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日本企業が核とすべきは製品か?技術か? 東レとシャープの事例からの学び

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「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」(NHK取材班、宝島社)の感想の3回目です。

 

本書では、「技術にこだわるべきか?製品にこだわるべきか?」というテーマが書かれています。

結論から申し上げると、本書の答えは、

 企業にとって、核とすべきは技術であって、製品ではない

ということです。

 

Appleのように、製品の選択と集中で成功した企業のサクセスストーリーを聞いてきた私たちにとっては、意外なことかもしれません。

確かにAppleは、スティーブ・ジョブス復帰前までは膨大な製品群がありました。

そしてジョブス復帰後、製品群は絞り込まれ、新製品発表でもモデル数を限定、高度な戦略力と集中投資で高成長・高収益を実現してきました。

本書では、この『選択と集中』が出来るのはジョブスの構想力とプロデュース力に依っている、としています。

 

一方で本書では、製品ではなく、技術を核として多様な製品を生み出すことが、日本企業の成功パターンである、としています。

 

例えば、東レは1961年に炭素繊維の研究開発に着手。

製品として出来上がったのが10年後の1971年。

しかしその時点でも使い道は定まっていませんでした。当初から「旅客機の構造体に使えるかもしれない」というアイデアはありましたが、スペック的にはまだまだ。

そこで,「鉄の1/4の軽さで10倍の強度」という炭素繊維の特性を活かし、釣り竿やゴルフクラブに展開したところ大ヒット。

その技術が自動車に使われ、現在は当初のアイデアの通り航空機にも使われています。

本書では「深は新なり」という東レ・栗原フェローの言葉が紹介されています。「一つのことを深く追求していけば、新しい発見がある」ということです。

そのためには「超継続」が必要であり、失敗から学び続けることが求められます。

そして東レでは優秀な技術者を定年後も手放さず、「人財」として長く雇う人材戦略を取っています。


 

現在苦しんでいるシャープも、東レ同様、かつては液晶技術を核に、バッテリーが長時間稼働する液晶電卓、電子手帳ザウルス、液晶ビューカムといった多彩な製品群を生み出していました。

その後1998年、ブラウン管テレビ全盛の当時、「国内販売のテレビを2005年までに液晶に置き換える」という「液晶テレビ宣言」を行いました。

この大胆な「選択と集中戦略」は大当たりし、液晶テレビ普及で歴史的な役割を果たしました。

しかし結果として、全社経営資源も液晶テレビに集中投資することになりました。シャープは液晶テレビに社運をかけることになり、「技術を核に次々と新製品を生み出す」という勝ちパターンに狂いが生じていきます。

その後、液晶テレビがコモディティ化の波に飲み込まれ、コスト競争に陥ると、液晶テレビに命運をかけていたシャープは次第に追い詰められてしまいました。

最近のニュースでは、スマホ液晶への注力が伝えられています。かつての「勝ちパターン」に戻ろうとされているのでしょう。

 

■「技術を核に徹底的に深める」

■「これを顧客視点で、キラーアプリとしての製品に展開する」

■「そのために、超長期間の超継続」

■「超継続実現のために、人財の長期確保」

これらが互いに密接に絡み合っているのですね。

これは、世界でも際だった高い技術力を持ち、人材の定着度が高い日本企業だからこそ取れる戦略です。

激しい競争環境の中で、この強みをいかに維持していくかが問われていると思います。

 

 

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