遠藤功先生の見える化の講演が良かった
一口にナレッジマネジメントと言っても、焦点を形式知にあてるか暗黙知にあてるかでやり方はかなり異なる。最終的な導入ツールにしても、形式知に焦点を挙げると商品/顧客情報共有のためのナレッジデータベースやエンタープライズサーチになるし、暗黙知に焦点をあてるとQ&Aやノウフーデータベースになる。今流行のイントラブログや社内SNSは暗黙知側に焦点をあてたツールになる。
ところが実際には暗黙知(あるいは身体知)をITツールでマネジメントするのはとても難しい。なにしろ形になっていないのだから当たり前である。例えば人と人が直接技能や身体知を伝授する徒弟制度だとかOJTなら暗黙知を暗黙知のまま伝達できるが、ネットや画面やキーボードを媒介にするには、暗黙知を一旦形式知にする必要がある。ナレッジを「見える化」する必要があるのだ。
また形式知を共有するようなナレッジマネジメントの仕組みでもシステム化によってログの分析などを行うと今まで表に出てこなかった動きなどが急にわかることもある。コミュニケーション系のシステムログを分析したら、営業部門と開発部門のコミュニケーションはやっているつもりでも案外ほとんど無かったなんてのもあってこれも「見える化」の一種だと思う。
たから以前から「見える化」のセミナーや雑誌の特集には興味を持っていたのだが、最近やっと第一人者の講演を拝聴する機会にあった。先日私が参加した早稲田大学のELフォーラム主催の「見える化とIT」というセミナーでは、「見える化」というテーマについて、ローランド・ベルガー会長の遠藤功早稲田大学教授から日本の現場における「見える化」の取り組み状況を中心に見える化に取り組むことの意義や注意点の解説があった。
もう10日ほど前のことなのだが、この講演がすごく良くって50分間ひたすら聞き入ってしまった。どこかにメモを残すとともにいつか私の専門とも絡めていろいろ考えてみたくなったので、ちょっとここで講演の中で特に私の印象に残った内容をいくつかメモとして紹介したい。
- 格差社会といわれているが、特に日本の現場では格差が大きく開きつつあり一見同じように見える企業間でも現場力に大きな差があることが多い。
- 「イノベーション」を起すと掛け声をかけてイノベーションを起した組織なんて見たことが無い。現場の地道な改善こそが最終的にイノベーションを起す。←これについては以前リコーの遠藤専務のご講演でも同じような意見を聞いたことがある。
- 見える化とは「兆候」を見えるようにすることである。
- 見る化ではなく見える化←見たくなくても見えてしまうのが重要。
- 見える化の目的は共通認識を作ること。見えただけでは駄目でコミュニケーションを経ないと共通認識は出来ない。
- 忘年会や新年会への社員の参加率は、問題を起こしそうかどうかのバロメーターになる。90%以上なら良い。出席率が70%を切るような企業は危険。
- 企業の風土はなかなか変えられない。風土を変えるには行動様式を変えないといけないが、行動様式を変えるには意識を変えるしかない。
順不同、箇条書きのメモ(しかも自分用)なのでたぶん当日講演を聴いていない人には何のことかわかりにくいかもしれないが、どれもうなずけるものばかりだ。講演資料等も手元にあるので本当はもっといろいろ書けば良いのかも知れないが、権利問題などもありそうなのでこれくらいにしておく。
もし興味を覚えた方がいたら、来月のNET&COM2007でも遠藤先生の「現場力と見える化」というテーマの基調講演が予定されているので是非聴講してみていただきたい。
#と書いて今申し込みページを見たら、既に定員到達満員ということらしい。重ね重ね申し訳ない。紹介が遅すぎた。orz。
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