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ビジネスパーソンの出版戦略:大木豊成さんインタビュー(その1)「企画に3ヶ月かけた2冊目の本」

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「ビジネスパーソンの出版戦略」インタビューシリーズの続きです。

シリーズその1のライフネット生命保険社長・出口治明さんに続き、シリーズその2として、オルタナブロガーの大木豊成さんとのインタビューをご紹介します。

 

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大木豊成さんは、2008年末に独立されるまで、ソフトバンクで様々なプロジェクトの責任者を歴任されてこられました。現在、独立され、スマートフォン法人導入、及び人事部門や経営企画部門を対象としたコンサルティングを行うイシン株式会社を経営されています。

2008年3月に共著でダイヤモンド社から「ファシリテーターの道具箱」を出版。2009年7月には、ソフトバンク在籍中に孫社長の元で様々なプロジェクトに関わってきたご経験を元に、「ソフトバンク流『超』速断の仕事術」を出版されました。

インタビューから5ヶ月後の2010年7月には、「iPad on Business」(翔泳社)を出版されました。

(インタビュー実施日:2010年2月23日)

 

■初めての共著になる出版で、色々と学びました

永井(以下、N): 「大木さんが初めて書かれた本『ファシリテーターの道具箱』は、共著でしたね。どのようなきっかけで、この本を出されたのでしょうか?」

大木さん(以下、O): 「日本ファシリテーション協会というファシリテーションを学び合うNPOがあって、ボクはここに参加していたんですよね。ある日、ここのメンバーの壇野さん、そして協会元理事の森時彦さんと「ファシリテーションの道具に関する本を書きたいね」という話をしていました。それがきっかけで、森さんが中心になって企画を立て始めました」

N: 「森時彦さんは、この本全体をまとめた方ですね」

O: 「そうです。森さんは『ザ・ファシリテーター』という本を書いたり、色々な会社の経営者を歴任されている方で、この世界の第一人者なんですよね。実は当初、壇野さんは「ファシリテーションのツール(道具)に関する本を書きたい」と言っていて、森さんはさらに『ツールだけを身につけても仕方ない、ということも書きたい』という意見を持っていたんです。みんなで話し合って、『両方を盛り込もう』という話しをしました。それで、日本ファシリテーション協会でビジネス計の分科会を運営していたメンバーにも声をかけ、森さんを中心にしたプロジェクトが立ち上がったんです」

N: 「この本で、どんなことに気をつけられましたか?」

O: 「森さんがおっしゃっていたように、単なる道具箱にしたくなかったですね。企業の経営やビジネスもそうですが、ファシリテーションはツールだけを身につけても役立たないでしょう。だから心得的なものも書きたいな、と思っていました。そこで、『まえがきを厚くしましょう』ということになりました」

N: 「執筆者が10人もいると、なかなかまとまらず、意見が発散したのでは?」

O: 「発散します。(笑) まとまりませんでした。始めてから書き終わるまで結局8ヶ月かかりました。ファシリテーターって、話しを発散させるのが好きな人が多いんですよね」

N: 「それは意外ですね。ファシリテーターって、全体の意見をまとめる役目だと思っていました」

O: 「もちろん、まとめるのも必要なんですけど、話しを発散させてアイディアをどんどんふくらますこともファシリテーターにとっては必要なんですよ。あと、今回のメンバーはお互いに利害関係があるようで実はなくって、対等なんですよ。だから最後まで議論が発散し続けてしまって。アイディアが沢山出たところで、最後は森さんがトップダウンで決めました。どこかで割り切らないといけないんですよね」

N: 「ところで、最初に共著で出版されたのは、何か理由があったのでしょうか?」

O: 「実は、自分一人で書くのが不安だったんですよ。当り前のことですが、本を書いたことがなかったでしょう。最初に森さんの本作りに参加して、とても勉強になりました」

N: 「どんなところが勉強になりましたか?」

O: 「森さんが本を作っていく過程ですね。森さんはみんなで議論させるようにして、どれだけ道具を揃えるかを話し合いました。だから議論が発散したんですが、森さんはその議論で出された道具を次々と分類していました。今から考えると、分類することで目次を作っていたんですよ」

