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製品ポートフォリオをいかに変えるか?(3) タックマンモデルの活用

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第一回目第二回目から間が空きましたが、今回は本テーマの第三回目です。

ポートフォリオ変革のためには、チーム全体で全体最適を図っていく必要があります。

しかし、一口に「全体最適」と言っても、非常に難しいのが現実です。

関係する部門のリーダー達が集まって話し合って結論に合意しても、現実に実行しようとしても現場で様々な障害が立ち塞がってしまい、結局全体最適を図ることは出来ず、ポートフォリオ変革も実現できません。

これに関して、日立ディスプレイズ業務改革本部長の矢野知隆さんが11/14の日刊工業新聞p.21に書かれた「プロジェクトの成功要因 全員に統一"顧客意識"」という記事にヒントが書かれていましたので、ご紹介します。

矢野さんは、あるプロジェクトの成功要因として、「タックマンモデル」に従って、チームの形成段階を下記の六つに分けてチームパフォーマンスを分析しておられます。

0. ばらばらの個人(パフォーマンス極低)
Ⅰ. 形成期 (パフォーマンス低)
Ⅱ. 騒乱期 (パフォーマンス極低)
Ⅲ. 規範期 (パフォーマンス中)
Ⅳ. 実行期 (パフォーマンス高)
Ⅴ. 散会期 (パフォーマンス中高)

初期3段階の説明を記事から引用します。

---(以下、引用)---

形成期=全体侵攻の状況や進め方を見渡せず、自分の範囲を守ることのみを関心事とする集合体の時期

騒乱期=全体像が見え、その困難さに気付き、いかに自分のみ勝って逃げようかを関心事とする集合体の時期

規範期=自分の役割を認識し、喜々として努力する集合体の時期

---(以上、引用)---

これは非常に分かりやすいですね。

例えば個々の製品レベルだけの視点で考えると、他部門の製品に関係なく、自部門の製品に対して出来るだけ多くの社内予算や社内リソースを配分してもらった方が(行儀の悪い言い方だと「ぶん取って」きた方が)、自部門の製品が売れる可能性を高めることができます。これは自分の範囲を守ることを最優先に考える個別最適であり、上記では「形成期」「騒乱期」にあたります。

一方で、全社レベルの視点で考えると、どの製品に投資するのが会社にとって一番費用対効果が高いのか、とか、どの製品とどの製品を組合わせると会社全体でよりお客様の問題解決を図ることができるか、とか、全部門共通の問題をいかにお互いに汗を流して解決していくか、ということを考えます。これは全社最適であり、上記では「規範期」にあたります。

ポートフォリオ変革を行う場合は、上記で言うと個別最適ではなく全体最適を図ることが重要です。

従って、チーム全体をいかに「規範期」に持ってくるか、がカギとなります。

矢野さんは、ご自身が関わられた事例の成功要因として下記のように述べておられます。

---(以下、引用)---

 これら顧客分析を通し「顧客満足の獲得方法」として、改めて「チーム員全員で顧客が誰かを共有する」ことの大切さを抽出した。「個々分担の完遂とその集合で全体達成」を管理のベースとするマネージメント体系は完全ではない。

 ある一員が自分の部分集合の境界を自分に有利に狭く設定すれば、その外のあいまい部を誰かは拾わねばならぬ。背景や目的の共有をこそ、管理のベースに据えるべきである。

---(以上、引用)---

記事では要因を広く捉えて「顧客満足の獲得方法」「背景や目的の共有」としていますが、全く同感です。

私自身の経験では、「形成期」または「騒乱期」の段階で、下記について全員で共有することが、ポートフォリオ変革実現のためには必要なのではないかと思います。

1.解決すべき課題
2.その課題を解決する手段
3.ターゲットとなるセグメントと優先順位
4.各セグメントに対する販売・デリバリー・チャネルの優先順位
5.各セグメントに対するオファリングの優先順位
6.各セグメントに対するマーケティングプログラムの優先順位
7.達成基準と進捗管理指標(KPI: Key Performance Indicator)
8.進捗管理方法
9.体制と役割分担

さらに、上記1-6の戦略と、7-9で合意したプロジェクト管理方法に従って、できれば四半期毎にPCDAサイクルを回していき仮説検証を繰り返して改善を図っていくことも必要です。

このように見ていくと、ポートフォリオ変革の成功要因は、一般的なプロジェクトの成功要因と非常に相通じるところがあると思います。

 

関連リンク:
製品ポートフォリオをいかに変えるか?(1)
製品ポートフォリオをいかに変えるか?(2) 産油国ドバイの財務ポートフォリオ変革に学ぶ

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