【ブックトーク】現場の“力”・その弐/『救命』
今クール(2014年1-3月)のドラマに「螺鈿迷宮」という“死”へのスタンスを軸としたミステリーがあり、同じく医療系の「医龍4」とあわせて楽しく見ていました(個人的ベストは「三匹のおっさん」でしたが)。原作は同名の小説で、著者は“海堂尊”さん、現代医療の抱える病巣に「Ai」というメスを入れようとされている現役の医師でもあります。
ドラマでは、原作で語られていた“死(体)から学ぶ”との視座が薄くも感じましたが、ふと、海堂さんが以前“死の現場”での医師の力をルポルタージュとしてまとめられた、こちらを思い出しました。
『救命』(海堂尊/新潮文庫)
語り部は、東日本大震災の現場にいた医師。目の前で命を失っていく様子を目撃した人もいた、家族と離れ離れのまま、互いの生死も不明のままの人もいた。そんな“現場”にいたからこその内容となっています。わずかな判断の差が生死の境目となる、そんな冷徹な現実が、シンとした緊張感と共に伝わってきました。
“修羅場では物事の本質が露わになる。社会の本質はまず医療ありき、なのだ。”
そんな想いともにご自身の体験を綴っておられるのは、こちらの9人の医師。
菅野武医師(宮城県南三陸町)
桑山紀彦医師(宮城県名取市)
井坂晶医師(福島県双葉郡)
旭俊臣医師(千葉県松戸市)
植田俊郎医師(岩手県大槌町)
江澤庸博医師(宮城県仙台市)
川越一男医師(千葉県市原市)
石木幹人医師(岩手県陸前高田市)
黒田仁医師(岩手県宮古市)
あくまでも、いのちを救い、死を悼むのが、医者の本分とも言われますが、このような認識はもしかしたら、医者に限った話ではないのかもしれません。
“いのちに寄り添う”ということは、誰にでもできる事と、思いますから。
今は震災から3年が過ぎた世界ですが、まだまだ終息はしていない、むしろこれから長い間どう“寄り添って”いけばよいのだろうか、と、そんな事をあらためて突き付けられた一冊でした。
【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
『死因不明社会』(海堂尊/ブルーバックス)
『前へ!』(麻生幾/新潮文庫)
『河北新報のいちばん長い日』(河北新報社/文春文庫)
『医龍』(乃木坂太郎/小学館)
『走れ!移動図書館』(鎌倉幸子/ちくまプリマー新書)
【補足】
こちらも元は2011年8月にハードカバーで出されたものが、先日文庫に落ちてきたものとなります。こちらの“オマケ”はいわゆる「後日談」。それぞれの3年後の今についても、言及されています。まだまだだな、、とあらためて。
なおこちらもお手伝いしている「朝活読書サロン Collective Intelligencehonn(裏エビカツ)」で紹介しました。テーマを設けない集いですので、狙ったわけではないのですが、2014年3月11日に開催された回でした。
ご興味を持たれましたら、是非こちらから覗いてみてください~