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エルピーダ元社長・坂本幸雄さん著「不本意な敗戦」

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日本は一時期、DRAMで80%の世界シェアを誇り、NEC、三菱、日立等、多くの国内IT各社は大きな売上を稼いでいました。

しかしその後、汎用DRAMはアジア勢との価格競争に陥り、現在はエルピーダ 1社に集約。そのエルピーダも2012年2月に会社更生法適用申請がされ、現在マイクロン傘下で経営されています。

皮肉なことに、厳しい経営環境下でも投資を継続してきたモバイルDRAM需要がその後大きく育ち、現在のエルピーダのビジネスは絶好調です。

このエルピーダで10年間社長を務められた坂本幸雄さんは、ここしばらく、記者会見以外にほとんどマスコミに登場されませんでしたが、このたびご著書「不本意な敗戦」を上梓されました。

先日、書店で本書を見つけ、すぐに購入。色々な学びがありました。

実はエルピーダは社員を一人も切っていません。厳しい状況でも技術力を維持したことが、現在の絶好調に繋がっています。そのあたりを坂本さんは次のように述べておられます。

---(以下、p.48-50から引用)---

一般的に倒産した会社というのはムダが多く、多数の余剰人員を抱えているものです。....

しかし、エルピーダには、もともと、そんなにムダはありません。...一人あたりの売上高は、おおよそ1億円です。日本の大手半導体メーカーのなかには、この数字が3000万円に届かない会社もあります。...

...人員リストラした途端、人の流出と連動して、技術も流出してしまいます。...韓国企業や台湾企業は日本の電機メーカーのリストラのおかげでどれだけ恩恵を受けたかわかりません。普通は強くなるためにリストラするものですが、日本の電機メーカーはリストラした分弱くなっていきます。

---(以上、引用)---

まさに日本の製造業が陥ってしまった、戦略欠如の一面を描いています。

 

また、モバイルDRAMは顧客毎にきめ細かいカスタマイズが必要になります。これが価格競争に陥り勝ちな、汎用DRAMと大きく異なる点です。これに関しても次のように述べておられます。

---(以下、p.64-67から引用)---

...お客様の言うことを忠実に実行するだけの「前垂れ商売ではうまくいかない」ということです。....

(日本の半導体企業は大手電機メーカーの一部門として発足した経緯から) 主導権は「半導体を使う側」が握っています。新興の半導体部門は社内の発言力も弱く、「こういう半導体を必要だから作ってくれ」と言われると、そのとおりにします。

...(インテルは) お客様であるパソコンメーカーとの関係でも主導権を握ったのです。つまり、各パソコンメーカーは、インテルがどんなCPUを開発するかに合わせて、自らのパソコンの商品設計を決めるようになりました。

ビジネスの主導権をがっちり握ることができれば、たやすく高収益をあげられるということも、インテルの軌跡は実証しています。

半導体企業の理想は、やはり、これです。

お客様を大切にしつつ、しかし、その言いなりではなく、お客様が潜在的にほしいと思っている技術や製品を先回りしてつくる。...エルピーダが2003年から手がけているモバイルDRAMは、こうした先取り型の技術開発の一例だと思います。

---(以上、引用)---

「お客様の言いなりになっているだけでは価値を生み出さず、価格勝負」ということは、私も講演や本などでお伝えしていることですので、とても共感しました。

 

本書は、厳しい環境の中で10年以上エルピーダを経営されてきた坂本さんならではの視点で、日本企業や日本企業を取り巻く環境について、他にも多くの問題点を指摘されておられます。

ご一読をお勧めします。




 

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