭, 瀬楽 信彦, 高橋 文夫, 辻 新一, 魅力的品質と当り前品質. 品質, 14(2), 147-156(1984) https://www.jstage.jst.go.jp/article/quality/14/2/14_KJ00002952366/_article/-char/ja/

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