果敢にチャレンジせよ!
私が長年やっている次世代情報システム研究会というのがある。
ネーミングを考えるとき、具体的な名前を入れるとすぐ陳腐化するので、次世代とした。
今回は良品計画の見学会。小森取締役が、快く引き受けてくださったので実現した。
同社は、1990年代後半に時代に急成長した。それに対応すべく、情報システムへの投資も積極的におこなった。しかし、急拡大が裏目に出て、2001年赤字に転落。物流を統括していた小森さんが情報システムを担当することなり、抜本的に改革することとなった。
販売・物流・会計といったルーティンワークの部分は、ベンダーに完全委託した。その代わり、商品マスター、取引先マスターなどのマスター管理は自社管理とし、更新の都度、委託ベンダーに、テキスト形式のファイルで渡し、それぞれのマスターを更新してもらう形にした。
一方、発注管理・在庫管理・営業管理などのいわゆるMD(マーチャンダイジング)システムは、社員の手で開発・運用をおこなうことにした。今日のことはアウトソーシング、明日のことは内製化である。
システムに完成形はないと、小森さんはおっしゃる。状況は日々変わる。それにあわせて機敏にシステムを変えていくことが重要だ。これまでにシステムは業務単位にできていたが、仕事は横串で、仕事とシステムとがミスマッチだった。そこで、アウトソーシングした業務から得られるPOSレジデータや物流・在庫のデータなどを、1時間ごとに吐き出してもらい、それをOSのファイルシステムの中に取り込む。その際、ローデータと一時集計したデータの2種類のファイルを作る。これは未来永劫消さない。そして、そのデータからさまざまなMD情報を引き出し、発注量を決めたり在庫量を決めたり、生産中止を判断したりといった判断業務をおこなう。
システムを作る人とシステムを使う人は同じフロアにいて、いつでも話ができる状態にある。新しいシステムは1週間から、長くても3週間で開発する。スピードがすべてを解決する。サクッと作って使いながらどんどん手直ししていくのだ。
最初から100%のものを作ろうとすると、作る側が構えてしまい、細大漏らさず仕様を聞き出そうとする。やってみなければわからないのに無理やり聞き出して仕様をまとめ、おもむろに作って、出来ましたと突然完成形を提示する。ユーザは思っていたのと違うと不満を漏らす。しかし直すには金がかかるということで我慢するか、使うのを止める。それは最初から完成形を作ろうとするからだ。そもそも仕事に完成形はない。常に変化する。だから70点のものでいいのだ。まずは欲しい最終形の画面から作る、それでいいとなったらロジックをプログラムする。そのプログラムはUNIXのシェルコマンドで書く。
良品計画は、システム投資を、年間20億円だったのを12億円まで落とした。落とせた。アウトソーシング先にとっても無理な話ではなかったという。それは100点は求めない、リスクは良品計画が取るという姿勢から、安心してリスクを上乗せしない裸の見積が出せるからだという。
システム再構築にあたって留意したいこと4点。
1.自社の競争力を高めるための機能に重点投資する。
2.すべてを求めない。多少のエラーはいい。スピード、勇気と自由度を確保。
3.会社の業務全体を俯瞰できるのはシステム部門しかないという気概。
4.リスクヘッジではなくリスクテイクの姿勢で臨む。
今回、参加者は26名、過去最高だった。質問も盛んに飛び、1時間近くオーバーしてしまった。 私の最初の挨拶はこうだった。「昨今の企業情報システムは、ユーザもベンダーも腰が引けている。勇気をもってチャレンジしようとしない。その昔、何も無いところからシステムを作ってきた我々から見るとまったく歯がゆい。今日の小森さんのお話をじっくり聞き、勇気を持ってそれぞれの仕事に取り組んで欲しい」。
実は良品計画では、内製化した計画業務の部分にはデータベースを使っていない。OSのファイルシステムにデータを取り込んで、それを検索集計する形で超高速化を図っている。これはHOWS社のISSEIと同じ技術だ。私が2年前に、別のブログで「究極のデータベースソフトを見た」と書いて嘲笑されたが、その技術である。