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ハーバードビジネススクールの日本スタッフとして働く中で、気づいたこと、感じたこと、考えたことを、ゆるゆるとつづります。

英エコノミスト誌が見つめるハーバード・ビジネス・スクールのインド人学長~「危機の後のケース・スタディ」~(1)

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定期購読しつつ、ほとんど読まず、でも捨てられず、部屋の片隅に山のように積み上がるThe Economist...今週もぼんやりとページをぱらぱらとめくっていたら、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の記事が目に飛び込んできた。

A post-crisis case study 「危機の後のケース・スタディ」

ざっと訳すとこんな感じ(一部、はしょってます)。

★★★

HBSは非常に影響力の大きい組織である。ビジネス界においても教育界においても。GEやボーイングなど世界の主要企業のトップの多くがここで学び、マイケル・ポーターやクレイトン・クリステンセンをはじめとする経営学の大家を教授として抱え、210億ドルの寄付金を運用。世界中で使用されているビジネス・ケースの5分の4はHBSで作成されている...

しかしこの10年間、栄光とはかけ離れた話がHBSを取り巻く。当時のCEOをはじめ多くのエンロンの幹部はHBSの卒業生だった。近年世界中の納税者のお金がつぎ込まれている金融業界もまた、HBSの卒業生がたくさんいた。実はジョージ・ブッシュもHBSの卒業生だったりする(注1)。

7月1日、ニティン・ノリアが新学長に就任。彼には二つの「初めて」がある。まずは初めての北米以外の出身の学長であること。そして、HBSの正統性が開校以来最も大きく揺れている時に就任した学長であること。ノリアはHBSが「大きな変革・イノベーションの時期」にいると述べている。

ノリア氏の最初にしなければいけない仕事は、ビジネス一般、そしてとくにビジネススクールに対する信頼を回復させることだ。ノリア氏はHBSの教授陣に、高度な金融技術がもたらしうるリスクについて注意を払ってほしいと考えている。また、知性だけではなく人格を磨く教育の必要性も感じている。ビジネスに関わるということは、(医者や弁護士などと同じように)プロフェッショナルになるということであり、その文脈において彼は学生による「ヒポクラテスの誓い」の運動(注2)を支持した。

ノリア氏はビジネスこそが世界の繁栄の創造の源であり、問題を解決する力があると信じてやまない。アメリカのビジネスの歴史についての研究をもとに、ビジネスには落ちてもまた立ち上がる能力があると説き、また、インド出身という観点から、ビジネスが貧困の解決に果たす役割の大きさを説く。<2へ続く>

 

注1:なお、ジョージ・ブッシュがHBSの卒業生であるということは、まるでなかったことのように、驚くほど話題に上がらない。各種の記念行事でも、彼をゲストとして呼ぶというのも、聞いたことがないし、これからもたぶんない。このあたり、おもしろいなあ、と思う。

注2:ビジネスに携わる者として、責任ある行動を取り倫理を守るという誓いを立てる運動。金融危機の後にMBA Oaths(MBAの誓い)として世界各地のビジネススクールで盛り上がったそうだ。

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