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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

教育の大事さを今一度思い起こそう!

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教えるって発見!

7週間続いたAPUでの講義が昨日で終わった。教室の後ろのほうで話をしている学生や、寝ていて呼んでも答えない学生などもいたが、さすがに7週間、週一回3時間以上一緒に過ごした学生たちとこれで最後と思うと、名残惜しく感じた。中には、またどこかで会えないか、と言ってくれる学生もいて、嬉しく感じた。

遠く外国から勉強に来ている学生たちが、一生懸命にまだ十分ではない日本語を駆使して、宿題の回答を作ってくるのを見ると、学ぶことへの真剣さが感じられ、好ましくも思った。また、実際に教えているのは「金融論」なのだが、実は講義の中で技術的なことだけではなく、社会や生き方についても不十分だが伝えていることがあると感じたのは発見だ。

日本の成長の基盤は教育だ!

わが国は、江戸時代の鎖国から、明治維新を経て西欧列強の仲間入りをした歴史があり、また第二次大戦の荒廃から立ち上がって世界第二の経済大国に成長した経験もある。東西冷戦構造が解消し、自由主義経済の先進国の政治や経済が機能しなくなり、世界の経済構造においても構造的な革新が起こりつつある今、何故日本が二度の奇跡を起こせたのか、改めて見直してみるべきだと思う。

最近思うのは、やはり江戸時代の当時としては珍しいくらいの寺子屋を通じた教育の普及が大きな要因だったのではないかということだ。そしてこれと江戸時代の安定的な社会状況の中で築かれた勤勉さというのが、多分明治以降の日本の様々な成果に結びついているのではないか?

日本の良さは何か?

戦後の重化学工業化の成功で、日本の強みは製造業だと言われる。確かに、今でも品質とか微細製造などで世界の追随を許さない分野は残っている。でもこの根源にあるのは、やはり平均的な教育水準の高さと、勤勉さではないのか?

ましてや、もし製造業だけがわが国の強みだとしたら、既に長い間GDPにおける第二次産業の比率が30%前後であるわが国が、継続的にこの経済を支えることなど出来るはずがない。サービス産業における「おもてなし」の心とか、決して強く主張することはしないが、お客様に「やさしく」接すること、など日本の素晴らしいところは製造の現場以外にもある。

それに多分世界で一番美しい国土、更に特定の宗教がなく、キリスト教にもイスラム教にも等しくその価値を尊重できる文化がある。TPPで議論の中心になっている農業だって、その質の高さを考えれば、価格競争とは一線を画した強みがある。

工業化で何を失ったか?

ただ、戦後の成長志向の中で、日本各地の素晴らしい社会や文化の地域から、工業化推進のため多くの国民を都市部に移住させた結果、地域社会や文化が劣化してきているのも事実だ。そして、一方でそれがすべてと信奉してきたGDPや経済成長中心の社会・経済構造がもはや機能しなくなりつつあることも事実だ。

また、地域社会を崩壊させ、成長至上主義で他を顧みない、無責任な自由主義が蔓延した結果、都市部における社会文化の成長は見られず、更に強いと信じてきた製造業の分野でも、更なる成長への原動力が失われつつある。そしてこれらの現象はすべて等しくわが国国民の民度の低下につながっている。

日本の民度をこれ以上低下させるな!

今、大事なことは、このような地域社会や文化の劣化、或いはその後の責任を伴わない自由主義の中で失われてきたわが国の民度の劣化を止めることではないだろうか?もう一度日本の良さを見直し、これを生かすことを真剣に考えるための基盤を構築するべきではないだろうか?

そして一方で、我々よりも進んでいる諸外国の知恵を、明治の時代に真剣に学んだように、改めて取り入れる努力をすることが必要なのではないか?例えば環境に配意した地域づくりや医療・介護の分野では、明らかにわが国より優れた、或いは経験豊かな諸国が存在するのだから。

教育で出来ること

GDPや経済成長だけではない、まだまだ残っている様々な良いところを生かして、日本を本当に魅力的な社会と国にするために、今一度そもそもの基盤であった、今の日本の礎を培った田舎の良さを取り戻すべきではないか?そして、これを支えるのは日本人の民度であり、そのためには学校教育だけではなく社会も含めた教育をもっと見直すべきではないか?

単に技術や学問だけではなく、心の豊かさを学び合うような教育、これを日本人だけでなく海外からも多くの人々に来ていただいて、積極的に学び合う、ここから日本の価値を理解していただくことが出来るようになるのではないか?、また、我々も海外の人たちから多くのことを学べるのではないか?

そしてそのような自らの努力、お互いの努力が日本のファンを広げることで、日本の価値を高め、わが国がその良さを生かした独特の国として評価されるようになるのではないか?大学で教壇に立って講義をしている中で、教育にそのような可能性を感じた。新しい日本を築くために、もう一度教育を見直してみたい。

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