知識を構造化しよう-抽象化を通じて自分の知識と意図を自覚する
前回は「抽象化する」ことの大事さを書きました。引き続き、その最後で項目だけ挙げていた「抽象化を試みることのメリット2つ」について書きましょう。
項目としてはこの2点ですね。
抽象化をしようとすると、自分の知識不足に気がつきやすい
抽象化をしようとすると、自分の意図を明確にすることを求められる
まず1つ目、「抽象化をしようとすると、自分の知識不足に気がつきやすい」ですが、早い話が
<Bグループ>
スフィンクス
マンクス
アメリカンショートヘア
これにつける名前は、昨日の私なら思いつかなかったと思います。
スフィンクスって、エジプトのあれか?
マンクスってなんだろう・・・
アメリカンショートヘアは確か猫の名前でそういうのがあったよな
というわけで、まああたりまえの話ですが、知識が乏しいとグループにつける名前を思いつけないんですね。
ちなみに実はBグループの3つはいずれも猫です。「スフィンクス」は1960年代に突然変異で生まれた無毛猫。これはアメショー(アメリカンショートヘア)ほどは知られていないにしても比較的知名度があるので、猫好きの人なら知っているかもしれませんがそうでなければ「エジプトの遺跡?」と思っても無理もないはずです。
一方、マンクスのほうはイギリスのマン島産の尻尾がない猫で、さらに知名度が低いです。グループを抽象化して名前をつけようというときに、一部を知らないと、「あ、これ知らないな。何だろう? 調べてみなきゃ・・!!」と思います。名前を付けようとすることで、「知らないことを自覚するきっかけが得られる」わけです。だから、知識不足に気がつくわけですね。
そして2つ目。「抽象化をしようとすると、自分の意図を明確にすることを求められる」のほうはどういうことか。
たとえばBグループに名前をつけるとしたら、以下の2つのうちどちらが適切でしょうか?
案1: 猫
案2: 洋猫
どっちも間違いじゃないですね。Bグループの3種がいずれも日本産ではないことに注目して、それをアピールしようとするなら、案2の「洋猫」という名前が適切です。一方、特にその意図がないなら、単に「猫」でかまわないでしょう。
こんなふうに、名前を付けようとすると、矛盾のない候補がいくつも出てくることが多いんです。その中から1つだけ選ぶ、ためには、「自分がその名前で何を強調したいのか」を自覚していなければなりません。
つまりそれが「自分の意図を明確にすることを求められる」ということです。
実際、Aグループのほうについて前回は「犬」という名前をつけましたが、実はAグループにはたとえば「猟犬」という名前も成り立ちます。イングリッシュ・グレイハウンドはいかにも猟犬に見えますが、ダックスフントも実は猟犬だったんですね。
同じものに「犬」と名づけるか「猟犬」と名づけるか。それは、名前をつける人の意図によって変わってきます。犬は狩猟のために改良されてきた歴史が長く、猟の性質に応じてまったく違った犬種が作られた、という話をしたいならAグループにはぜひ「猟犬」という名前をつけるべきだし、そうでなければ単に「犬」でもかまわないでしょう。
複数のものに共通する性質を見出し、抽象化して名前をつける、というただそれだけの行為で、
自分の知識不足に気がつく
自分の意図を明確にすることを求められる
というメリットがあるわけです。ぜひ、ちょっとした機会を見つけて折に触れて「抽象化」を行う習慣を持っておきましょう。それが、「教える力」を伸ばす上で非常に重要なことなのです。
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