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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

「分かりやすく解説」する前に「困って」もらいましょう、という話

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 こんにちは。文書化能力向上コンサルタントの開米瑞浩です。

 さて、前回は「わかりやすい説明をしないほうがいいときもある」という前振りをしたところでした。

 ある問題を解決できる「方法」があるとして、

 こういう問題は、こんな方法で解決できる

 という、わかりやすい説明をされても、人はすぐに忘れるものなんです。これは「わかりにくいから覚えられない」というのではなく、要は人に聞いただけの話、自分で困って身にしみた経験がない情報は忘れやすいということです。どんなにわかりやすくても、です。

 というわけで、「へえー、すごいね」というトリビア的なウケを狙いたいのでなく、現場で自立して仕事ができるように教えたいのであれば、いきなり「わかりやすい解説」をするのは禁物で、「自分で考える」ように仕向ける必要があります。

 そこで、方法としてはたとえばこうします。まず解説テロップ抜きの写真を用意して

2012-12-05-1.JPG

(状況提示)同じアングルで撮った2枚の写真を並べています。
(質問1)何が違うかわかりますか?
(質問2)どっちの写真のほうがクオリティ高いですか?
(質問3)どうすればそんなふうに撮れると思いますか?

 と、質問をするわけですね。こういう質問はごくごくわかりきったことでいいんです。「AとB、どっち?」 と聞かれたら誰が見てもAに決まっていると思うような、あたりまえのことであってもあえて聞きます。簡単な質問であっても、聞かれて答えようとするときは「これで正しいよな」という判断をしなければいけないので、頭が働くからです。聞いてみて、わからなかったらヒントを出します。ある程度知っているはずの人に対してなら

  「ほら、フィルターでそういうのがあったよね」

 というヒントでも有効ですし、まったく予備知識がない人に対してであれば、撮影テクニック本を渡して「探してみな」というのもありですね。

 ちなみに、最終的には「比較」なしで

2012-12-05-2.JPG

 こういう「状況提示」から始めて

 この写真、どう思う?
 どこが悪い?

 と、問題を発見するところから自力でできるように仕向けます。

 いずれにしても、「わかりやすい解説」というのは「困っている人」には役に立つのですが、困ってない人にはいくら分かりやすく説明しても無駄なのです。まずは「困って」もらわないと教える前提が成り立ちません。というわけで、「わかりやすい解説が無条件に望ましいわけではない」ということでした。

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