オルタナティブ・ブログ > 永井孝尚の写真ブログ >

ライフワークを持とう。ライフワークを究めよう。

ヤッホーブルーイング 井手社長の講演。ヤッホーは、「消費者目線で、他社が躊躇するくらい徹底的に差別化された、ビール製造サービス業」だった

»

大手ビール会社の味がどれも似たようなものだと感じている方は多いのではないでしょうか?

かく言う私も、そうでした。

しかしある日、近所の酒屋で売っていたクラフトビールやベルギービールを試しに飲んでみたところ、とても美味しいことに気がつきました。

私はあまりお酒は飲めないのですが、美味しいビールは好きです。

こうなると、色々と試し飲みしてみたくなります。

色々飲んだ末、個人的に一番美味しかったのが、ヤッホーブルーイングという軽井沢にある会社の「よなよなエール」と「水曜日のネコ」という、ちょっと変わった名前のビールでした。

よなよな&水曜日.jpg
この会社のビール、最近は酒屋やコンビニなど、色々なお店でも見かけます。

そのヤッホーブルーイングを率いる井手直行社長のご講演が、昨日2014/12/2、日本橋で行われた日経電子版ビジネスフォーラムであったので、参加しました。

マーケティング戦略が素晴らしく、とても勉強になりましたので、ご講演内容と感じたことをまとめたいと思います。

 
【講演から】

ヤッホーは1997年から1999年まで、地ビールブームで急成長した。しかしブームが去り、1999年から2002年にかけて売上減少に見舞われた。そこから復活し、急成長。現在9期連続増収を達成中。

 
行ったことは、大きく2つ。

1つ目は、ビールの理想の味を徹底追求したこと。ビールの味のバラツキがあった。そこでビールの力を磨く必要があった。

もう一つは、インターネット通販。それまで大手ビール会社のミニチュア版、つまりスーパーや問屋経由での販売をやっていた。2004年からインターネットで消費者に直接売るようになった。

つまり、消費者目線で差別化された、ビール製造サービス業に進化した。

これが一番大きな変化だ。

 
実はネット販売は1997年から行ってた。楽天も同じ年の創業。当時は三木谷さんも「ネットでビール売ってみませんか」と当社に営業に来ていた。

問屋も酒屋もスーパーも、当社のビールを扱ってくれなかった。仕方ないので、パソコンに慣れない井手さんが独学で、まず人差し指タッチで一人でやり始めた。でもほとんど売れない。

ネット販売は楽天大学で勉強しながら、学んだ。

ある日、楽天大学の講師とこんな会話をした。

講師  「井手さん、デザインできますか?」
井手さん「できないです」
講師  「じゃぁ、何できますか?」
井手さん「ビールのことなら、伝えたいことが一杯あります」
講師  「じゃぁ、ビールのことを書いたらどうですか?」

その夜、ネット販売サイトでビールのことばかりをギッシリと書いた。いきなりその晩、注文が数十件来た。

 

(「マーケティングや市場調査で、ネットをどのように活用しているか?」という質問に対して)

「水曜日のネコ」を事例にお話ししたい。

水曜日.jpg


市場で類似のビールを調査した。評価要素は「フルーティ」「飲みやすい」が圧倒的に多かった。またこの評価の裏には「苦くない」があると考えた。そこで30代前後の女性をターゲットに考えた。

ブランディングは、「主語(誰が)」×「いつ・どんなときに」×「どうなる・何になる」の掛け算になる。

「水曜日のネコ」は

「TSUBAKIな女性が、仕事終わりにOFFタイムで、リセットするビール」とした。

その上で、飲んでもらったり、インターネットでアンケートに答えてもらったりして、身近な女性に声をかけて確認した。

サンプル数は多くはない。しかし生の声を聞いている。

 

(「コアなファンを広げるにはどうしているか?」という質問に対して)

リアルイベント、つまり一緒にファンとビールを飲むイベントを三種類に分けて実施している。YPP (Yonayona Peace Project)と読んでいる。


・熱狂的ファン向け:宴・仕込み体験。毎月80人強参加。アンケートは7段階評価で、TOP2が93%、TOP1 が62%だ。これで感動・口コミが拡がっていく。

・中級社ファン向け:醸造所見学ツアーTOP1が76%

・初級者ファン向け:ビアパブ見学

インターネット上でも、広く仕掛けている。但しネットでは深くは刺さらない。リアルイベントと組み合わせることが重要だ。コアな顧客を感動させるためには、ネットだけでは弱くなってきている。

 

(「ブランド戦略はどのように考えているのか?」という質問に対して)

ヤッホーはこんなブランドを持っている。

126_02.jpg

製品開発の基本方針は次の通りだ。

・差別化を行う
・その差別化も、他社が真似を躊躇するくらい、徹底して行う
・ターゲットは明確に、狭くする
・ブランディングする

さらに、キャラクターを立てる。たとえば、「水曜日のネコ」では、ネコ。

キャラクターを立てると、何がいいか?
まず、わかりやすい。感情移入しやすくなる。擬人化することで、「製品」から「仲間」になる。(「ネコちゃんゲット」「今日はネコちゃんにゃん」みたいになる)

「水曜日のネコ」では、缶のデザインは8種類作った。そしてターゲットの女性層に聞いてみた。選定ポイントは、

・まず、多くの人が選ぶデザインは×。「どれがいいですか?」と言うと、評論家的に「みんなはコレがいいと思う」と考えてしまい、無難なものを選びがちである。これは排除する。
・2−3割の人の強い支持が、心地よい
・賛否両論がある方が良い
・誰が選んだかも重要である。ターゲット層が支持するものであれば、OK。
・選んだコメントも重要。宗教、政治、人種差別的なコメントはNG

 

(「先日、『キリンへの生産の4割を委託する』という発表もあった。流通量が大きくなると、ブランドが希薄化・毀損される恐れはないのか?」という質問に対して)

ヤッホーバリュー(価値基準)を定義している。「クラフトビールの定義とは一線を画し、我々がファンに支持されている価値」として、次の3つを決めた。

1.革新的行動
2.顔が見える
3.個性的な味

どこで誰が作っても、この価値基準をしっかり守っていけば大丈夫だ。

キリンへ生産委託するに際して、長期的なコミットの意味もあって、資本提携してはいる。ただし、傘下に入るのではなく、お互いに対等な提携。記者会見でも、キリンの社長と一緒にYonayona Aleを飲んで、お互いに「うまい!」と言った。

Appleも、アジアの委託工場で作り、大企業になっても、コアなファンが存在し続けている。「自分たちの価値は何なのか?」を見失なわないことが大切だ。

 

(「井手社長は、リーダーはどうあるべきと考えているか?」という質問に対して)

「イノベーションは、会社のカルチャーから生まれる」
こういう企業カルチャーが、常識に囚われず、リスクを恐れず、イノベーションを創出する

まず、ビジョンを明確にしている。「ビールに味を!人生に幸せを!」
それを語り続ける。
そういう環境を作る。

 

【所感】

井手社長がおっしゃっている「差別化を行う。その差別化も、他社が真似を躊躇するくらい行う。ターゲットは明確に、狭くする」は、まさに私が提唱している「ニーズ断捨離」そのものであり、私自身も大いに勇気づけられました。

また「消費者目線で差別化された、ビール製造サービス業」という言葉も、「なるほど」と納得しました。

2年前に当ブログにも書きましたように、アマゾンやアップルも、本質は「サービス製造業」です。消費者に直接働きかけるB2C企業で差別化を徹底するには、これは有力な手段なのだと改めて実感しました。

 

ヤッホーブルーイング、これからも応援したいと思います。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する