本格的普及期に入ったCRM
昨日(8/6)の日本経済新聞を改めて読み直すと、CRM (Customer Relationship Marketing)が本格的な普及期に入ったと実感します。
---(以下、引用)----
記事名 「売り手の新発想(3)売ってからが商売(消費をつかむ)」
- パソコンメーカーの例:コールセンターによるサポート強化で、再購入率を3.4%から59%へ改善
- 「新規顧客の開拓経費は既存客の再購入にかける経費の八倍かかる」との調査(顧客21,000人の購買状況と利行費用の分析)
- 美容サロンの例:せっかく新規客を開拓しても「一年後の離脱率は約二五%が現実」。声なき声を反映できずに顧客を逃がす例が少なくない中、満足度調査ではなく「不」満足調査を実施。売上は3年で倍増。新規顧客開拓は一切行わず、売上8割を6000名の固定客が占める
- 街の電器店の例:昭和40年代に開発された8000戸の団地の4割を占める3300戸を顧客として抱える。高齢化した住民が大事にするのは価格勝負の量販店ではなく、すぐに駆けつけてくれる安心感
- 紳士服大手の例:20年以上トップを続け毎年2億円以上を売り続ける営業マンの「宝は自分を指名して二回以上来店してくれた千五百人の顧客台帳」
記事名 「苦情・相談が急増、金融機関、顧客の声活用専門部署」
- 金融機関の間で、苦情を法令順守の徹底に生かしたり、商品開発やサービス向上に役立てる取り組みが広がってきた。「苦情は耳の痛い話ではなく宝の山」
- 保険会社の例:「お客さまの声統括部」を新設。苦情の原因の分析や業務改善策を経営会議に提言、四半期ごとに公表して規律
- 銀行の例:「品質管理部」を立ち上げ。顧客の要望や苦情を集約。担当部署や経営陣に伝えて改善を促す
---(以上、引用)----
私自身、CRMビジネスに関わり始めてから10年近く経過していますが、
- 新規顧客獲得はコストがかかる。既存顧客維持が収益に貢献
- 「個」客への対応がますます重要になる
- 顧客の声の活用が重要
というのは、1990年代後半から言われて続けてきたことです。
顧客の問題解決がビジネスの出発点であることは、時代がどのように変わっても、ビジネスの基本だと思います。
2002-2003年頃には「CRMは下火になった」とも言われた時期もありましたが、実際には消費者が洗練化され、「物量戦」と「安売り」だけの勝負では収益を確保できない現在、顧客の心を掴むためのCRMはますます重要になってきています。
最近の記事は、CRMがやっと本格的普及期に入ったことを示しているように思います。
一方で、CRMという「記号」は、既にかなり消費し尽くされています。
実際、上記の記事でもCRMという言葉は出てきません。しかしながら、CRMという概念を代替するような適切な言葉は、なかなか見当たりません。
ともすると「3文字言葉は、ITを売るためのバズワードに過ぎない」というご指摘もありますが、先日もこちらで書きましたように、「消費される物になるためには、物は記号にならなくてはならない」ということも事実であり、一般には理解しにくいITのビジネスでの活動を分かり易く伝える効能があることも確かです。
強いて言うと、現在代替しうる言葉は、「顧客中心主義」でしょうか? しかしながら、この言葉も単に「お客様は神様である」という精神論に陥ってしまいビジネスモデルの議論に発展しない危険性もあります。
今後、CRMという言葉を使い続けるかどうか、ということも、IT業界の課題かもしれません。