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プロダクト・アウトは悪なのか?

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先日のエントリー「顧客満足度を高めれば、必ず売上があがるのか?」でも書きましたが、現在、顧客中心主義がまっさかりです。

このような状況の中で、「プロダクト・アウト思考は捨てて、全てマーケット・インに転換するべし」との意見が見受けられ、巷ではプロダクト・アウト的な考え方はまるで悪のように扱われてしまう面があります。

確かに、お客様を中心に考えることは非常に大切なことです。

しかし、「プロダクト・アウトは悪である」という考え方は、物事を単純化し過ぎていないでしょうか?

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昨晩のNHKの番組「プロフェッショナル」で、玩具企画開発の横井昭裕さんの仕事を特集していました。放送された概要はこちらにあります。

この番組で、プロダクトアウトと顧客中心主義を考える際のヒントがありました。

横井さんの会社は、10年前、世界中で4000万個を売ったあの「たまごっち」を開発したことで有名です。

あるとき、営業からお客さんの要望として、「たまごっちに一時停止ボタンをつけて欲しい」という要望があったそうです。

確かに、手が放せない状態の時に世話をしなければならないのは、ユーザーからするとかなり困る話なので、真っ当な要望です。

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これに対して、横井さんは、「そもそも、飼い主の言うことをきかないのがペットだ」として、「世話をする面倒くささ」という当初のコンセプトを貫き、一時停止ボタンは入れませんでした。

そう言えば、たまごっちが流行っていた頃、某TV番組に出ていたTVタレント(確かビビアン・スー)が話している途中に「あ、ちょっと待って。今たまごっちにエサをやらなきゃ」と言ってたまごっちにエサをやっていましたね。ただ、もしかしたら、これは台本に書いてある通りなのかもしれませんが。

たまごっちが爆発的ヒットになったのも、このコンセプトを貫いたからではないでしょうか?

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お客様を中心に考えることは大切ですが、全てお客様の言う通りに行うことが正しいとは限りません。

カルロス・ゴーンも、「5年後の車について消費者は答えを持たない」と語っています。

お客様に対して、お客様が気が付かなかった新しい商品やサービスを提案することは、企業の責任でもあります。このためには、商品やサービスに拘り続けることも必要なのではないでしょうか?

忘れてはいけないことは、商品やサービスを中心に考えてはいけない、ということでしょう。商品やサービスに拘り続ける視点の先に、常にお客様の姿を見ているかどうか、が大切なのではないでしょうか?

商品やサービスに拘り続けることが、顧客中心主義に繋がるのではないかと思います。

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