ボーナスへの思い入れ
そろそろ冬のボーナス支給の時期です。当社では例年、11月末に支給する感じです。ボーナスはもらう側にとっても、支給する側にとっても、いろいろな思い入れがあるものです。
私が今の会社に入社した頃(平成元年)は、世の中はバブリーな時代でしたが、当社はそうでもなく、ボーナスの出る時期もばらばらでしたし、金額も親に言えないようなことがほとんどでした。その後、自分で事業部を立ち上げ、会社としても出来高制となり、ボーナスをもらうことの大変さを学びました。出来高制になる以前は、社員達は「こんなに毎日忙しく長時間仕事をしているし、ボーナスが出るのは当たり前。なのになぜこんなに少ない?」と思っていましたが、出来高制になってみると、そもそもボーナス原資など全くないということが目に見えてわかりました。それまでは、当時の社長がアルバイトや協力会社を使って、なんとかボーナス分を上乗せしていたようなものだったのです。出来高制では、具体的にボーナス原資の計算方法が明示され、自分たちの稼ぎの低さが暴露されたというわけです。長時間仕事をすれば、あるいは頑張れば良いというものではないという、社会人の厳しさを知ったわけです。
稼ぎが悪ければボーナスゼロは当たり前。隣の事業部がたくさん出ていても、悪い事業部はゼロ。むしろ、ノルマ未達でも給料で先払いした分を返せと言われないだけマシ、というくらいの厳しいものでした。
その後、私の事業部はCADシステムの特注品開発と、受託開発が成功し始め、出来高制の恩恵を受けて、高いボーナスを得ていた時期もかなりありました。
しばらくして、雇われとはいえ社長になると、今度はボーナスなどというものは無くなります。年収を固定にしなければならないからです。もちろん、出来高が翌年の年収に直結でしたので、あくまでも背景には出来高制が重くのしかかっていたことに変わりはありませんが、社長になった時点から、現実的に「支給する側」に回ったと感じたものです。なにより、社員達がボーナスで喜んでいるときに、社長は何の臨時収入もないわけで、「皆で贅沢に高級焼き肉を食べに行こう!」と盛り上がっている側で私は辛い思いをしていたのでした。。
受託開発中心から製品開発販売中心に事業の方向性を変えてきた数年間は、やはり業績にも影響があり、とくに製品開発販売は、そう簡単に立ち上がるものではないこともあり、ボーナス原資が減ってしまい、悪いときには当然社長である私、そしてリーダー達の取り分を減らし、若手に最低限は配れるようにしたものです。リーダーはボーナスゼロまでですが、私は翌年の年収がどんどん下がったものでした。
その後、製品開発販売が立ち上がり、それと同時に製品をきっかけにした受託開発も増え、また、受託開発自体も、下請けから、エンドユーザ直接の形態が増えるなどして、業績の復活と共にボーナスも過去をしのぐぐらい立派になったのでした(私はまだまったく恩恵を受けてませんが)。
さて、そんな、様々な思い入れのあるボーナスですが、今回から出来高制は廃止しました。実際には、4月からの期で廃止となり、今回がそれを対象にしたボーナスという感じです。廃止にした背景には様々な理由があるのですが、製品関連事業が立ち上がり、それまでの「人が動いた分にほぼ比例した収入」から、「製品が売れた分の収入」に変わりつつあることから、業績と人が直結しなくなりつつあることと、「半期ごとに完結できるような仕事では無いものが増えるから」です。製品事業では、製品の企画から開発、さらに販促活動を始めるあたりまで、半年で終わらないものも多くあります。その間、その関係者達は収入ゼロに近いことも有り得ます。しかし、それが市場で売れ始めると、人が何人動いたかに関係なく、製品が勝手に稼ぐようになります。出来高制とは馴染みが悪いのです。
また、製品関連事業では、人が直接稼ぐ仕事に比べて、様々な投資が必要な面も多くあります。プロモーション活動や資材の仕入などのように、直接的なものはもちろん、会社のイメージ作りなども間接的に製品イメージにつながります。稼いだ分を全部配ってしまっては、そういう投資ができなくなります。
人材派遣や、あるいは人月仕事の受託開発などのように、人が動いた分と稼ぎが比較的比例する事業と比べて、製品開発販売事業は出来高制と相性が悪いのです。
もちろん、会社自体のステージも大きなポイントです。ボーナスが出せるか出せないかというあたりをさまよっている状態の時には、明確な目標意識を持ちやすい(自分の収入に直結なので)出来高制は、やる気を出させるのにも、あるいは、無駄遣いを減らすのにも効果的です。しかし、そういう状態を超えたとすると、むしろ、投資すべきところには投資しないと事業が広がらないわけです。
もちろん、出来高制で無いからといって、ボーナスが減るような分配はしません。基本的には皆で稼いで皆で分配するのが会社です。
こんな感じで、ボーナスは、もらう側、支給する側それぞれの、様々な思い入れがあるものなのです。