【ブックトーク】ボランティアの立ち位置。/『走れ!移動図書館』
移動図書館、利用されたことがある方はどの程度おられるでしょうか。私も子どものころに何度か見た記憶はありますが、利用自体はあまりしなかったような。それでも、車いっぱいに積まれた本のイメージは鮮明に残っています、ワクワクした気持ちと一緒に。
そんな、移動図書館を駆って岩手を走り回っている、とあるボランティア活動を追いかけたのが、こちら。
『走れ!移動図書館』(鎌倉幸子/ちくまプリマー新書)
“(東日本大震災という)こんな時だから、今、出会う本が子どもたちの一生の支えになる”
東日本大震災後の2011年6月6日から、“本の力”を信じてプロジェクトはスタートしました。始めたのは「シャンティ」というNGO団体。今までは、カンボジアやタイなどで、文化教育に関連する難民支援の活動を行っている団体とのことです。
スルッと入ってきたのは、こちらの一言。
“ボランティアやスタッフは「触媒」であり、「主人公」ではありません。”
主役はあくまで、現地で生きていく人々。かりそめの客であるボランティアは、あくまで地元の力を底上げするための支援に徹するべきだろうとの、考え方でしょうか。
当時も、強い想いをもって現地入りしても、食事も寝る場所も考慮してこずに、反対に地元に迷惑をかけてしまったとの話を聞いたことがあります。こんな風に“救援が二次災害になってしまう”のでは本末転倒でしょう、、そのことを、説得力のある言葉で伝えてくれています。
“本は、人と人とをつなぎます。”
一見すると衣食住とは無関係にも思える“本”、そんな時でも人はどうして本を求めていくのでしょうか。「人とのつながりを求めて」「感情に溺れるために」「“いま”を忘れるために」「亡き人を思いだすために」「現実に戻るために」、そいて「“いま”を切り開くために」などなど、、人それぞれです。
それだけ多彩な理由で人は本を必要とするのだと、あらためて。
ん、“人に本を届けるということ”についてあらためて考えさせられました、私がどうかかわっていきたいのかとの点も含めて、、そんな一冊です。
【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
『本を読むわたし』(華恵/ちくま文庫)
『復興の書店』(稲泉連/小学館)
『新版 図書館の発見』(前川恒雄/NHKブックス)
『スミスの本棚』(テレビ東京報道局ワールドビジネスサテライト/日経BP社)
『本屋さんで本当にあった心温まる物語』(川上徹也/あさ出版)
【補足】
シャンティという名前、どこかで聞いたと思ったら、、以前クラウドファンディングサービスで少しだけお手伝いしたプロジェクトの主催の方でもありました。確か、陸前高田に図書館を立ち上げようとのプロジェクトでした。
そういえば、昨年に大島でのボランティア活動に関連して、「ボランティアの皆様に宿や食事を無料で提供するべきだ」と騒いだ議員の方がいましたね、、まさしく本末転倒を地で行っているなぁ、、と思いました。
ちなみに先日、お世話になっている「東京朝活読書会(エビカツ読書会)」での【テーマ:「なし!(あなたの好きな本は?)」】の回で紹介しました。ちょうど新年一発目に意匠に残った一冊の点で。情報サービスに携わる者の心構えも伝わってきたと、感じています。
ご興味を持たれましたら、是非こちらから覗いてみてください~
>>> エビカツ!~東京朝活読書会の本棚(ブクログ)