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参加型民主主義への序章。『自然エネルギーに関する「総理・国民オープン対話」』 #openkonc

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昨日14:00-16:00に総理官邸で『自然エネルギーに関する「総理・国民オープン対話」』が開催されました。

既に動画も公開されています。

今回の参加は、

・菅 直人 内閣総理大臣
・福山哲郎 内閣官房副長官
・田坂広志 内閣官房参与
 [司会]藤沢久美 シンクタンク・ソフィアバンク 副代表

で、6/12の『自然エネルギーに関する「総理・有識者オープン懇談会」』に寄せられた質問に答える形で進められました。

ニコニコ動画だけでも3万人が参加していました。

Twitterでの質疑応答もありました。前回同様、Togetterでまとめてみました。

■議論へのコメント (ハッシュタグ#openkonc)→リンク
15:38-16:05辺りの部分のみ1500件です。(それでも全部拾えていないようです)

■質問 (ハッシュタグ#openkonq) →リンク

■専門家/メディア向け質問 (ハッシュタグ#openkonm)→リンク 

いくつか質疑応答をTwitterでメモったので、書き直して紹介します。

■町田の可喜庵というソーラーハウスを展開しているエコハウスから「個人住宅で井戸水を使ったりトイレは浄化槽を自然エネで動かすような防災拠点を展開したい。国として支援して欲しい」

→首相「島や個人の住宅が自然エネで全てまかなうモデルを作りたい。制度作りも含め拡がるよう応援したい」

■宮城県・仙台から「経産省と市民団体NPOの間で定期的なエネルギー政策協議の場を持つことは可能でしょうか?海外では10年以上、官庁とNPOが定期的に協議しているケースもあります」

→首相「自然エネルギーは、大勢の人が参加しないと拡がらない。どういう場がありえるか、実験的にでも行いたいと考えています」

■「不安定な自然エネ普及を考えるのならば、蓄電・スマートグリッドの整備も考えるべきでは?」

→首相「全くその通り。色々な組合せで考えていくべきだと考えている」

■「ドイツでは、自然エネルギー普及に際して国民負担を招いた。日本ではどうか?」

→首相「これは投資であり確かに最初にお金はかかる。将来のエネルギーはどうあるべきなのか、国民が将来の姿を考えて、どう育てて投資するか、判断することだと思います」

→福山副長官「自然エネルギーが高いと言われるが、何をもって高いのか?エネルギーの長期的コストも考えて示すべき。ドイツはそれを示して国民が選択し投資た結果、10年で太陽エネルギーが17倍になった。過去、日本では銀塩カメラ→デジカメや、固定→携帯への切替えは5-7年で起った。先進技術はすごい勢いで普及する。日本でも自然エネルギーが普及できる筈だ」

→首相「その制度(エネルギー買取り)を作ることが、普及に繋がる、と考えている」

■「原発廃止や発送電分離について、イタリアのように国民投票してはどうか?」

→首相「日本では国民投票制度がないが、国民が選択できるようにはすべきだと思う。ただ、「廃止か?継続か?」という単純な議論ではなく、前向きに選択できるように、例えば、『現在の自然エネ1%をいかに20%にするのか』という選択肢を、政治が専門家の力を借りてまず用意すべきだと思います」

→首相「電力問題は二つの視点が必要と考えている。①ピーク時にどうするか?→業務シフトなどでの対応、②長期的にどうするか?→原子力依存の見直し。ある時期は化石燃料が増えるのはやむを得ないが、自然エネ+省エネへのシフトを進めることで、経済界にもよい影響があると考えている」

■長野県飯田市(エコタウン全国2位)から「飯田市では会社と行政が一緒に太陽光発電を普及させている。3.6%世帯で太陽光パネル設置。他にバイオマス等の再生エネ/省水も模索中。環境モデル都市として取り組んでいる。さらに全国に普及するためにモデル的取組みを推進したい。政府に水利権等規制の緩和を期待している」

→首相「農水省に水利権等整備の取組みを指示したい。」

■「復興支援や原発問題についてもこのような会議はできないか?」

→首相「是非やりたい」

■田坂参与「現状をどうするか?、という現在への対策と、将来どうすべきか、という考えは分けて考えるべきでしょう。原発事故の原因は今も調査中で今後の対応を検討しているところです。私達が今議論しているのは、『結局、脱原発なのか、原発は継続すべきなのか?』という単純な議論ではないことを、皆様にはご理解いただきたい」

■田坂参与「このオープン懇談会は、参加型民主主義のスタイルです。自ら参加し、考え、行動する。これが自然エネと相性がよいようです。どこまでいっても、参加している国民が主人公です。」

→首相「初めて立候補した頃、「あきらめないで参加型民主主義を目指す市民の会」を作った。これは自分の政治のキーワードになっている。自然エネルギーは参加型エネルギー。国民が参加して新しいものを作ることに合ったテーマだと思う。しかし物事を変えるには力と中身(アイデア)が必要です。他テーマでも、このよう場を提案型交流として広げていきたい」

 

この試みは海外でも興味を持たれているようで、Twitterでエネルギー専門家でもあるChris Nelder氏による下記のような書き込みもありました。

The #Openkonc "participatory democracy" approach to rethinking Japan's energy mix is innovative & useful. Wish the US would do the same.

(日本のエネルギーのあり方を再考するための#Openkoncによる「参加型民主主義」の方法は、革新的でとても有用だ。米国も同じことができるとよいのだが)

 

自然エネルギーのオープン懇談会は今後も続く予定ですし、復興や原発問題などへの展開も首相が「是非やりたい」との意向です。まさに、参加型民主主義への試みが拡がりつつあるのを実感します

現在、政党間の権力争いによる「菅降ろし」を見ていても、代議制が今や限界に突き当たっているのは明らかです。

インターネットを活用して、いかに民主主義の新しい形を作っていくか、考えていくべき時期に差し掛かっているのかもしれません。

 

一方で、この試みに対しては、マスコミにも前向きに対応いただきたいと願っています。

多くの人達がTwitterで書き込みをしているのに対して、Twitterの専門家/メディア向け質問 (#openkonm)への書き込みはごくわずか。会社名と名前を名乗って、メディアの立場で質問しているのは数名だけです。

先日のあるテレビ番組で、今回の試みに対して、ある政治記者が「どうしても、ひねくれて見てしまいます」のコメントしていました。ともすると中抜きされかねない、メディアの偽らざる本音かもしれません。

ただ見方を変えれば、このような場こそ、メディアが蓄積してきた実力によって、様々な問題提起を国民に率先して行う大きなチャンスでもあります。

実際、今回の試みでも、上記のハッシュタグのようにメディアや専門家が参加できる場を用意しています。(特別扱いされていないことが、今まで特別待遇だったメディアが感じる違和感なのかもしれませんが)

メディア各社も一緒になって、あるべき姿を考えていければ、日本はさらによい国になっていくと思います。

 

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