「本物」に触れる時間
2014/4/2付の日本経済新聞夕刊に、資生堂名誉会長の福原義春さんの談話「本物の美には命が宿る「生」に触れて感受性磨く 資生堂名誉会長 福原義春さん」が掲載されています。
福原さんは、「本物」に触れる時間を持つことの大切さを、述べておられます。
---(以下、引用)---
「モナ・リザ」は誰でも知っている。カレンダーやポスターでさんざん目にしたこの絵を、わざわざパリのルーヴル美術館で見ることにはやはり大きな意味がある。絵が置かれた場所、雰囲気もひっくるめて、そのすべてに感動することが大切なのだ。
私の伯父(福原信三=写真家で資生堂の初代社長)は「花瓶でもバラの花でもいい、『本物』を見ろ」といい、私はそれを信条にしてきた。ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンがいうように、複製したものにはオリジナルが持っていたエネルギーが失われている。複製芸術といわれる写真ですらそうだ。写真展でオリジナルプリントの作品を見れば、印刷されたものとは全く異なるということに気づくだろう。
それはなぜかというと、「本物」は生きているからだ。
---(以上、引用)---
私は写真がライフワークです。大学時代から写真を撮る傍ら写真ギャラリーを回るようになり、本物の写真作品が持つ力に圧倒され、感動したことをよく覚えています。
美術館で絵画や彫刻などの作品に触れることも、「本物」を頭ではなく肌で理解する上で、とても大切なことだと思います。
やはり「本物」は、複製とはまったく違います。
私は写真展巡りをして、「いつか、こんな写真を撮ってみたい」と思って、写真の個展も何回かやってみました。
1998年に行った写真展では、展示しているオリジナルプリント、印刷された写真集、パソコン上のウェブ画面で、同一作品を鑑賞できる環境を作ってみました。
自分のささやかな写真作品ではありましたが、この時、オリジナルプリントが持つ圧倒的な力を実感しました。
福原さんもおっしゃっているように、複製物にはオリジナルが持つエネルギーが失われています。できる限り本物に触れていきたいものです。
そして本物の人物にも、できるだけ触れるようにしたいものです。