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シリコンバレーのサムライ・ウルフが、イノベーションについてつぶやきます。(時々吠えることもあります。)

シリコンバレーから日本企業にコンサルティングする

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私の会社は日本の大企業へのコンサルティングをしています。シリコンバレーをベースにしながら日本企業にどんなコンサルティングをするかというと、新しい事業のビジョンと戦略プランを提供するのです。なんで私の会社が次々と将来ビジョンが描けるかというと、私たちが優秀だからというわけではありません。(私の部下たちはすばらしく優秀ですが。)シリコンバレーというイノベーションのメッカで活動することにより、この地で一旗揚げようと頑張っている何千社というベンチャー企業の集合知を利用しているのです。

集合知を利用する、と言っても通常の市場調査では普通に買える調査レポートと何ら変わりません。外から見て情報を得るのではなく、コミュニティの内側に入り、双方向のやりとりがあって初めて深い示唆が得られる。コミュニティに入るということは「プレーヤー」になることです。コミュニティを利用することばかり考えて、外から情報を取ろうとする態度では、プレーヤーになるには2つの方法があると思います。プレーヤー人材を仲間にするか、自分自身がプレーヤーになることです。

プレーヤー人材を仲間にするには、私の仲間になると面白い、ワクワクする、ということが必要です。私のビジネスパートナーは、Richard Melmon(リッチ・メルモン)というシリコンバレーを知りつくした人物です。アメリカ最大のゲーム会社であるエレクトロニック・アーツの共同創業者でもある彼が何故日本人の私とパートナーを組みたいと思ったのか?今の私の会社、NetService Ventures Group を一緒にやろう、と持ちかけたのは実は彼のほうだったのです。理由はいくつかあります。まず、私が会社のキャッシュフローを全部面倒見ている、ということ。お金はモノを言います。だけどそれだけではこのような大物は来ない。一番大事なのは、ワクワクするようなコンサルティングのテーマの仕事を一杯持ってくるからなのです。クライアントは日本企業ですが、テーマは未来事業ビジョンに関するものがほとんどです。彼の知的好奇心を大いに刺激します。2つ目は、そのビジョンが我々自身のベンチャー・インキュベーション(私の会社のもうひとつの仕事)にもつながり、それが未来事業機会への投資になっているということ。今日のキャッシュ(すなわち給料)だけではなく、将来のアップサイド(儲け)も必要です。そして3つ目は、自由。私はアメリカではなるべく黒子に徹し、パートナーの彼にかなり任せています。知的活動のアメリカでの手柄はすべてリッチにあげています。リッチとはもう10年来一緒に仕事していますが、辞める気配はありません。理由は、上の3つの理由だと思います。

もうひとつの方法は自分がプレーヤーになることです。私の会社では、自己資金を投じてベンチャー・インキュベーションを進めています。インキュベーションと言っても自社のオフィススペースを貸すばかりでなく、最初の事業ビジョンの創造やチームづくりなど、おおよそ起業に必要なことはすべて一緒に悩み、苦労を共にします。これまで育てた会社の創業者の中には、私の会社出身の人物も多数います。ベンチャーは新しいことを始めるのでリスクがたくさんあります。創業時に作ったビジネスプランの通りに立ち上がることは皆無です。事業の仮説の検証や失敗などからの様々な学びがあり、人間として勢いよく成長する起業家でないとベンチャーは成功しません。だから、ベンチャー投資も事業プランではなく起業家に惚れて投資するのです。コミュニティというのは人の集まりですから、人が根幹です。私のようなこちらでは外国人である日本人がシリコンバレーのコミュニティに入るには、自分自身が起業して大成功するか、起業して頑張る人を助けるか、のどちらかしかないと思っています。前者の例は日本人ではとても少なくて、テックウェル(TechWell)を立ち上げた小里さんくらいしか思い浮かびません。私は後者です。自分が助けた会社に大手のベンチャー・キャピタル(VC)が投資して事業を拡大していくと、シリコンバレーコミュニティから注目されるようになります。私の会社の部下だったEthan Stock(イーサン・ストック)やAndy Jagoe(アンディ・ジェイゴ) などは今ではWeb 2.0やモバイルサービスの世界では深くコミュニティに入りこんだインサイダーになっています。

このようにコミュニティに入り込むことによって、いろいろ動きのコンテクスト(文脈)が見えてくるのです。外から見ていて一番分かりにくいのは、このコンテクスト。これがしっかり肌に染みついていないと、情報からの意味づくりが難しくなります。私の会社のコンサルティングは、このコンテクストを日本のクライアントに示すところが一番の付加価値だと言っても過言ではありません。

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