N: 「なるほど、目次ですか。確かに最初の段階では、とても大切ですね」

O: 「本では目次がすごく大切なんですよね。本の全体の構成を決めますから。メンバーはみなツールの中身は分っているので、目次さえ出来てしまえば、あとは書けるんですよね。この本を通じて森さんから教えていただきました。勉強になりましたね」

 

■企画に3ヶ月かけた2冊目の本

N: 「2冊目は大木さん一人での出版ですよね。この本は、どのように出版されたのでしょうか?」

O: 「1冊目をダイヤモンド社から出したので、ダイヤモンド社の編集者の方と繋がりが出来たんです。1冊目を出して手順も分りました。私自身、書いてみたいことがあったので、1冊目の編集者の方に出版について相談しました」

N: 「編集者の方は、どんな反応でしたか?」

O: 「『ソフトバンクの名前を冠するのであれば、多分売れるんじゃないか』ということで始めました。実は当初、プロジェクト・マネージメントの話しを書こうと思っていました。でも、プロジェクト・マネージメントという名前だと、IT系技術書の棚に置かれてしまうんですよね。書きたかったことはそうじゃなくって、ボクがソフトバンクで経験した、事業をプロジェクトとしていかに立ち上げて管理していくか、ということを書きたかったんです」

N: 「なるほど、それが2冊目の『ソフトバンク流『超』速断の仕事術』の出発点だったんですね。どのように作っていったのでしょうか?」

O: 「編集者とのやり取りが始まったんですが、『何を書きたいのか?』、『誰向けに書くのか?』、『どんな内容を発信するのか?』ということを決めていきました。このように話すと簡単なことなんですが、実は深く考え始めると分らなくなってしまうんですよね」

N: 「私もそうでした。その感じ、よく分ります」

O: 「モヤモヤっとしたことを構造化してシンプルにまとめるのって、大変ですよね。なかなか分からなくて、編集者の人と話し合いながら、結局3ヶ月間かかって決めていきました。ここでも目次を作っていきました」

N: 「3ヶ月間かけて、骨子を作ったのですね。私の場合は目次を決めるのに5ヶ月かかりました。まとまったものを見ると簡単に見えるんですけど、そこに至るのは大変ですよね。ところで対象読者はどのように考えたのでしょうか?」

O: 「読んでもらう対象は、転職を考え始める30歳前後、また主任など役職に就いたばかりの年代を考えました。実は、当初は30歳過ぎから40代のミドルマネージメント向けを考えていました。しかし途中で、編集者からR25卒業世代を狙おうという提案をいただき、『対象を20代後半から35歳に対象を下げて欲しい』という依頼があって変更しました。」

N: 「企画を固めた後は、どうされましたか?」

O: 「どこの出版社でも同じなんですが、出版社の企画会議にかけられました。この出版社の場合、企画会議は月に一回なんです。ここにかけられて、『本当に売れるのか』というのを色々な観点でチェックしました」

N: 「私達ビジネスマンは『自分の本を出したい』と思って編集者の人に色々とアプローチするんですけど、実は編集者の人達も、企画会議を通すために真剣に企画を作っているんですよね」

O: 「そうなんですよね。しかも、企画会議を通過しても、トップ通過とボトム通過では、広告費のつけ方も変わってきます。編集者の人とは『トップで通そう!』と話していました。熟練編集者の方が担当して下さったおかげで、一発で通りましたね」

N: 「実はクラウドの本を出された林さんの場合は旬のネタなので、3ヶ月もかけて企画を練ることはできなかったんですよね。一方で大木さんや私の本の場合は、旬のネタではなくってスキルや経験を深掘りする本ですよね」

O: 「そうですね。必ずしも出版のタイミングが勝負ではなくって、既に世の中に沢山ある本の中でいかに差別化するかが必要なんですよね。だから、企画に時間をかけることになるんですね」

 

(以下、次回の「実名ブログを書くと、出版する力がつけられる」に続きます)

 

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