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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

高校の国語の時間に、「技術」を説明する方法のトレーニングをするべきです

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こんにちは。文書化支援コンサルタントの開米瑞浩です。

今日は原子力ではなく本業の話。

先日、ある研修会社の担当営業の方と打合せ中、

私が「こういうトレーニングは本当は高校の国語の時間にやるべきなんですけどね」と言ったところ、驚いたことに

ほんと、そうですね。
実は私、いまの仕事の前は高校の国語教員やってたので、よくわかります

という予想外の展開に。

「こういうトレーニング」というのはつまりは「技術を説明する方法」のトレーニングです。
たとえば・・・誰にでもわかるような例を挙げるとこういう文章ですね。

 【ダラダラ書き版】カニ玉のレシピ(の一部)
 カニの軟骨をとってほぐします。ネギを小口切り、
 たけのこは千切り、グリンピースを熱湯に通します。
 切った材料と卵を割りほぐして塩を加えて一緒に混ぜ、
 さらに熱して油を引いた中華鍋に入れて手早く混ぜます。
 半熟になったら油を足して裏面を焼きます。


料理の話ですから、特別な専門知識はなくてもわかりますよね。
「技術を説明する」文書の一例がこういうもの。

この文は、「料理」の技術を説明しています。
しかし、「思い出した順に何の工夫もなくダラダラと書かれている」
ため、ハッキリ言ってかなりわかりにくい。
そこで、「ダラダラ書き版」と呼んでおきました。

「技術」には多くの場合「手順」を含むので、「手順」をわかりやすく
書くためには本当はそれなりの工夫が要ります。

その工夫は小説のような文学作品にはほとんど出てきませんし、
入学試験で課されるような小論文にもたいてい出ません。
だから高校の国語の時間ではそんなトレーニングは行われない
わけですが、現実に会社に入って業務文書が書けずに困るのは、
この種のトレーニングが行われていないからです。

国語の時間にほんのちょっとでもやればいいのに・・・と、
私はよくもどかしく思ってます。

人間、意識してやったことがないことはできなくて当たり前なんですよ。
先月もある会社の新入社員内定者のレポートというのを読ませてもらったところ、
いかにも典型的な「ダラダラ書き」だったので頭が痛くなりました。

じゃあ、ダラダラ書きでないならどうすればいいのか。

一番基本的な手法は、「ナンバーつき個条書き」ですね。
お料理レシピは普通はこういう書き方をします↓

 【ナンバーつき個条書き版】カニ玉のレシピ(の一部)
 1.カニの軟骨をとってほぐします。ネギを小口切り、
 たけのこは千切り、グリンピースを熱湯に通します。
 2.1に塩を加えて卵を割りほぐして一緒に混ぜます。
 3.熱して油を引いた中華鍋に2を入れて手早く混ぜます。
 4.半熟になったら油を足して裏面を焼きます。

こうして番号をつけると、

  番号をつけた作業をひとかたまりで行うことがわかる
  どの作業とどの作業が関連づくかが番号で読み取れる

ので、「手順」がわかりやすくなります。

たったそれだけの工夫で「手順」は非常に分かりやすくなる
わけですが、たったそれだけのことでも事前にトレーニング
していないと、いざ必要になったときにはなかなかできません


ちなみに、お料理レシピならナンバーつき箇条書きを心がける
だけでもなんとかなりますが、もっと難解な技術文書を読んで
分解整理・構造化して書き直してきた経験からすると、もう
一工夫したくなります。

 【徹底構造化版】カニ玉のレシピ(の一部)
 1.お湯を沸かします
 2.お湯が沸くまでの間に下ごしらえをします
     カニの軟骨をとってほぐす
     ネギを小口切り
     たけのこを千切り
 3.お湯が沸いたらグリーンピースを熱湯に通します
 4.卵を割りほぐして2,3と塩を加えて一緒に混ぜます。
 5.熱して油を引いた中華鍋に4を入れて手早く混ぜます。
 6.半熟になったら油を足して裏面を焼きます。


何が違うかというと、

  実際に料理をするときの時間軸に沿って必要な作業を分解し
  同種の作業(「切る」系の作業)をひとまとめに、
  別種の作業(グリーンピースの湯通し)とは別に書く

という工夫をしてあります。

こういうことをするとどうしても行数が増えてしまいますが、
このほうが「手順」としてはさらに分かりやすくなり、誤解が少なく
なり、初心者を指導するときの難しいポイントも見つけやすく
なり
ます。

 (たとえば、「ダラダラ書き」版だと「熱湯に通します」が
  目立たない
ので、「湯通しには熱湯を使うから慎重にね!」
  といった注意をすることを忘れやすい)


と、まあこういうところに気を配っていくと「技術」を説明する
文書はわかりやすくなります。

でも、人間、やったことがないことは出来なくて当たり前。

そんなわけで、そのワークを実際にやってみる機会を用意しました。

連休終わりの5月5日と、連休明けの11日の2回、

普段、意識して行う機会のない、「情報の分解整理・構造化」のワークをやってみて

  あ、これならやっていける

という手応えを得たい方のご参加を楽しみにしております。

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 ライティング・ワークショップのお知らせ
    5/ 5 14:00~16:00 @竹橋 理系の文書編
    5/11 19:00~21:00 @竹橋 IT文書編
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「わかりやすく書く力を身につけたい」方のための
 ライティング・ワークショップ

■5月5日は「少し理系の文書をあまり知識の無い人に説明する」
シーンを想定した題材で行います。

「少し理系」というのは、あくまでも「専門外の一般の人に説明する
ための文書」なので、ガチ理系の内容ではないからです。
実際どのような問題なのかは、課題文書を見てご確認ください。

ライティング・ワークショップ 5月5日 理系の文書編
http://ideacraft.jp/cms/wws/90-2012-04-23-04-15-58.html

今回扱う課題文書は↑リンク先に掲載してあります。


■5月11日は「IT技術者向きの課題」ということで、

サーバー二重化、Oracle RAC、ファイル監視プロセス の3つの課題を用意してあります。
課題文書はこちらでご確認を

ライティング・ワークショップ 5月11日 IT文書編
http://ideacraft.jp/cms/wws/91-wws0511.html

どの課題もなかなかに読みにくい書き方がされていますが、それを
「スラスラ読めて、スイスイ頭にはいる」ように書き直すワークを行います。

「えっ、そう言われても、何をどうすればいいのか・・・難しそうでとてもできる気がしない」と思ったとしたら、そういう方にこそぜひ来て欲しいですね。

普段やったことのないことは、出来る気がしなくて当たり前です。
逆に言えばそれは「実際やってみれば、苦手意識が薄れる」ということでもあります。

ずっと苦手なままでいたいですか?
それとも壁を越えていきたいですか?

課題文書そのものにはあまりヒントを載せられないので難しそうに見えますが、現場ではこれでもか! とヒントをたくさん出しながら進めますので、手も足もでないようなことには絶対なりません。

その体験を通じて、「あ、これなら出来そう」という感触をつかんでもらうためのワークショップなのです。

「難しそうで私にはできそうにない・・・」と諦めてしまう前に、試してみてください。

それではまた、お会いしましょう(^_^)/


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