「やってみなはれ」。これは、サントリーの創業者である鳥井信治郎の口癖でした。やってみよう。やってみなければわからない。「新しい価値創造」を目指すサントリーを表すこの言葉は、サントリー食品インターナショナルにも脈々と受け継がれています。
ただし、「やってみなはれ」という言葉はどんなことも自由に挑戦させてもらえるという意味ではありません。そこには必ず「やりきってみせます」という強い意志のこもった「みとくんなはれ」という言葉がセットで存在するのです。
サントリーの社風について(サントリーのホームページより引用)
私は、最新のITトレンドやビジネス戦略について、わかりやすくその本質を伝えることを生業にしている。ITソリューション塾は、そんな私のやっていることのエッセンスを凝縮したパッケージだ。そこには、私だけではなく、この想いを共有してくれるトップレベルの実践者にも講師を務めて頂き、実務や実践におけるノウハウや勘所を伝えてもらっている。
塾以外でも、多くの研修や講演で、「分かりやすく本質を伝える」ことに心がけているつもりだ。そのためには、ものごとから枝と幹を切り分けて、「幹」がなにか、つまり本質が何かを説明し、それがどのように枝になるのかを論理的に説明しようと心がけている。
本質が分かれば、それを自分たちの仕事に当てはめて考えれば、自分たちは何を目指せばいいのか、つまり、自分たちの「あるべき姿」を描きやすくなる。その「あるべき姿」が決まれば、自分たちにふさわしい、具体的な手段を見つけることが容易になる。
手段だけでは、それをすることが目的化してしまうリスクが高い。また、やり方の巧拙が過度に意識されてしまい、目指すべき「あるべき姿」を見失うことにもなりかねない。だからこそ、「枝葉」を徹底してそぎ落として、「幹」すなわち、「本質」を素っ裸にすることで、「あるべき姿」とそこに至る「手段」を分けて考えられるように心がけている。
しかし、私ができることは、しょせんここまでだ。その実践は、この話を聞いた本人に委ねられている。残念ながら、講義を聴いて、実践しようとする人は、少ないように思う。もちろん、そうだと言い切れる裏付けはない。しかし、それほど間違ってはいないだろう。
ある地方団体で話をさせて頂いたことがある。その話しを聞いた人たちからは、よく分かった、自分たちも実践したいとご意見、ご感想を頂いた。その翌年、同じところで同様の話しをしたところ、まったく同じ反応であり、そして「なかなかできなくて」という言葉が添えられていた。
DXが大はやりのご時世になり、これをテーマに話をして欲しいという依頼も多い。しかし、理解はできるが実践に結びつかないという話しは多い。これを乗り越える唯一の方法は、「体験による実感」だ。「やってみなはれ」である。
ITソリューション塾の講師にアジャイル開発やDevOpsの実践者がいる。並の実践者ではない。多くの企業で事業の立ち上げを成功させ、世界的な人材育成プログラムや資格認定制度の制定にも関わっている方である。
「やってみなければわかりません。」
彼は、そう言って次のようなたとえ話をしてくれる。
「芋虫が見る世界と蝶が見る世界はまるで違うはずです。蝶が芋虫に、自分の見ていること、感じていることを説明してもきっと伝わりません。蝶になって、はじめて、蝶の語る真実が、体験を通じて、実感として分かります。アジャイル開発やDevOpsを、本当の意味で理解するにはそれしかありません。」
このような話しの後には、必ず次のような質問がある。
「うちの会社の経営者は、頭が固くて、いままでのやり方を変えることが、なかなかできません。どうすれば、彼らを変えられるのでしょうか。」
この質問への答えも、結局はこれになる。
「やってみなはれ」
だれかに許しを得なければ何もできないのであれば、もうそれは、人間の居場所ではない。とっとと辞めてしまった方が、健全だ。しかし、決してそんなことはないはずだ。自分だけで、あるいは、自分の組織で、できることがあるはずだ。自らできることを実践し、その成果を見せればいい。批判もあるだろうし、しばらくは人事評価も下がるかも知れない。しかし、正しいとであれば、成果は伴う。そして、共感者も次第に増えてゆく。それが一定の閾値を超えたとき、組織全体が動き始める。「彼らを変える」最も現実的で有効の手段はこれしかない。ただし、忍耐は必要だ。
ある企業で、社長も含む経営幹部の会議があり、DXについての話をしたことがある。コロナ禍前のことなので、先方の会議室に伺って、話をしたのだが、受付で持ち込むPCの機種とシリアル番号のチェックを求められた。実は、この会社には以前にも伺ったことがあり、その時は終業前で受付がまだ不在であり、守衛室を経由して入館したのだが、その時はPCのチェックはなかった。
