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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

Scrum Gathering Tokyoで聞く「組織としてのアジャイル」と「顧客のためのアジャイル」

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アジャイル開発はソフトウェアに求められるものが明確でない状態で開発を開始する際に特に適しています。ウォータフォール型や計画駆動型であっても不確定要素については、先行開発や技術検証といった名目で早めに取りかかっているのではないでしょうか。

アジャイル開発には、いくつかの形態やプラクティスがありますが、大別すると「開発するメンバにとって便利・有利な形態、プラクティス」「ユーザ(ソフトウェアを使ったり、価値を享受するメンバ)にとって便利・有利な形態、プラクティス」に分けることができるでしょう。

2011/10/19(水)に開催されるイベントScrum Gathering Tokyo 2011では、開発するメンバにとってのアジャイルをKniberg氏が顧客のためのアジャイルをPatton氏が講演されるそうです。

実行委員の川口氏から紹介文をいただいたので、以下に掲載します。

スクラムという手法は、「スクラムガイド」でも全面に押し出されている通り、人間活動、チーム活動の側面で、"エンピリカル(経験主義)" を基調にしています。ただし、定量情報はあまり重視せず、共感・自信・信頼など、ウェットで定性的な情報のアウェアネスを重視しています。

今回来日するヘンリック・クニベルグさんが書かれている「塹壕よりScrumとXP」(InfoQより無料でダウンロード可能)は、初めてアジャイルに取り組むスタートアップのチームに一通りの実践ガイドを与えるもので、世界中でアジャイルの入門書として愛読されています。

ヘンリックさんがコーチとして重視するのは、まさに「現地現物」でして、企業のコーチングを行う際、座学としてのスクラム入門と並行して、現場観察とインタビューにより各チームの行っている作業がどのように成果物につながっているかを書き出すバリューストリームマップを書き出すことから始め、そこに潜むムダを一つ一つ排除していく、ということを行っているそうです。(2009年の来日時のQConでの講演内容から記憶を頼りに記載)

もう一人の話者、ジェフ・パットンさんは、「アジャイルでソフトウェア開発が効率化した先にどうするか?」を課題にしています。アジャイル開発とほぼ並行してブームになった、CooperやAdaptive Pathを始めとするユーザエクスペリエンスとIDEOに代表されるデザイン思考の概念を取り込み、顧客発見やチームによるアイデア創出をもとに「なにを作るか?」をチームとして探索し可視化する方法論を探求しています。彼のワークショップは実践的に手を動かし、カードを使ってコンセプトから手順までを見える化するものですので、各自持ち帰ってすぐに現実の開発に役立てることが可能です。(Day2で彼のワークショップをフルセット体験していただくことも検討しています。)

イノベーションのジレンマに陥らないために、組織内チーム内の人々の持つ根源的な創造性を引き出し、潜在的な顧客価値を探索・発見し、地に足のついたイノベーションを生み出し、一つ一つ優先順位をつけて実現していく、知識創造チームのための方法論をジェフパットンさんが紹介してくれるはずです。

技術としてのアジャイル開発を補強して、社会的に役立つモノ作りのため、「組織としてのアジャイル」と「顧客のためのアジャイル」を、それぞれ語ってくれると期待しています。

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