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ハーバードビジネススクールの日本スタッフとして働く中で、気づいたこと、感じたこと、考えたことを、ゆるゆるとつづります。

【番外編】全米最大のOtakuの祭典、アニメ・エキスポに行ってきました(1)

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しばらく、気づけば1カ月以上、ご無沙汰しておりました。書きたいネタが積み上がるままになっておりました...これから一つずつ紐解いていきたいと思いますが、今日はそのうちの一つ、7月上旬に訪問したロスアンゼルスでのアニメ・エキスポについて書きたいと思います。

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威圧的な東海岸の税関とはうってかわって、「シゴト?カンコウ?」と日本語まで交じるフレンドリーな税関にびっくりしつつ、ごろごろとスーツケースを引きながら、LAの大規模コンベンションセンター、Staples Centerに向かう。目的地はアニメ・エキスポ。

1992年に、アニメ好きのアメリカの大学生たちが立ち上げ、年々規模を拡大し、今や来場者数が4万人を超えるイベントへと発展してきた。日本からの特別ゲストによるライブ(今年はAKB48)、企業や作家のブース、企業の新作プレゼンテーションなどが4日間にわたって開かれる。もちろん参加者の標準ドレスコードは、コスプレ。

 

アニメや漫画などとは縁遠い生活を送ってきた私が、LAに飛び、アメリカのコスプレーヤーたちの集う場に向かったのか...それは、ある「シゴト」のためである。といっても、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の正規の仕事ではない。だから、有休を取り、税関では「カンコウ」だと答えた。(だからこのエントリーはあくまで「番外編」)

ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)の日本版のような存在として、一橋大学イノベーションセンターが年に4回発行している一橋ビジネスレビューという雑誌がある。その2010年冬号は「検証Cool Japan:北米における日本のポップカルチャー(仮)」という特集を組む予定になっており、その編集委員を務めるあるお二人から「HBSからテーマに合う企業のケースを寄稿してもらえないか」という依頼を受けたのがきっかけ。

最初はHBSの既存のケース(Pokemonなど)の掲載や、HBSの先生からの寄稿を考えてみたものの、著作権やら何やらでうまくいかず、最終的には、大学の認可のもと、私が個人としてケース作成に協力する、という形に落ち着いた。そして、バンダイのコンテンツの北米展開を手掛けるバンダイ・エンタテインメント社(以降BE社)についてのケースを書くことになった。

 

そのお二人とは。一橋大学准教授でマーケティングがご専門の松井剛先生と、経済産業省の三原龍太郎氏。松井先生は研究テーマとして、三原さんはライフワークとして、日本のアニメ・漫画の海外での受容のされ方の研究に取り組んでおられる。出会ってやたらと意気投合し、彼らが知識と人脈を、私がケース作成スキル(といっても普段英語で書いているので、日本語でのケース作成能力は未知数)を担当、というチームができあがった。

北米でのアニメ・漫画の受容ということを体感するには、LAでのアニメ・エキスポを見るのが一番で、BE社もLAにあるので、「夏に一緒にみんなでLAに行きましょう!」とのりで言っていたら、本当に実現した、という次第。

なお、三原さんは経産省でばりばりと、しかも一連のCool Japan政策を行う部署とは一ミリもかぶらないような部署で、働きつつ、この7月に、コーネル大学留学中の修士論文をもとに書きおこした「ハルヒ in USA:日本アニメ国際化の研究」を上梓。

ポップな表紙(↓)だが、開いてみると、直球真剣勝負の本気の学術論文だ。日本では、コアなファン層だけをターゲットに、ライトノベル、アニメ、映画のメディアミックス戦略で大成功を収めた「涼宮ハルヒ」がどのように北米のアニメファンの間では受け入れられているのか、ということを、文化人類学、比較文化論などの手法を使って、考察している。すごい本、である。ご興味がある方はぜひ!

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事前の勉強のために、お二人にいろいろ教わったり、秋葉原の元祖メイド喫茶のようなところで、アニメ!アニメ!というアニメ情報の提供を行っている会社の数土直志氏にインタビューを行ったり、BE社が北米展開を手掛ける涼宮ハルヒシリーズをどきどきしながらブックオフで10冊まとめて購入したり、読んでみてその世界観に度肝を抜かれたり。

といっても、この分野に関しては相変わらずど素人のまま、アニメ・エキスポに降り立った...(2へ続く)

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