日本経済新聞の書評記事「電子書籍が変える読書」
日本経済新聞は日曜日に書評を数ページに渡って紹介しています。
4/4(日)の書評特集「今を読み解く」のタイトルは「電子書籍が変える読書」。
米国でiPadが発売され、日本でも発売間近になり、電子書籍の本も目立ち始めてきました。
そんな中で、4冊の電子書籍関連本を紹介しています。
■石川幸憲著『キンドルの衝撃』(毎日新聞社)
冒頭のエピソードが興味深く思います。
---(以下、記事より引用)---
日本より一足先に電子書籍の普及が始まったアメリカのレポートである。「まえがき」にあるエピソードがショッキングだ。著者が知人宅を訪ねたときのこと。典型的な中流、リベラル、インテリである彼女の室内に、本や新聞が見あたらない。「最近、本を読んでいないの?」と聞くと、にっこり笑ってキンドルを指差したというのである。
---(以上、記事より引用)---
改めて自分の家にある本棚を見てみると、これが全部なくなることはなかなか想像できません。
しかし一方で、本と比べて使い勝手が格段によいKindleを触っていると、出先に何冊も重い本を持っていくよりも、1000冊以上入るKindleを1つもって出かける方がずっと楽だな、と実感します。
このようなことが積み重なった結果、もしかしたら10年後にはこのエピソードのようなシーンもよくある場面になるのかもしれません。
■前田塁の評論集『紙の本が亡(ほろ)びるとき?』(青土社)
以下はまったく同感です。
---(以下、記事より引用)---
本の電子化とは、たんにキンドルやiPadが紙の本にとってかわる、ということを意味するのではない。本の読み方が変わり、本の書かれ方が変わり、本そのものが変わっていくのである。
---(以上、記事より引用)---
「紙のメディア」という制約に基づく本の流通構造は、書籍のビジネス構造の基本的な部分に関わっています。
既にこのブログや他の方々が述べているような本の仕組みが大きな変化の多くは、この流通構造が電子化されることに起因して起こります。
それは、ある人には紙在庫リスクの消滅、ある人には参入障壁の消滅、といった形を取ったりするのでしょう。
■角川歴彦著『クラウド時代と〈クール革命〉』(角川oneテーマ21)
「出版文化だけでなく、情報産業全体、あるいは文化全般も電子化によって激変すると予言」としています。
例えば、今までなかなか本を出せなかったビジネスマンが、電子書籍で本を出せるようになるのは大きな変化だと思います。
しかし、意外としがらみを持っているビジネスマンも多いのが事実です。
例えば、色々な事情で実名ブログを書けない人達もいます。このような立場の人達は、電子書籍で出版の前に、乗り越えなければいけない障壁があるように思います。
電子書籍でも、変わる部分と変わらない部分があるということなのではないかと思います。
■港千尋著『書物の変』(せりか書房)
以下、記事からの引用です。
---(以下、記事より引用)---
書物がその誕生以来、常に変化し続けてきたことを指摘している。たとえばコピー機の普及が、書物のありかたをどう変えたか。「活字文化」というが、活字はとっくに印刷現場から姿を消している。ところが最近は活字の魅力に注目する人びとも現われている。
---(以上、記事より引用)---
確かに、電子書籍は今までの多くの変化の中の1つでしょう。
一方で、古いモノも見直されることもあります。
改めて、全体の大きな情報メディアの流れの中で、電子書籍がどのような位置付けなのかを考えていく必要があるのかもしれません。