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デジタルは既存のビジネスを再定義する思考原理:『モビリテX 〜シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業〜』を読んで 

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年末年始で読んだ1冊に『モビリテX〜シリコンバレーで見えた2030年の自動車産業〜DXSXの誤解と本質(木村将之、森 俊彦、下田裕和 著)・日経BP20221219日』があります。ITのトレンドやビジネス戦略について、講義や講演をしている私にとって、実際の現場で何が起こっているのかを知る格好の材料であり、その変化や影響の大きさに驚かされました。

「自動車産業」という切り口ですが、その影響範囲は極めて広く、産業構造や社会システムにも及ぶ解説は、DXやビジネス戦略を考える上で、大変参考になりました。そんな本書を紹介しようと思います。


100年に一度の大変革期」にある自動車産業は、CASE(コネクテッド:Connected、自動化:Autonomous、シェアリング:Shared、電動化:Electric)の大きな潮流に晒されています。これは、自動車産業だけではなく、エネルギー産業や流通・物流産業のあり方にも影響を及ぼし、MaaSMobility as a Service)やロボタクシー、ライドシェア・サービスなどへの波及とともに、人々の移動に関わる交通インフラや都市計画、不動産などの広範な社会システムにも影響を与えつつあります。また、クラウド・サービスや半導体などのITビジネスへの影響も無視できません。それほど自動車産業は、裾野の広い産業分野であることが、改めてよく分かりました。

本書の執筆陣は、米国のテック・ジャイアント、GAFAMGoogleAppleFacebook(現Meta)、AmazonMicrosoft)による破壊的なイノベーションを現地で体感してきた日本人の有志組織「シリコンバレーD-Lab」メンバー(デロイト・トーマツ・ベンチャーサポート、パナソニック・ホールディングス、経済産業省)です。かれらは、2017年からシリコンバレーだからこそ分かる世界の潮流をリポートしてきました。そんな彼らが自動車産業を切り口に最新の動向をまとめたのが、本書というわけです。

本書では、自動車産業に関わる次のような企業の取り組みが紹介されています。

  • ライドシェアの可能性を大きく拡張しつつあるウーバーテクノロジーズ
  • 自動運転の無人ロボタクシーで先行するCruiseGM)やWaymoGoogle
  • EV事業と×エネルギー事業で新しいビジネス形態を模索するテスラ
  • 圧倒的な競争力を持つEC×モノの移動で流通・物流産業を変革するAmazon など

自動車産業を越えた新しい産業構造の未来が、よく分かる内容でした。

また、このようなイノベーティブな取り組みを支える以下の「4つのアプローチ」についても解説しています。

  • 「デザイン思考」「データドリブン」による体験価値創出
  • 顧客の価値観の変化に寄り添うサステナビリティー変革
  • 中長期視点による「要素クロス」アプローチ
  • ファンクション産業と融合した新たな価値創出

日本の基幹産業である自動車産業が、この破壊的なビジネス変革にどう向きあうべきかの提言も述べられています。

「もはや『できない理由』はありません。未来を切り開く日本へ、次の一歩を踏み出すのは、まさに今がラストチャンスです(筆者一同)」

デジタル・テクノロジーが、「既存のビジネスを便利にするための手段」を越えて、「既存のビジネスを再定義するための思考原理」であることがよく分かる内容でした。前者が「デジタル化」であるとすれば、後者が「DX」となるのでしょう。表現を変えれば、前者は、デジタル・テクノロジーによる「戦術の変革」であり、後者は、「戦略の変革」と言うべきかも知れません。

自動車産業に関わりがあるかないかにかかわらず、これからのビジネスの変化の潮流を読み解く上で、大いに参考になる1冊でした。

【募集中】ITソリューション塾・第42期/2023年2月16日〜

DX疲れにうんざりしている。Web3の胡散臭さが鼻につく。

このような方もいらっしゃるかもしれませんね。では、伺いたいのですが、次の3つの問いに、あなたならどのように答えますか。

  • DXとはこれまでのIT化/コンピューター化/デジタル化と何が違うのでしょうか。
  • デジタル化やDXに使われる「デジタル」とは、ビジネスにとって、どのような役割を果たし、いかなる価値を生みだすのでしょうか。
  • Web3の金融サービス(DeFi)で取引される金額はおよそ10兆円、国家が通貨として発行していないデジタル通貨は500兆円にも達し、日本のGDPと同じくらいの規模にまで膨らんでいます。なぜ、このような急激な変化が起きているのでしょうか。

言葉の背景にある現実や本質、ビジネスとの関係を理解しないままに、言葉だけで議論しようとするから、うんざりしたり、胡散臭く感じたりするのかもしれせん。

ITに関わり、ビジネスに活かしていこうというのなら、このようなことでは、困ってしまいます。

ITソリューション塾は、ITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えすることに留まらず、その背景や本質、ビジネスとの関係をわかりやすく解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。

  • SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
  • ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
  • デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
  • IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
  • デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん

そんな皆さんには、きっとお役に立つはずです。

  • 期間:2023年2月16日(木)〜最終回4月26日(水) 全10回+特別補講
  • 時間:毎週(原則水曜日) 18:30-20:30 の2時間
  • 方法:オンライン(Zoom)
  • 費用:90,000円(税込み 99,000円)
  • 内容:
  1. デジタル・トランスフォーメーションの本質と「共創」戦略
  2. ソフトウェア化するインフラとクラウド・コンピューティング
  3. DXの基盤となるIoT(モノのインターネット)と5G
  4. データを価値に変えるAI(人工知能)とデータサイエンス
  5. おさえておきたい注目のテクノロジー
  6. 加速するビジネス・スピードに対処する開発と運用
  7. デジタル・サービス提供の実践
  8. クラウド/DevOps戦略の実践
  9. 経営のためのセキュリティの基礎と本質
  10. 総括・これからのITビジネス戦略
  11. 特別補講 *選任中*

詳しくは、こちらをご覧下さい。

【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版

【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版

2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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