ゴミが宝を駆逐する?~企業内検索基盤構築時のポイント(2)
先日のブログで、情報を「宝」と「ゴミ」に分けることを推奨した。人によってはこれを「きれいな川」と「汚れた川」とも表現するようだ。
さてこうして情報をある程度分けたならそこに情報を登録する際のルールもきちんと取り決めて運用する必要がある。「宝」や「きれいな川」に情報を入れる際に、管理する人(ゲートキーパーことが多い)が、その情報の目利きをして「価値の低い情報」を排除したり「足りない部分」を補足して登録するのである。
このゲートキーパの役割によって「宝」「きれいな川」の品質が保たれ、その結果利用者側に「あそこに行けば役に立つ情報が手に入る」というイメージを沸かせ、ひいてはそれが「便利な使えるナレッジがある」という評価につながるのである。
この評価の際に情報の分類も一緒に行えればなお良い。
過去の私の経験した失敗例を話そう。ある会社では、過去のプロジェクトの報告書を溜めるナレッジデータベースを構築して運用を始めた。しかし運用後すぐに、このデータベースの中に情報が少ない、必要な情報があまり無いと言う意見をユーザが言い始めた。するとこの会社のナレッジ事務局がこの声に過敏に反応して、情報の“量”を増やすことに走ってしまったのである。
具体的には、このデータベースに過去の自社のプロジェクトの一覧表を入れてしまったのだ。基幹システムから過去3年間の受注伝票を引き出して、プロジェクト名称と担当部署を1件1明細にして登録したのである。
その結果どうなったかというと、膨大な明細のどこに役に立つ報告書が入っているかがわからなくなるとともに、キーワードで検索をしてヒットした明細を見てもタイトルと部署名しか判らないので、中身が使えなくてがっかりということが増えてしまい。ユーザの満足度が急低下してしまった。この段階で、私からは一旦増えたデータを消すようにも提言をしたのだが、「苦労して登録したのだから」とこれまた却下されてしまい、そしてしばらくたつと、結局このデータベースは使われなくなった。
同じデータベースに入れるのではなく、せめて別のデータベースにして、まず「報告書」を探して、見つからなければプロジェクト一覧を検索して明細を探して担当部署に問い合わせをするという使い方に誘導すれば、まだ良かったと思う。しかし同じデータベースに両者が混在し、そしてその中の「ゴミ」の量のほうが圧倒的に数が多い場合、例えいくつかの宝があっても、ユーザは全体を「つかえないもの」と評価つけてしまうのである。
本来的には、そもそも良い情報が少ない時も単純に全体量を増やす施策ではなく、良い情報が増えるような施策を考えるべきである。