ソニーエリクソンの挑戦(12)~井原氏はソニーの次期社長候補なのか?
わかりません(笑)。私は、昔、とあるビジネス誌で記者をやっておりまして、そこでは、しばしば担当会社の社長人事の予測記事を書くことがありました。そういう場合は、業界の噂話や、いわゆる新聞辞令を紹介することになります。これが、当たることもあれば、まったく当たらないこともありました。
また、自分が所属していた会社でも、社長や役員人事などで、まったく予想のつかない人事が行われることがあり、「自分の会社の人事すらわからないのに、よその会社の人事なんかわかるわけないよなぁ」と思ったものです。
ただ、井原勝美ソニー副社長が、ソニーの次期社長ではないか、という見方をする方もいらっしゃいますので、それについて考察をしたいと思います。
たとえばジャーナリストの大河原克之氏は『ソニースピリットはよみがえるか』(日経BP社、2005年6月20日)において、2005年3月のソニーの役員人事について、次のように分析しています。
「しかし、筆者がソニーおよびソニー関係者を取材する中で得た情報を総合すると、次のようなストーリーが浮かびあがってくる。07年度から、井原勝美副社長を社長とする"本格政権"を立てる。その地ならしとして必要なリストラを、ストリンガー次期(原文ママ)CEOが短期決戦で遂行する。同時に、ソニーらしい強い製品を作るための体制整備を、中鉢次期(原文ママ)社長が中長期で進める、というものだ。
・・・ソニーが創立60周年を迎え、TR60を終了するのが06年。その次の年、つまりソニーの創業61年目に、井原副社長は57歳となる。出井会長(原文ママ)がCEOに就任した年齢、そして、中鉢氏が社長に就任するのと同じ年齢だ。"本格政権"を担うには、ちょうどよい頃合いと言える」(P.197, P.202)
この大河原氏の説で行くと、井原副社長は、今年、社長に就任することになりますが、どうなんでしょうか? 私は、時期はともかくとしても、井原副社長が実績から言って、ソニー社長になってもおかしくはないと思っています。しかし、井原副社長は、ソニー社内では、いわゆる「管理屋」に属しており、「ソニーのトップは、やはり技術がわかる人がいい」との意見が出てくるかもしれません。
この点については、どう判断すべきでしょうか? どういうわけか、私はソニーの社内報を入手しておりまして、そこから、井原氏が副社長に就任した時のインタビューの一部を紹介しておきます。
「私のバックグラウンドは『理科系』
高校時代は、数学と物理が大好きな理科系少年でした。ですから大学は、「素粒子」という物理学を勉強したくて理科系の大学に入ったのです。ところがちょうど大学紛争の真只中で、その年の年末まで授業が始まらなかったんですよ。その頃から志が変わり、物理学から経営工学という分野、特にソフトウェア工学の勉強をし始めました。ソニーに入社して驚いたのは、私のバックグラウンドは理科系なのに、経営工学を専攻したため文化系と勘違いされるのです。ソニーに入ったら違う看板を掲げられた、という感じがします(笑)。」