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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(75)「脱原発」は主要な争点ではない

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選挙が近くなりましたね。

外出前なので手短に書きます。
「脱原発」を旗印に戦う政党も、そうでない政党もありますが、率直に言って「脱原発」は主要な争点にはなりませんね。

この夏、政府が2030年のエネルギー・環境に関する3つの選択肢をまとめてパブリックコメントを募集した結果、全体の87%が2030年の原発ゼロを求めていた、あるいは討論型世論調査でも原発ゼロシナリオが第一位だった、ということを理由に「民意は明確に原発ゼロを求めている」という主張も見かけますが、この主張にはいくつも欠陥があります。

1.「パブリックコメント」はそもそも偏向するのが普通だということ

2.「民意」で政策を決めるのは危険であるということ

3.手がかりが適切に示されない状態では人は不適切な「判断」をするものだということ

官邸前の反原発デモがすっかり下火になったことからも分かるとおり、反原発パニックはもう収まりました。

しかし、一度過激な主張をしてしまうと、なかなかそれを引っ込めるのは難しいものです。

「原子力は人類にとって倫理的に認められない」

といった「原子力ムラは極悪非道な人類の敵」のような主張を一度でもしてしまうと、それを忘れたふりをして「しばらくは原発を認めます。原子力発電所で働くみなさん、がんばってください」・・・・とはできないわけです。

そのため、自分の過去の言動に縛られて右往左往する言論人や政治家がこれから続出します。

ちなみに、こちらを見れば分かるとおり、世界的には原発は大増設中であって、「脱原発は世界の流れ」というのはまったく事実ではありません。

"World Nuclear Power Reactors"

では、また。

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