【ブックトーク】風が育む酒 / 『風のマジム』
ここ最近の夏の旅行は沖縄(石垣島)が多いのですが、今年も行ってまいりました。
で、事前に、旅先で読む本を探しに図書館などを巡っていたところ、なんともタイムリーな一冊に出会いました。これもまた引き寄せの法則なんですかね~、なんて考えてみたりも。
『風のマジム』(原田マハ/講談社)
主人公はとある会社の派遣社員、生まれも育ちも沖縄の伊波まじむ。彼女がふとしたきっかけで社内の新規事業ベンチャーに応募したところから、物語は動き始めます。題材となるのはサトウキビから蒸留される「ラム酒」、その中でもサトウキビの搾り汁から直接製造するアグリコール・ラムを、沖縄の名産でもあるサトウキビから作りだそうとするのが、彼女の描いた事業の軸になります。
本当にあった話をベースにしているとのことですが、やわらかな南風につつまれるような物語でした。
酒造とは全く関係のない会社で働きながらも、沖縄への想いをありったけにこめた何かを作りたい、、どうせなら自分の大事な人と一緒に飲みたいと思った「風の酒(かじぬさきや)」を。事業計画なんて見たこともなく、当然事業の収支なんて考えたこともない、そんな一介のOLが悪戦苦闘を重ねながらも、ひたすらに一途な想いを糧に一歩一歩、その歩みを重ねていきます。
実際の出来事を下地にしているからでしょうか、リアリティと共にストンと落ちてきました、、現実には社内外の壁も法律の壁も様々な事が、もっともっと高く厳しかったのだろうと思いますけども。
“おばあが言ってた『風の酒』、君が感動したほんもののラムを造れる自信がないんだったら、
たとえ数字でごまかせても、この事業はうまくいかない。”
これは「事業」に携わる人であれば何かしらを感じる心意気、ではないでしょうか。自分が心の底からやりたいとの「想い」、そしてやり抜く「自信」が無ければ手を出すべきではないのかな、と。ん、いろいろとグッと考えさせられた一言でした。
ラム酒というと海賊のイメージと相まってか、ただ度数の強い酒との印象があったのですが、、“風の酒を、飲もう。真心の酒を。”なんて「風」を感じさせてくれるとは、一体どのような味なのでしょうか、とても気になります。ちなみにここ最近の流行りで劇中にも出てくる「モヒート」はラム酒ベースとのこと、確かに爽やかさが共通しているなぁ、とも。
沖縄の大地とその上を駆け抜ける風に育まれたサトウキビ、そんなサトウキビから作られる酒は、文字通りに風が育てた「風の酒」なのでしょうか。そして「まじむ」とは沖縄の言葉で「真心」を意味する言葉となります。
“まじむこみてい”、真心をこめて物事とは向き合っていきたいと感じさせてくれる、そんな一冊です。
【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
『楽園のカンヴァス』(原田マハ/新潮社)
『風の男 白洲次郎』(青柳恵介/新潮文庫)
『一瞬の風になれ』(佐藤多佳子/講談社文庫)
『つるかめ助産院』(小川糸/集英社文庫)
『だいじょうぶ3組』(乙武洋匡/講談社文庫)
【補足】
劇中では「風のマジム」との名前で提供されるのですが、実際にはグレイスラム社の「COR COR(コルコル)」が該当するとのことです。無性に飲みたくなって、旅先でも探したのですが空港などでは見つからず、、通販かなぁ、と悩んでいます。モヒートの作り方も調べておこう。。