製品サポート体制の難しさ
製品のサポート体制の話題です。サポート体制と言っても、私は2種類あると考えています。
・お客様サポートの体制
・製品の改善・調査など技術的な体制
いずれも簡単ではないのですが、私が難しいと感じているのは、後者の技術的な体制です。
製品開発販売事業で、大儲けしている状態であれば、とりあえず開発に関わった技術メンバーを、普段から製品担当にして、改善や調査の対応をしてもらえば良いのかもしれませんが、今どき、なかなか大儲け状態にはなりにくいでしょうし、良い製品を作れるメンバーは、他の仕事でも人気が高く、本人も新しいこともやりたいでしょうし、ある製品を固定的に担当させるのは意外と難しいのではないでしょうか。
当社のIT関連製品でも、実はこの技術的な体制が製品によって違っています。わかりやすい例で紹介すると、
不正接続検知/排除システム:IntraGuardian2シリーズ
・複数メンバーで構成
・それぞれ分担はあるものの、ある程度どのメンバーでも改善・調査は可能
背景:2000台以上販売しており、製品規模もそれなりに大きく、当初はシンプルだった機能もニーズに対応するごとに多機能になっている。
高性能DHCPサーバ:ProDHCP
・ほぼ私一人で対応
・技術的には他のメンバーでも十分対応できるが、通常は全て私が対応
背景:年に数本程度の販売。DHCP全般の深い知識が必要。プロバイダーなどの止められないシステムで使われるので、問題発生時には即時対応が求められる。
このように、製品の特性によって体制が全然違う状態になっています。一般的に考えれば、「ほぼ一人で対応」というのはあまりにも危険ではないか?と感じるかもしれませんが、対応の迅速さでは間違いなく一人の方が速いというメリットもありますし、そんなに問い合わせが年中多いというわけではない、ということもあります。もちろん、それ以前に、何人もが対応できるほどの利益がでるわけではない、というコスト面での判断もあります。ProDHCPは製品の特性的に、今のところ私がほぼ全て対応する以上の状態にはできないと考えていて、実績としても、「問い合わせの解決に日をまたいだことはない」という対応を続けてきています。その代わり、私は家族と旅行に行くときにもMacBookAirとE-mobileを必ず持ち歩き、いつでもどこでも対応してきました。もちろん、多少時間がかかって大丈夫であれば、当社メンバーなら十分対応できるのですが、「開発した本人が対応する」という非常に贅沢なサポートをしてきて、それを喜んでいただいてきました。
一方、IntraGuardian2シリーズのように、お客さんの数も、機能も多い製品になると、一人では対応しきれなくなります。このようなタイプは、突発的な対応力よりも、安定的な対応が大事になるわけです。問い合わせの数も常にそれなりにありますので、チームでの対応が適しているわけです。
当社のIT製品はいずれも非常にリーズナブルで、そう簡単に製品売り上げだけで儲かる状態にはなりません。これももちろん戦略があるわけで、無名で実績もない会社が製品事業を早く立ち上げるためでもあり、また、製品をきっかけに特注品のご相談も集めるため、という背景もあります。いつまでもこの状態を続けるかどうかはともかく、この方針でここまで立ち上げてきました。製品の開発だけでなく、特注品の開発も担当し、非常に忙しい状態が続きましたが、特注品の開発はニーズのヒントにもなりますし、新しいノウハウ取得のきっかけにもなり、どちらもプラスになっています。が、技術的な体制は常に悩みの種でもあるわけです。
いずれにしても、製品を支えるのは、「担当者の思い入れ」であることは間違いありません。一人で担当していても、チームで担当していても、その製品への思い入れがなければ対応は難しいでしょう。チームの場合はリーダーの思い入れがとても大切です。どれだけテストをこなした製品でも、客先では思わぬ問題が出たりするのは避けられません。製品自体の問題だけでなく、環境や使い方の問題もあります。製品は売っておしまいではなく、役立って価値があるものです。様々な問題に直面した際に「なんとかしなければ」と思える人が担当しなければ、製品の価値は下がってしまうものです。
そんな難しさを長々と書いたその心は・・・今日はProDHCPの対応が2件同時に発生し、ない頭を使いすぎて頭痛で頭が割れそうになりながら対応していたからなのでした。それでも頑張ろうと思うのは、いつものことなのですが、当社とエンドユーザとの間に入っている多くの関係者が存在して、その方達の「顔をつぶすことがないように」という思いがあるからです。システムは、製品を選択してくださった方、運用を担当してくださっている方、エンドユーザサポートをしてくださっている方、あるいは投資を決断してくださった方など、多くの関係者の思いが集結して成り立っているものです。一人一人が自分の判断・行動を信じ、万が一の時には必死に頑張っているのです。製品供給側としてはその方達を裏切るようなことは決してしたくないのです。
製品事業は、売れてお金も回収できればおしまい、ではないのです。製品は作り上げてただけでは駄目で、手をかけ続けないと育たないものなのです。