何のためのPCチェックなのか。しかも、まったく徹底されていない。チェックした情報は、どのように管理され、使われているのだろうか。もともとはデータセンターであった建屋をいまはオフィスとして使っているようだったが、PCを持ち込むという行為が特別だった時代の過去のルールが、見直されることなく、疑問にも持たれず、そのまま続いてきたのだろう。
そんな「御社での実体験」を経営幹部の前で話したら、苦笑いされた。DXを実践するのなら、このような些細なことを見直すことから始めてはどうか。いまとなっては無意味なことがまだ沢山あるのではないか。DXは、企業の文化や風土を変革することだ。何も大仰なことから始める必要ない。デジタルが当たり前の時代になって、意味のないこと、不便と感じること、おかしいと感じることから着手すればいい。そうやって、いまの時代にふさわしい仕事のやり方を追求することだ。その手段として、デジタルを使えば、「はやく、やすく、うまく」できる。ましてやお客様のDXに貢献しますなどと言っているのなら、まずは、そんな自分たちの取り組みから始めてはどうだろう。その実感とノウハウこそが、お客様が一番求めていることではないのかと話した。
それから半年ほど経って、再びその会社を訪れたとき、このルールはそのままだった。
DXとは何かを教えて欲しい、AIをビジネスに活かすには、どうすればいいのか、そのやり方を教えて欲しいと言う。私にとっては、それが仕事なので、できるだけ分かりやすく、そして、それぞれの仕事の現実を踏まえて、身近に感じてもらえるように話をしているつもりだ。しかし、誰にもそのまま使える成功の方程式などないのだ。
他人に頼るな、自分で考えて実践せよ
お叱りを受けそうだが、何かを始めよう、成し遂げようとするのであれば、たぶんこれしかないように思う。
DX疲れにうんざりしている。Web3の胡散臭さが鼻につく。
このような方もいらっしゃるかもしれませんね。では、伺いたいのですが、次の3つの問いに、あなたならどのように答えますか。
- DXとはこれまでのIT化/コンピューター化/デジタル化と何が違うのでしょうか。
- デジタル化やDXに使われる「デジタル」とは、ビジネスにとって、どのような役割を果たし、いかなる価値を生みだすのでしょうか。
- Web3の金融サービス(DeFi)で取引される金額はおよそ10兆円、国家が通貨として発行していないデジタル通貨は500兆円にも達し、日本のGDPと同じくらいの規模にまで膨らんでいます。なぜ、このような急激な変化が起きているのでしょうか。
言葉の背景にある現実や本質、ビジネスとの関係を理解しないままに、言葉だけで議論しようとするから、うんざりしたり、胡散臭く感じたりするのかもしれせん。
ITに関わり、ビジネスに活かしていこうというのなら、このようなことでは、困ってしまいます。
ITソリューション塾は、ITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えすることに留まらず、その背景や本質、ビジネスとの関係をわかりやすく解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。
- SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
- ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
- デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
- IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
- デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん
そんな皆さんには、きっとお役に立つはずです。
- 期間:2023年2月16日(木)〜最終回4月26日(水) 全10回+特別補講
- 時間:毎週(原則水曜日) 18:30-20:30 の2時間
- 方法:オンライン(Zoom)
- 費用:90,000円(税込み 99,000円)
- 内容:
- デジタル・トランスフォーメーションの本質と「共創」戦略
- ソフトウェア化するインフラとクラウド・コンピューティング
- DXの基盤となるIoT(モノのインターネット)と5G
- データを価値に変えるAI(人工知能)とデータサイエンス
- おさえておきたい注目のテクノロジー
- 加速するビジネス・スピードに対処する開発と運用
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- 経営のためのセキュリティの基礎と本質
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詳しくは、こちらをご覧下さい。
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