カスタムIEM化:10BA
久しぶりにイヤホンの話題です。
最初に書いておきますが、メーカー製のイヤホンを分解していますが、BAの品番やCRの定数などは公開しません。イヤホンは同じ商品でも時期によって部品を変えることは結構ありますし、私のような素人が中途半端で不確かな情報を公開しても混乱を招くだけということと、メーカーが自ら公開していないということは、公開したくないということなのだと思いますので。それに、見た目だけでもBAの品番は大体わかりますが、実はインピーダンスが特注で、通常品番と異なることもあります。
それならばこういう記事を書く意味がないのでは?と思う人もいるかも知れませんが、私自身が他の方のブログなどに刺激を受けて自分でやってみようと思った人ですので、読む人によっては価値があることもあるだろうということと、自分自身の備忘録でもあります。こういう記事を読んで不愉快になる人は読まなければよいだけですので、くれぐれもコメントなどでメーカー製の部分に関する質問はご遠慮ください。
さて、先日息子の誕生日プレゼントに、イヤホンでもプレゼントしようかとイヤホン屋さんであれこれ視聴させてもらい・・・
予算は2万円以内くらいで、と言っておいたのに、これが良いということに。。
倍以上の予算オーバーですが、まあ気に入らない中途半端なものをプレゼントしても仕方ないので、買ってあげました。HeirAudioの4.Aiというモデルです。息子には既にカスタムIEMも2個作っていますし、彼なりに好みの音は割と明確に自分でわかっています。これはプレゼントでもあるので新品です。
少し左右でバラツキがありますが、まあ、さっと測定したものですので密閉度が低かったかも知れません。低音2+中音1+高音1の4BAで、私としては低音が物足りませんが、息子の好みはこういう音です。噂ではDTEC+TWFKらしく、DTECは通常品は空気穴がないタイプで、それほどモリモリした低音ではありませんので、こういう感じでしょう。TWFKは定番ですね。
それはそうと、私もいろいろ視聴した中でHeirAudioをやっぱり気に入り、なかでも5BAモデルのIEM 5.0や、10BAモデルのIEM 10.0が、低音モリモリ+きめ細かな高音で気に入ってしまい・・・
いろいろとお金の工面をして、中古ですが、IEM 10.0を手に入れました。
私の大好きなドンシャリの周波数特性です。左右もピッタリ揃っていますね〜。
息子のと並べると、かなりサイズが違いますし、なにより重さがだいぶ違います。BA4個と10個ではかなり違いますね。
周波数特性では見事に低音が異なります。
私のお気に入り、UE11proと比べると・・・
やっぱり周波数特性が似ていますね〜。実際に聴くとそれなりに違いはあり、Heirの方が低音が深く、中高音も繊細で、オーケストラなどは断然Heirが好みです。ポップスなどはUE11proの方が聞きやすいかも知れません。
さて、IEM 10.0を分解してカスタムIEM化しようと思ったのですが、あまりにも綺麗な外観なので・・・
さらにお金の工面をして、1つ前のモデルのIEM 10Aiというのを手に入れました。なぜか古いモデルの方が中古相場が高く、左右で色違いですが、片方ずつバラバラの中古品を手に入れて何とか安く手に入れました。どうせ分解するので色は気にしません。なぜ前のモデルにこだわったかというと、中が透けて見えるので分解するのに安心ということで。。
中古でもかなりのお値段なのですが、遠慮なく分解!もともとUVレジンを使って組み立てられているので、ヒートガンで熱を加えながら分解すると割と簡単に分解できます。が、ここで無理してBAを取り出そうとするとBAを破壊してしまいますので、十分気をつけます。チューブもできるだけ元の状態のまま使いたいので、丁寧に取り出します。
個別の周波数特性やネットワークの解析をしておきます。10BAでどうやってネットワークを組んでいるのかはとても興味がありましたので、わざわざ高いものを分解したのは、回路的な興味もとても大きかったのです。
綺麗に分解することさえできれば、カスタムIEM化するのはそれほど難しくありません。今回は元のチューブを活かすために、カナル先端までチューブは引っ張り出さず、5mmくらい窪んだ奥に3本のチューブを出すようにしてみました。細いチューブは長さによってかなり周波数特性に癖が出てしまうので、このやり方はかなり良い感じです。もちろん私が発案したわけではなく、こういう作りをしているメーカーの真似ですが。。音が良い代わりに、工作は結構面倒になります。
フェースも、IEM 10.0に負けずと思い、たまたま昔作ったパイプ制作キットのブライヤーが残っていたので、それを薄く切り出して、HeirのカスタムIEMの作例を参考にしながら作ってみました。
これでめでたく完成!と思ったのですが、、左側がどう聴いても変・・・。周波数特性も変です。
仕方ないので、フェースを外して調べます。。
3本のチューブに、細いチューブを差し込んで聞いてみたところ、1つの穴から全く音が出ていないことに気がつき、よく調べると、配線が1本取れてました・・・。ネットワークを固定するときにピンセットでつまんで外してしまったみたいです。まあ、簡単なところで良かったです。
フェースを戻して、綺麗に再加工します。
最終的にはこんなフェースにしました。ブライヤーの所はそれなりに満足なのですが、レジンに青をわざとムラを残して混ぜたところはどうもパッとしないので、ラメも入れておきました。
これで周波数特性も左右が揃って満足!
カスタムIEM化したものの方が高音が伸びます。ユニバーサルだとイヤーピースによって高音が吸収されやすく、とくに私が遮音性と装着感で選んでいるコンプライだと高音が減衰しやすい気がします。
ユニバーサルでも十分満足な音ですが、カスタムIEM化するとさらに遮音性が高まり、豊かな深い低音にのびのある繊細な高音、切れのある中音とたまりません!
3本のチューブを個別に周波数特性を測っておいたので、それを重ねてみるとこんな感じです。低音がCI2個、中音がTWFK2個、高音もTWFK2個ですが、TWFKは1ユニットでWBFKとFKの2個が合わさっており、これら10個のBAをどう鳴らすかは相当悩むところでしょう。おまけにそれぞれのBAにはインピーダンス違いがいろいろありますし、直列・並列、コンデンサーによるハイパス、音響フィルターによるローパス、チューブの太さ・長さなど、無限の組み合わせがあります。
一応、今まで作ったカスタムIEMのまともなものは、こうやってネットワークや周波数特性を記録しておいています。そのうち自分でネットワークを考えながら多BAモデルを自作するときの参考資料にする予定です!?
とりあえず、念願の多BAカスタムIEMを手にすることができて嬉しい限りです。
UE11proで十分満足と思っていましたが、まだまだ素敵な音のするイヤホンはあるものですね〜