自由だが孤独ではない。独立でありながら人類の一部である。
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我々は、自由の増大過程が悪循環を形成せず、人が自由でありながら孤独ではなく、批判的でありながら懐疑に満たされず、独立でありながら、人類の一部として統合されている、そのような積極的な答があると信じている。人はこの自由を、自我の実現により、自分自身であることにより、達成しうる。では、自我の実現とは何か。……我々は、自我の実現は思考という行為のみではなく、その人の感情と知性との潜在力を、能動的に表現することによって実現される、と信じる。この潜在力は誰にでも備わっており、それが表現される程度に応じて現実のものとなる。言い換えれば、積極的自由は、統合された全人格の自発的活動のうちに存する。
安冨 歩 『生きるための経済学―〈選択の自由〉からの脱却』 日本放送出版協会 2008年
エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』からの引用を、孫引きしました。『自由からの逃走』の邦訳は一種類しかなく、上の文章は著者が自著で引用するにあたって訳し直したもの。いい文章です。『生きるための経済学』では、上の文章の中にある「(積極的)自由」や「自我」についての解説があります。
『自由からの逃走』は1941年刊。Wikipediaによればフロムは1900年生まれなので41歳の作品ということになります。41歳にしてこの円熟。ハッとさせられました。
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