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【1500語で交渉する英語 #2】前回会議の合意事項なのに、また蒸し返し議論になる。どうする?

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シリーズ第2回目です。(第1回はこちら)

【ありがちな勘違い】前回会議の合意事項なのに、また蒸し返し議論になる

プロジェクトの定例会議で、冒頭で"What we agreed last time was …"(前回の合意事項は...)と確認することがあります。

しかし前回議論して合意したはずなのに、往々にして、ここで前回の議論が再び蒸し返されることがあります。

こうなると議論は前に進みません。そして本来議論すべきことが議論できず、プロジェクトが進まなくなってしまうのです。

 

【どうしてそうなる?】記憶は忘れ去られ、さらに、間違って記憶される

記憶は忘れ去られるものです。

「忘却曲線」という言葉はご存じでしょうか? 心理学者のヘルマン・エビングハウスはある研究で、人は1時間後には56%を忘れ、1日後には74%を忘れ、1週間後には77%を忘れることを見いだしました。→Wikipediaのリンク

記憶は24時間以内に、急速に忘却されるのですね。

 

さらに加えて、人の記憶は意外と曖昧です。心理学者のエリザベス・ロフタスはTEDの講演で、いかに人は間違って記憶するかについて語っています。

記憶が語るフィクション

被害者の記憶違いによって、冤罪により刑務所送りになり、婚約破棄され、出所したものの健康を害して亡くなってしまう....。怖いことです。

 

人は24時間以内に急速に議論を忘れることもあれば、間違って記憶することも多いのです。

これはビジネスでも同様です。

ビジネスパーソンは実に沢山の会議に出ています。1-2週間前の会議の内容は、結構忘れたり、記憶違いしている人も多いのです。

 

【こうしましょう】24時間以内に、自分が議事録を書いて送る

人が忘れたり間違って記憶したりするのであれば、ちゃんと議事録を残すことが一つの対応策になります。

会議で議事録を残すことはビジネスの基本です。特にグローバルコミュニケーションでは、コミュニケーションミス最小化のためにも重要です。

しかしながら、議事録が意外と書かれていないのもまた、事実です。

 

グローバルコミュニケーションにおける議事録の威力は、私自身も実体験しています。

私は12年前、アジア太平洋地域で、ある先進ソリューションのマーケティング責任者になり、米国人・韓国人・中国人・シンガポール人・オーストラリア人と隔週で電話会議(テレコン)による定例会議を1年間行いました。

英語は苦手意識がありました。しかし事前に当日のアジェンダを参加者にメールし、会議終了後は、必ずその日のうちに議事録を送りました。

「議事録をちゃんと書こう」と覚悟を決めてテレコンに臨むと、わからないことは何回も聞き直すので、結構なんとかなるものです。加えて、議事録の最後に「もし間違っていたら教えて欲しい」と付記することで誤解も未然に防ぐことができました。

このやり方で、米国本社責任者も含めてスムーズに意志疎通ができ、この年の全世界の半分の売上をアジア太平洋地域で稼ぐことができました。

 

重要なのは、自分が議事録を書くことです。例えば会議の冒頭でこのように言いましょう。

"I will take the minutes and email to you."
(私が議事録を書いて、皆さんにメールしますね)

実は議事録をしっかり書くというのは、グローバルコミュニケーションにおける会議ではとても重要です。議論の主導権を握れるからです。

そして議事録は、相手の記憶が残っている24時間以内に送ることが重要です。

さらに、最後にこう付け加えましょう。

"If you have any comment, please let me know."
(もしご意見があればお知らせ下さい)

 

送られてきた議事録が間違っていたら、それをちゃんと指摘するのがルールです。

感覚的に、米国人は議事録は読まない人が比較的多いようです。しかし会議の直後に議事録を送っておけば、次回の会議までに読んで間違いを指摘するのは本人の責任になります。こうすれば、議論を蒸し返されることはなくなります。

 

【参考までに】日本人も、議事録に同意できなければ意見すべし

相手から送られてきた議事録を読んでコメントする責任があるのは、日本人も同様です。もし議事録に同意できなければ、きちんと指摘すべきです。

同意できない内容に対してちゃんと「同意できない」と言わなければ、それは「同意したもの」と見なされてしまいます。

また会議やテレコンなどで、充分に意見を説明できないこともあります。その場合は、「あとで詳しい内容をメールするから」と述べた上で、フォローする方法が有効です。

ただし、議論は関係者にオープンにしましょう。

グローバルコミュニケーションの基本は、オープンディスカッションなのです。

 

【追記:2013/12/3 12:30】

本記事は、日本IBM様が改善活動の成果物として公開している「テレコン英会話小冊子」に掲載されていたp.7-8の文例を参考に、その背景を掘り下げてご紹介しました。

   

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