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ランダル・ストロス著「Yコンビネータ」...起業家精神とは何かを学べる本

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「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」(ランダル・ストロス著)を読了しました。

「Yコンビネーター」(以下、YCと略す)とは、シリコンバレーの起業家養成スクール。本書はこのYCの3ヶ月間の活動に密着したノンフィクションです。

合格率3%を突破した、スタンフォード、MIT、UCバークレーなどの在校生や卒業生からなる64チームが、3ヶ月間かけて、自分たちの事業を立ち上げるために、「デモ・デー」と言われる数百人の投資家へのプレゼンを目指して、寝食を忘れて働き続けます。

各チームの事業は、「デモ・デー」では投資されるかどうかが決まります。

つまりYCは単なるスクールではありません。YCではシーズン毎に3ヶ月間、このようにリアルなお金を投資し、参加者はアドバイスを受けながら、自分の人生をかけて事業立ち上げに挑みます。

YCは基本的に、スタートアップの事業立ち上げのために、少数株と交換で、シード資金を投資として提供する「エンジェル投資」です。ただ実際に成功するのは100件のうち数件というのが現実。投資時点ではどの事業が成功するかはわかりません。そこで定期的に多数のスタートアップに同時に投資し、かつ徹底的にアドバイスをする仕組みになっているのです。

このYCからは、あのドロップボックスも生まれています。

 

本書を読んで、現代のシリコンバレーにおける起業がどのように行われているのか、その一端を知ることができました。

いくつか抜粋します。

---(以下、引用)---

10年前にはソフトウェアスタートアップがベンチャーキャピタルから資金を得るためには、創業者には業界での長い経験が求められるのが普通だった。また起業には高価なサーバーやデータベースソフトの購入、人材の採用のために数百万ドルを必要とした。現在のYC傘下の起業家たちには情熱とプログラミング能力以外何も必要ではない。

---(以上、引用)---

クラウド登場によりサーバーを所有する必要がなくなり、さらにシステムやソフトウェアも進化したことで、多くの場合、投資額は自分たちの人件費がまかなえれば事業が立ち上がる環境になり、起業の状況も変わってきています。

 

また投資案件を決める基準も、興味深く思いました。

YCでは、創業者たちが成功に必要な資質を備えていると思えるならば、アイデアに弱点があっても大目に許しています。

そして思考の試行錯誤が必要なので、立ち上げるビジネスは途中で変わってもOK。提供しようとするサービスやプロダクトの内容も、頻繁に変わります。

 

起業に適した年齢は、「学部学生よりは多少成熟しているものの、まだ家のローンや子育ての重荷を背負っていない」こと。つまり25歳前後。このことについても書かれています。

---(以下、引用)---

スタートアップを始めてもたぶん失敗するだろう。ほとんどのスタートアップは失敗する。それがベンチャー・ビジネスの本質だ。しかし失敗を受け入れる余裕があるなら、失敗の確率が90%ある事業に取り組んでも判断ミスにはならない。40歳になって養わなければならない家族がある状態での失敗は深刻な事態になる。しかしきみたちは22歳だ。失敗してもそれがどうした?22歳で在学中にスタートアップに挑戦して失敗したとしても、23歳の一文無しになるだけだ。そして得難い経験を積み、ずっと賢くなっていくだろう。これが私が呼びかけている学生向けプログラムの概要だ。

---(以上、引用)---

なぜ25歳なのかについても書かれています。

---(以下、引用)---

25歳はスタミナ、貧乏、根なし草性、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている。

---(以上、引用)---

新卒一括採用などの仕組みもある日本と直接の比較はできませんが、米国のスタートアップの考え方がよくわかる一文だと思いました。

 

---(以下、引用)---

「まず一般的に言って、失敗を隠すな。きみたちがどんな失敗をしたって金を返せとは言わん。」

....

「期日までに仕事ができないと上司に『おい、遅れているぞ』と叱られる。そのままいつまでも仕事が終わらなければ最後にはクビにされるかもしれない。しかしわれわれはきみたちをクビにはしない。しかし市場がきみたちをクビにする。」

---(以上、引用)---

このあたりは、リスクマネーとはどのようなものなのかがわかる部分です。

 

---(以下、引用)---

「実は過去にイライラして口うるさくしたことがないではない。しかし何の訳にも立たなかった。まずい仕事をする人間はいつまでたってもまずい仕事をし続ける。泳ぎを覚えられるか、それともおぼれるか、だ。われわれはきみたちを手助けする。きみたちが望むならわれわれは喜んで手助けする。しかしきみたちがどこか見当はずれな方向にさまよい出てしまっても、われわれはきみたちの襟首をつかんで引っ張り戻したりはしない。これまで成功したスタートアップはみな一切脇目をしないチームだった。寝る、食う、運動する以外はプログラミングしどうしだった。」

---(以上、引用)---

ベンチャーの世界では、何が正しいかわかりません。「これは確実、大丈夫」と思ったアイデアが大失敗し、「これはダメでしょ」と思ったアイデアが思わぬ成功を収めます。だから失敗も多い半面、成功した場合は大きな見返りが得られます。変化が激しい環境では、口うるさく「こうあるべき」と言っても実は間違っているかも知れません。事実に対する謙虚さが求められるのですね。

 

---(以下、引用)---

アメリカの有権者は「アメリカ国民は全体として世界でもっとも起業家精神に富んでいる」と言う。グレアムはそれに強く反論する。彼の意見では、他の国で欠けているのは起業家精神ではなく、多くの創業者が集中する場所だという。そういう場所では多くの人々が起業家として成功する姿を目の前で見られるので起業へのモチベーションが大きく高まるのだ。....「ヨーロッパ人はアメリカ人に比べてエネルギッシュでないという人がいる。私はそうは思わない。ヨーロッパでは人々が大胆さに欠けるなどということではなく、手本に欠けていることが問題なのだ」

---(以上、引用)---

このくだりを読んで、田坂広志先生の「パリで画家が育つ理由」を思い出しました。

本物の絵がパリにはあふれていることが、「パリで画家が育つ理由」なのです。(詳細はこちら)
 
 

本書では他にも、実際のビジネスでも役立つヒントが満載です。

「起業家」とはベンチャーだけの話ではありません。大きな企業の中でも、起業家精神は求められています。

「自分が起業なんて考えたこともない」という大企業のビジネスパーソンにとっても、本書からは得られるものは大きいと思います。

 

 

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